6日と7日の境目は変な時間に起き出して読書したりしたもんだから非常に曖昧ではあったのだが、無事に義父が妻と娘を迎えに来る時間帯に起床する事が出来、3人を見送る事が出来たのであった。
6時30分というもう起床するには十分な時間であったので、まずは朝食をとる事にした。どうせ一人なのだ、気取らずにカップラーメンで良い。
食べ終えて、前日百円均一で購入したメタルラックを組む事にする。メタルラック用の棒と拡張用の棒、そして棚部分と固定用部品を相応の量買い込んでおいたのだ。我が愛すべき1.5畳の自部屋(e.x寝室の収納スペース)は僕のペダルコレクションに加えて、最近はアメコミコレクションで溢れ返ろうとしていた。収納棚を増やす事でそれぞれまだまだ蒐集に励む事が出来る用になったのであった。
昼前、どうせ一人ならと自由気ままに映画を観に行く事にする。
地下鉄で伏見ミリオン座に向かい、『PERFECT DAYS』を観に行った。ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演。
以下、公式サイトよりあらすじを引用。
東京渋谷の公衆トイレの清掃員、平山は押上の古いアパートで一人暮らしている。その日々はきわめて規則正しく、同じことの繰り返しのなかに身を置いているように見えた。ルーティンは孤独を遠ざけるものかもしれない。けれど男のそれはどこか違ってみえた。夜が明ける前に近所の老女が掃除する竹ぼうきの音が響く。それが聞こえると男はすっと目をあける。少しのあいだ天井をみつめる。おもむろに起きあがると薄い布団を畳み、歯を磨き、髭を整え、清掃のユニフォームに身をつつむ。車のキーと小銭とガラケーをいつものようにポケットにしまい部屋をでる。
ドアをあけて空をみる。スカイツリーをみているのか。光を見ているのかはわからない。缶コーヒーを買うと手作りの掃除道具をぎっしり積んだ青い軽にのって仕事へむかう。いつもの角でカセットテープを押し込む。カーステレオから流れてくるのは
The Animals のThe House of Rising Sun。
いくつもの風変わりなトイレを掃除してまわる。その日はひょっとすると声をひとつも出していないかもしれない。掃除を終えると夕方にはあのアパートに戻る。自転車に乗り換えて銭湯へゆき、いつもの地下の居酒屋でいつものメニューを頼み、そして寝落ちするまで本を読む。そしてまた竹ぼうきの音で目をさます。男の人生は木のようだった。いつも同じ場所にいて動かない。
同僚のタカシのいい加減さをどうして憎めないのか。いつものホームレスの男が気になる。清掃のあいまに見つける木漏れ日が好きだ。フィルムを現像してくれるこの店はいつまであるだろうか。銭湯で出会う老人が愛おしい。古本屋の女性の的確な書評を聞くのも悪くない。日曜だけ通う居酒屋のママの呟きが気になる。今日はあいにくの雨だ。それでも予定は変えない。そんな彼の日々に思いがけない出来事が起きる。そしてそれは彼の今を小さく揺らした。
東京のトイレにまつわるプロジェクトに端を発して、はじめは短編だった企画が監督のアイデアで長編に。
主人公・平山の人柄は監督の持つ日本人の「勤勉さ」「丁寧さ」の象徴だという。
平山さんは古い木造アパートで一人で住んでいる中年男性だが、日常の中に沢山の幸せを持っている。
トイレ清掃の仕事は真面目に誠実に丁寧に、自分で道具を作る等して非常に手際良く行うその様子からは仕事に真摯に向き合っている様子が見て取れる。ETC搭載ながらカセットテープを聴く事が出来る軽自動車、というところから平山さんが相応にこだわっているのがわかるし、押し入れの中に月別に分類して自らフィルムカメラで撮った木漏れ日の写真をコレクションしている様子も静かな喜びと満足とが感じられた。寡黙でこそあれ、人と決して関わらないわけではないし、むしろ平山さんに他者に向ける眼差しは暖かだ。
やはり精神的にちょっと疲れているのか、普段ならまず選ばないであろうこういう静かな映画(バーンドカーン！と爆発したり人が死んだりするわけでもなければ、陰惨な事件が起こるわけでもない。ヒーローもヴィランも登場しない)を選んだのは僕が精神的にちょっと疲れているからだろうか。
平山さんの姿を見て特に感じ入り、思い至ったのは自分の仕事に対する姿勢だ。
営業職という仕事柄、僕は実績にこだわってやってきた。社員別の成績は日毎に更新され、その順位の上がった下がったに一喜一憂する日々。それによって焦ったり喜んだりしながら顧客に向き合ってきたのだけれども、最近その『一喜一憂』が果たして本当に必要な事なのか疑問に感じていた。『PERFECT DAYS』で描かれる平山さんの仕事に対する美しい姿勢は、一つの正しい姿を僕に見せてくれた気がする。
つまり仕事は自分のこだわりを持って、真摯に取り組むものであり、他者からの目線で自分の評価をすべきではない。
勿論、僕は営業職なので成果は追い求める。そこを放棄すると職種を変えるべきであるので。顧客に対して良い提案をする事は仕事をする上で当然の事であるからして。
しかしその成果を人と比べる必要があるのか。同僚と数字を競い合って一喜一憂し、更には自己肯定感をそれによって上げ下げするのは『必要な事』なのだろうか。過去を思い返しても、そういった行為によって顧客に対する提案や成果が左右された事はなかった。逆に、顧客に向き合う際にそういう自分の思惑が頭をもたげると、誠実さに濁りが出ると思って仕事に向き合っていたので。自分のモチベーションを感じるために人と数字を比べていたのだが、それをせずとも自分の営業職という本能に従って仕事に向き合えばもっと自らに圧をかける事なく、今と同じ結果に到達する事が出来ていたのでは。
これは実験であるからして自分にどのような作用があるかはまだ明らかではないが、しばらく他人と数字を比べる行為自体を辞めようと思う。
比べるべくは前日の自分だ。昨日よりも劣る仕事を、前日から停滞した仕事をしないためにこれまで以上にストイックに向き合う必要がある。人と比べてどうである、という安易(かつ脆弱)な自己肯定感(冷静に考えれば人と比べてどうこう、という視点を持ち合わせていたのは、仕事だけであった。趣味や家族についてはそういうものの考え方はしていなかったのではないか)を捨てる以上、ちゃんと自分で自分を肯定出来るだけの誠実な仕事を継続しよう。当然、その結果として成果も求める事になるだろう。
より、濁りなく、より充実した仕事を。
日常生活の中で、自分にとって豊かな幸福は、僕には沢山あると感じている。有難い事に。
『PERFECT DAYS』、観た結果こういう思索に耽るのが映画として良い受け止め方なのかはわかりかねるけれども、感じる部分が多い映画だった。
伏見ミリオン座を出た後は、空腹を感じたので伏見ラーメン大へ向かうも残念ながら昼の営業時間を10分前に終えていた。
そのまま栄は豚山に向かって小ラーメン(野菜少な目)を食らう。
以前妻と来て以来、お気に入りの店だ。営業時間やアクセスしやすい立地ながらきっちり美味い。二郎系では今や二番目に好きな店である。正月太りでたるんだ体にこういう食事はいかがなものかとも思うが、せめて沢山歩く事で少しでも罪悪感を減らそうと無駄な抵抗を試みる。野菜を減らした事で随分と食べやすい量になった印象。大満足ながら随分とニンニク臭くなったな俺、とマスクの中で思いながらそのまま大須へ。
まんだらけでアメコミ本の中古に掘り出し物はないかと物色。物色するのはバットマン中心になりがち。コレクションの整理をしていて気がついたのだけれども、所有するアメコミ本の中では圧倒的にバットマン関連のものが多い。
何点か気になるものはあったけれども、その気にならずに購入は見送り。自宅に「まだ読んでないものもあるしな」と思い至ったのが原因であろう。
そのまま行きつけの中古ペダル屋さんに新年のご挨拶がてら訪問。何の気なしに棚を覗き込むと「中古で手頃な価格で見かけたら使う使わないは別にしてとりあえず確保」したいブランドの一つ、MASF PEDALSのブツを発見。どうせいつか手に入れるんだしという思いが背中を押して、試奏して購入。試奏してみたものの具体的にどのバンドのどの演奏で使おうと思い至ったわけでもなければ今現在の自分のシステムのどれと入れ替えて使おうと踏み切ったわけでもなく、単純に手元に置いておきたいと思ったが故の購入。きちんと妻には連絡して許可を取った。
帰宅して、気になっていたベースのネックの微調整をして(本当はLOVELESS GUITARでの定期メンテナンスまで触る気もなかったのだけれども、明らかにネックが動いていたので慎重に触る事にした)、買ったばかりのペダルを今朝方整えた自部屋で弾く。
そうこうしているうちに妻と娘を実家に迎えに行く時間が来たので車に乗って出掛けた。
妻の実家で手作りシュウマイとおでんの夕食を頂戴して(人様の家の料理は口に合う合わないはあるだろうけれども、幸いにして妻の実家の料理は何を食べてもべらぼうに旨い。義父も義母も料理する際に味付けのベクトル調整がしっかりしているんだろうな、と思う等)風呂を頂いて帰宅。
この日はどうも活動的な気分であった。翌日が祝日である点が主な理由だろう。まだ翌日休める、と思うとどうも活発になりがちだ。というわけで2024年のサウナ初めもこの夜に。樫山君(白線の内側/あたらしいまち)と一緒に行ってきましたよ、平針東海健康センター。
以前から気になっていたのだけれども改装中だったりで行けなかった平針東海健康センター、去年の9月にリニューアルオープンしていた様子。大衆演劇も気になったけれども流石に22時からはやっていないだろうし、それでもサウナは気になるので向かう事にした。
いざ突入すると入り口から感じるザ・昭和感。靴箱から受付から、もういたるところに時間を重ねながら地域の皆さんに喜んで貰ってきたであろう年月を感じる事が出来る。健康センター、の名前は伊達ではない。入ってみて驚いたのだけれども館内に居酒屋やスナック、2階にはジム施設まであった。ジム施設は残念ながら時間外で様子を見る事も出来なかったけれど。
あと勿論大衆演劇が観られるという宴会場も観た。そこかしこに貼ってある劇団のポスターもここならでは。
樫山君と興奮しながら館内を散策したのだけれども、気分は完全に温泉宿だ。自宅から車で30分程なのに旅行に来たようなサウナ体験。
ゲームコーナーも覗いてみたのだけれどもメダルゲームにテトリス！良い！この感じ、落ち着く。古き良きゲームセンターという感じだ。幼い頃に出掛けた温泉旅館、或いは大学時代に行った夏合宿の、ちょっとレトロな宿泊施設がこんな風情を醸し出していたかもしれない。記憶の残滓が現在の眼前に甦ったような興奮。漂う空気からも喜びを感じる。
更衣室も、そして浴場もどこか地方の温泉旅館の大浴場然とした、非常に趣のある、しかしところどころ手入れがされており衛生的に難があるわけでもなければその逆の、ユーザーフレンドリーな浴場であった。サウナ室は広め、温度は同好サイトによれば90度との事だったけれども体感ではもう少し高め。水風呂は18度と「丁度良い」温度。これくらいが一番気持ち良く浸かってられるのよ。露天風呂スペースがそのまま外気浴スペースになっており、インフィニティチェアも導入されている。
時間帯故か滅茶苦茶空いており(連休の中日なので若い皆さんでサウナ施設も混み合っているかと思ったのだけれども、場所柄なのかここではちらほらという感じ)、落ち着いて入浴出来たのもポイントが高かった。尤も、あの広さのサウナ室に浴場なので込み合うには相当人数が必要そうであったけれども。
平針健康センター、地域に根差している感じもあって凄く良かったなあ。また是非行こう。