「玉屋」でカツ丼を喰ってきた。

毎週火曜日と金曜日は仕事が早上がりの日。いつもより2時間早く仕事を終えて帰宅する日だ。

これは僕がバンド活動に身を投じた最初期、当時のバンドメンバーと予定をあわせて練習する時に組んだシフトの名残なのだけれども、あれからバンドを数個経たというのに相変わらず僕は毎週火曜日と金曜日を早上がりの日にしている。基本的にライブやら何やら用事のある日以外はあまり休む機会がないので、この2日というのは妙にアクティブな気持ちになる。

今日は仕事後、2時間後に予定が入っていたので(そしてその間にもひょっとしたら予定が入るかもしれなかった。残念ながらその用事は後日に持ち越しになったようだけれども、楽しみはとっておくに越した事はない。特にベースが改造されて戻ってくるなんて事は!)帰宅するくらいなら、とそのまま以前から行ってみたかった定食屋に立ち寄る事にした。

名古屋市千種区、地下鉄東山線覚王山駅からすぐ、「玉屋」という店である。

世の中にはべらぼうに量が多い飯を好んで食らう人種が居る。

確かに、見るだけで圧倒的な物量の食事を胃袋にねじ込むというのは「食事をする」という快感と同時に「喰いきった」という達成感を感じさせる行為であり、食事をしながらスポーツをするような、刺激的な行為である。無論、供された食事を残すのは最も恥じるべき行為であり、もうなんか人間として間違っている気さえする。そんな感情に叩き込まれるリスクを冒しながらも規格外の物量の食事に挑む、そんな好事家達の間で有名な定食屋が「玉屋」である。

このお店、基本的に量が多いらしく「並」でも他店の大盛以上あるらしい。で、僕が好奇心を惹かれていたのがここの「カツ丼 大盛」である。詳しくはこのサイト にレポートされているけれども、これは一人で食べに行くのは若干不安な物量である。画像でさえそうなのだ。現物を見たらどうなるか。僕は決して大食いというわけではない。ただただ食べる事が好きなだけの食いしん坊である。

ここは素直にザ・フロイト のギターリスト 小森君と突撃する事にする。彼は大柄だし、その体格から察するに食うはずだ。そして何より心強かったのは小森君、「玉屋」経験者であった。

さて、小汚い僕は完全なる安全策を講じる事にした。すなわち二人で入店、一人が「大盛」を、もう一人が「小盛」を頼むのだ。そうすれば「大盛」が残った際に「小盛」を食べた人間には胃袋に余裕がある分、「大盛」に口をつける事が出来る。しかしこれは「大盛」を頼んだ人間に一種の敗北感を感じさせる行為であり、それを承知しながら薄汚い僕は自分が「小盛」を頼む事にした。となると当然、小森君が「大盛」である。・・・・・・面白い。

コモリがオオモリを!

そんな冗談もいざ現物が目の前にくると完全に忘却の彼方へと消し飛んでしまった。

続・我が逃走
これが「玉屋」の「カツ丼 大盛」である。

ドン、と目の前に置かれたのはそれこそ『日本昔ばなし』に出てくるような盛り付け方をされた白米。そしてカツ丼といいながら別皿に盛られた煮カツ。隣のテーブルの客人も驚いている。そりゃあそうだ。多いもの。

小森君は早速箸をつける。遅れて僕の「小盛」も到着、こちらはなんてことない普通の分量。さて、では僕もいただきます!

・・・・・ふむ、カツの煮汁は甘めで好きな味だな。そして卵も柔らか過ぎず硬過ぎず、丁度良い具合だ。ここって結構好みが別れるところだとは思うけれども、この全体のまとまり感からして卵のこの煮具合は正義、ジャスティスだ。

丼ってんだからご飯も大事だよな。日本人で良かったなと思う瞬間が美しい日本語を意識する瞬間と、そして白いご飯を頬張る瞬間だ。耐えられんよなあ・・・・・。ほう、ご飯は若干柔らかめに炊かれているのか。うん、煮汁が染み込んだ白米、イイカンジだ。丼をかっ込んでいるっていうのを実感出来る飯だな。お見事!

お、ネギ、か。・・・これは良い。シャキシャキ感はそのまま「楽しさ」に繋がるといってもいいな。

さて、待望のカツですよ・・・・。お、見た目は卵とじを上からかけただけかと思ったけれども、成程やっぱり一緒に煮込んであるわけね。肉は若干固めだけれども、美味い。このご飯の硬さとは絶妙なバランスだ。カツを一口、っそいて飯をかっ込む!やはりこれだよなあ。日本人の心の琴線を刺激するというか、古から繰り返されてきた「頬張る」という快感をダイレクトに伝えてくれるのが丼文化なんだろうな。

・・・・お、何とも分厚い沢庵だな。ここまで大ぶりなのはなかなか見ないぞ。しかも形が一定だ。一定の厚さで切られている。丁寧な仕事をされてるんだな。うん、こりゃあこのまま飯をかっこみたくなる沢庵だ。丁度良い塩っ気が新鮮だし、口の中に新しい悦びをもたらしてくれる。

ウン、美味い、美味いぞこのカツ丼!

小森君の表情に、少しずつ疲労の色が見え隠れした。租借回数が増え、箸を運ぶ感覚が長くなる。僕は『その』瞬間を今か今かと待ち構えている。しかし小森君、相当食ったな。もう山がなくなってるよ。

と、彼がお盆ごとカツ丼を差し出した。

「あとは、ドウゾ」

慎重を期して良かった。一心不乱にカツ丼をかっこみながら僕はそう痛感した次第である。二人がかりで、やっと完食出来たのだ。しっかし美味いなこりゃあ。

食べ終えた頃には、僕の胃は大量のカツ丼で一杯になっていた。出っ張ったお腹を撫で回す。

今度は一人で食べてみようかな。そんな無謀な事を考えながら「玉屋」を後にした。

コメント

  1. トチギ より:

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    さすがですね。

    最近、こんなのを見つけました。地元では有名な店なんですが、最近方向性を誤ってしまったみたいです。三重いくことがあれば是非

    http://r.tabelog.com/mie/A2401/A240101/24000086/

  2. 舟橋孝裕 より:

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    >トチギさん
    お、栃木君じゃん!コメント有難う!

    ここって好事家の間で評判の盛りっぷりのお店だね・・・・画像だけだけど見た記憶があるよ。この分量、是非目の当たりにしてみたい・・・!
    三重か。
    いつの日か必ず行きます!