「おんがくのたべかた」

台風19号が関西方面に上陸しじわりじわりと名古屋に向けて進行している最中、鈴木実貴子ズと共同企画「おんがくのたべかた」を行った。
この日の共同企画は鶴舞K.Dハポンと鶴舞DAYTRIP、道路を挟んでほぼ向き合った形になる二会場を使ってのイベント。
出演は鈴木実貴子ズ、テト・ペッテンソン水中、それは苦しい沖ちづるワニのいる生活砂場ピアノガール、そして舟橋所属、ノイズバンドin the poolちゃん(この新バンドについてはまた改めて)。
元々は打ち上げの席で鈴木実貴子ズの「ズ」こといさみ君と「面白いバンドを集めて二会場でフェスのような事をしたいね」と話した、もうあれは具体的にいつだったか思い出せないくらい前の事に遡る。
いつか、というのはとっとと来させるに限る。これまたいつの遠征だったか、帰りの車中で何かを終えたけれどもまた繰り返していくぞという多幸感の中、いさみ君にメールしたのだったかな、それともいさみ君から僕の尻を叩いて貰ったのだったかな、これまたあやふやで、こうして改めて書くのが憚られる程きっかけがあやふやな、つまりはそれ程前から今回の話は持ち上がっていたのだった。
鈴木さんの手料理を食べながらの第一回打ち合わせから名古屋飯を食わせてくれるチェーン居酒屋での会合等を経て、豪華8組が決定した。「本当に面白く」「格好良く」「皆に是非観てもらいたい」バンドばかりが集まったのだった。

しかしタイミング悪く台風19号が名古屋に向かって接近中。JRは前日の段階で企画当日13日の夕方以降、関西方面の運行を停止すると発表、JR関係者の友人曰くここ数年の間では異例の措置で19号の規模の大きさを実感させるには十分過ぎる報道だったわけで。
前夜の最終打ち合わせでも当然のように3人で「やるか、やらないか」を話し合った。やらない、という選択肢もあったのかもしれない。事実、13日に関西で予定されていた大型ミュージックサーキットは安全面を考慮して中止となっていたし。
けれども僕達は、やる事にした。この日の多くの出演バンドが「やるべきだ」とか「やったりましょう」という気概を持って参戦してくれたし、もうそれだけで僕達としては開催するには十分過ぎる程だったし、例えお客さんがたった一人でも、いや一人もお客さんがいなくてもやろうじゃないかと、そんな具合に開催に踏み切ったのだった。
SNS上では勿論台風の危険が予見される中、イベントを行う事に対して否定的な意見も目にしたし(つまりはその後ろには発信していない大勢がいるわけであり)、僕もそれを読んで至極尤もだとも思った。自己責任、或いは責任、という言葉について考えさせられた一日でもあった。
今となっては、やって良かったと思っている。勿論これは怪我人が一人も出ず、結果的に台風の影響も想像していたよりも遥かに小規模で済んだから言える事ではあるのだけれども、あの日台風の影響を考慮して参加を中止した人も少なくなかった中で、それでも会場に集まって下さったお客さんもいて。
開催という僕達3人の決断が、開催を受け入れてくれた二会場のスタッフさん達の判断と善意と、そして前述の通り当日お集まり頂いた皆様の情熱に少しでも報いる事が出来たのなら幸いだ。
そして同時に外出を控えられた皆様へ、場違いというかお門違いかもしれないけれども感謝致します。皆様の配慮、判断は本当に尊い。中にはご丁寧に連絡まで下さった方もいらっしゃって(勿論そうでなかった方も含め)、自然災害という予測出来ない脅威に対してそりゃあ勿論きっと遊びに来たかったでしょうに、でもそこを決断された皆様の判断は、きっと物凄く尊いものだと僕は思うのです。
会場にいらっしゃった皆様も、そして会場にいらっしゃらなかった皆様も、本当に有難う。
怪我人が一人も出ずに、無事に終わったというのは勿論結果論でしかないけれど、本当にそれが一番です。

悪いには、もうひとえに台風19号!
あれさえなければ当日もっと多くの皆様にあの素敵な、熱量と情熱に満ち溢れた空間を、時間をお楽しみ頂けたかと思うとそれだけが残念です。
無念と、それを遥かに上回る感謝の中で「おんがくのたべかた」を終えました。
ご出演頂いた皆様も本当に有難う。きっとヒヤヒヤされた事でしょう。今度は是非、晴れたこの国のどこかのライブハウスでやりましょう。

個人的に、運営面で鈴木実貴子ズにおんぶにだっこ感があったのでこの恩は必ず返したいと思う。
あの素敵な二人に報いねばならぬ。

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