スタジオ後にふとした弾みでピクシーズの話になった。
思い出されるのは今年の始め頃に観に行ったピクシーズのツアームービーの事である。
大学時代に先輩から薦められたピクシーズ。
「コピーしたいから聴いてみて。気に入ったら一緒にやろう」と渡されたCDを聴いて、僕はすぐにピクシーズを気に入った。決してうまくはない歌にテクニカルな事はとりたててしていない演奏。しかし何だか妙に心に残ったのだった。
映画で描かれていたのは再結成からツアーに出た彼らの等身大の姿。かつてバンドが置かれていた緊張状態を決して忘れる事ができず、当時のようにナーバスにならないよう気を使い合いながらリハーサルを重ね、話し合いをする彼ら。
しかして長いツアーの過程において、やはりストレスは溜まらないわけがなく、それぞれがそれぞれのやり方でバンドに向かい合う。
アルコール中毒だったメンバーはアルコールを控え室に置かないようマネージャーに要求し、神経をすり減らしたメンバーは親を亡くした事で心を閉ざしiPodのイヤホンを耳から外そうとしない。トレーラーの中で眠りに落ちる際に聴いているのは自信回復のための自己啓発テープで、家族とパソコンで通信するささやかな時間を癒しにしたりする。
そんな方法でバンドに向き合う彼らは、ともすれば我々より弱く繊細な存在だ。
ライブ直前、控え室が悪い雰囲気に包まれボーカルの歌う鼻歌が空しく響き、ライブ直後は演奏に集中力がなかったメンバーに理由を問い詰める。
めちゃくちゃに生々しく、リアルな映画だった。
半ば神格化されていたピクシーズの等身大の姿を描いた映画だった。
最後のシークエンスが忘れられない。
インタビュアーに対しボーカル氏が語る。
「僕にはいつだって彼らと演奏する準備は出来ていた。僕は彼らが“やろうぜ”と言ってくるのをずっと待っていたんだよ」
何故だか、涙が出た。
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