この大きな筐体には俺達の夢が詰まっている。Wren and Cuff THE CAPRIDについて。

どうして多くの愛好家はファズという音色に浪漫を感じるのか?
どうして演奏家は己の心情を込める際にオーバードライブやディストーションではなくファズを選ぶのか?
扱いにくく、豪胆なようで繊細なあの音色に心を奪われて何年にもなるが、いつの間にか僕もファズには浪漫を感じ、思いの丈をステージ上でぶち撒ける際には足下のファズのスイッチを踏み込むようになった。

よくわからずに買い漁っていた頃もあったし、あれが良いと聞けばあれをこれが素晴らしいと聞けばこれを買ったりと買い求めた事もあるし、兎に角興味をそそられるものはその衝動に任せて買い漁ったりもした。
未だに手元に残っているもの、いつの間にか拙宅にはなくなっているもの等、過去に手にしたもの全てを数えた事はないけれども弾いたベースギター本体の数よりかは多いはずだ。
それでも勿論、もっと知識があり経験がある愛好家=専門家も世の中には多くいて「ビッグマフはこの頃のが」とか「ファズフェイスは」とか「トーンベンダーは」とかそういう発言の前にはただただひれ伏す事しか出来ないが、手当たり次第に買ってはスタジオに持ち込んでを繰り返した結果『ライトユーザー』の道程を少しばかり歩いたんじゃないだろうかという気はしている。ファズの歴史にその名を残す名器や名品達に手を出してこなかったのは僕がお金がないのは勿論、やっぱりコレクターではなく道具は適度に乱雑にガンガン使いたい演奏家であるからである。
折角高いお金を払って歴史も浪漫も積もったブツを手に入れたなら、ステージの上でぶっ壊すには惜しいではないか。古いファズが本物なら今現在出回っているファズも本物だ。
大枚はたいて古いビンテージ物を、とは恐らく今後もならないけれども福沢諭吉数人分でエレクトリック・ベースギターにはうってつけのファズが手に入るなら多分僕は節操がない事が信条なだけに、そのブツもフランクに手を出してしまうだろうと思う。
ビンテージ物にはいかないぞ、と書いたばかりだがそれでもやっぱり神格化されたファズには興味があって、ここ最近のビッグマフブームから僕がラムズヘッドに関心を向けるのは当然の流れであった。

少し前にペダルの高い完成度に感嘆したWren and Cuffが作った「良いラムズヘッドを再現した」ペダルが、行きつけの中古ペダル屋に入荷したのを知ったのは機能美を極めたビッグマフを購入した頃。「あー、これ買ってなかったら試したのにな」と思いつつたまたま時間があった日にペダル屋に寄ったところ、すぐに売れると思っていたWren and Cuffのラムズヘッドが商品棚に並んでいるのを目にしてしまう。
試しに弾いてみたのが運の尽き、その具合の良さに購入してしまったのであった。決して安い買い物ではなかったが、店員氏による僕の浪漫を理解した対応(「舟橋さん、これ基盤も完全再現してるらしいですよ」「やっぱりデケェ筐体は良いですね。浪漫が詰まってるんでしょうね」)にもグッと背中を押して頂いた。その折は本当に有難うございます。

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というわけでWren and Cuff THE CAPRIDである。
今は小さい筐体のもあるようだけど、僕はファズの場合、浪漫(今日の日記は何度この言葉を使ったか。そのまま思い入れ、と言い換えてもいいかもしれない)は筐体の大きさに比例すると思っているのでこのサイズので大正解。
というか、このルックス込みで最高じゃあないか。

これ、ビッグマフのラムズヘッドをWren and Cuffが本気出して現代的に作り上げたペダルで、何が凄いって中を開けてみると基盤もそっくりに作ってある。今や本当に必要なのかこれはと言いたくなるようなオン/オフスイッチも付いている。あ、本家のラムズヘッドはツマミの位置がぐっちゃぐちゃで各コントロールをフルにすると位置がバッラバラなんだそうだけど、これはその辺は使いやすくしてある。親切だねWren and Cuff。

出音はベースでも扱いやすい、ローが削げない、思ったよりもハイゲインでないファズである。ビッグマフというイメージよりミドルが出ているので扱いやすい。
単体でも勿論格好良い音がして素晴らしいのだけど、これはビッグマフと同じく前段にオーバードライブを繋いでオンにするとこれまた素晴らしい。
僕は足元の歪みって弱い歪みと真ん中くらいの歪みと一番歪んでるものの3種類を弱中強と使い分けがしたい人で、ここ最近は「EQD LifePedalのブーストのオン/オフ」とか「Sovtek Deluxe Big Muff Piのミドルのオン/オフ」等を用いて一台のペダルで中と強を兼ねてスイッチで切り替えていたのだけど、CAPRIDを導入してからXotic Bass BB preampで弱めの歪み、CAPRIDで中くらい、両方オンで強と使い分けている。Bass BB preampをかけた後でCAPRIDをかけると、芯はオーバードライブで前に出てきて、滲んだニュアンスや毛羽立った部分がそのまま足される感じでこれまた大変格好が良い。世の中のギタリストがビッグマフの前に何かしら繋ぐはずだよ。

大変満足度の高いファズペダルである。
これにてここ最近のファズ熱は一旦落ち着いた。
良いペダルに出会えて僕ァ幸せだなァ!

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