『刑事コロンボ 自縛の紐』

刑事コロンボ『自縛の紐』を視聴。

まずはあらすじを。

スポーツ・ジムのチェーン店を経営するジャナス(R・コンラッド)は、フランチャイズ店に卸す品からマージンをとり、莫大な不当利益をあげていた。それに気づいたスタッフォードは、不正の証拠集めをしているところをジャナスに襲われてしまう。ジャナスは被害者にトレーニング・ウェアを着せ、バーベル上げの練習中の事故であるように見せかける。だがコロンボは、一つの手掛かりから、被害者が他人にウェアを着せられたことを見破るのだった……。



というわけで筋肉隆々、53歳(演じたロバート・コンラッドは当時39歳)にも関わらず逞しい体を維持するスポーツ・ジム経営者が今回の犯人。

続・我が逃走
左側が犯人のマイロ=ジャナス。
コイツがスポーツマンらしからぬとんだ悪党なのである。

この犯人、何かにつけて運動の重要性と健康について説いてくる。

「葉巻はやめたまえ、寿命を縮めるよ」

「一日30分でいい。運動を続けたまえ。生まれ変わるよ」

安葉巻にずんぐりむっくりの体型のコロンボ警部とのコントラストが可笑しい。特に日課のトレーニング中に犯人を訪ねたコロンボ警部のシークエンスが最高だ。海で泳いでいた所をコロンボがいつもの調子で犯人に食らいつく。犯人もやるもので

「時間がないのでね、トレーニングしながらでもいいかい」

と自分のペースにコロンボ警部を巻き込もうとする。コロンボも当然OK。と、それまでの歩調が嘘のように走り出す犯人。コロンボも革靴を砂まみれにしながら砂浜をドタドタ走って追いかける。どんどん開く二人の距離。

呼吸一つ乱さない犯人に対し「死にそう・・・」と呟くコロンボ警部。

どうやら運動は苦手なようで。

しかし警部も知能戦では負けていない。

事故に見せかけられた殺人事件の真相に、少しずつ少しずつ証拠を集めて近付いていく。

犯人も事故で片付けられると思っていたものだから、アリバイ工作がどうにも甘くて結果的に強引な論調で切り返さざるを得なくなる。

どうにも今回の犯人、フィジカル面でしかコロンボ警部に勝っていなかったようで。

本作の見所はコロンボ警部の感情が発露するシーン。

犯人の悪辣さに参ってしまった女性を目の当たりにし、犯人に宣戦布告を叩きつける。

「あの人はあんたの所為でここ(病院)に担ぎ込まれたんだ!あの人はあんたがやったんだと思ってるし、ついでに言うとあたしもあんたがやったんだと思ってる!」

ここにきて我々は、シリーズ中でも数えられる程度にしか見られない警部の激情を目の当たりにし、同時にこのやぶにらみでもじゃもじゃ頭の、不恰好な上にとらえどころのない中年警部の『正義』に胸を打たれるのである。

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