マシーネン始めました~ファイアボールSG編 第1回 購入→洗浄→組んでみる~

妻は仕事に打ち込みながら家族の一員としての役割も全うし、更に頻度こそ頻繁でないものの劇団に所属して俳優として舞台に立っている。そんな活動的な彼女の趣味の一つにレジン工作がある。
いつからだったか定かでないが、徐々に道具や素材を買い足したりしつつ夜な夜な家族が寝静まった後に作品作りをし、スマホケースやアクセサリーを作っている。出来上がったものは自分で使ったり親しい友人にプレゼントし、マルシェ等でハンドメイドアクセサリーの店が出ていると作品をジッと見て製作の参考にしたり、或いは「これなら自分でも出来る」とほくそ笑んだり「あれは自分では作れない」と感嘆したりする。
作っている最中の集中して手を動かしている様もそうだし、そういう行為の一つ一つが、実に羨ましい。

僕はこれでも趣味が少ないわけでは決してないのだろうけれども、生憎と僕の趣味は家で一人でコツコツ手を動かすものというよりかは人と一緒に行うもの(バンド活動等その最たるものだろう)だったり、蒐集する事だったり(エフェクター蒐集は何だかんだでずっと続いているこれはもう趣味だろう)、家から出て足を運ばなければならなかったり(サウナ活動は家から出て向かう時点からその楽しみは始まっていると言って良い)、あとは兎に角享受するものだったり(映画鑑賞とか)で、一人でコツコツ楽しめるものといったらこの日記くらいのものである。うん、まあ日記を書くのはバンド活動と同じくらい長く続いている趣味の一つであろう。
兎に角、手を動かして何かを作ってしかもそれが形に残るのが羨ましい。
妻がレジン工作を楽しそうにするのを見るにつけ「良いなあ」と恨めしく呟いていたものだ。
ペダル製作や楽器調整は『手を動かす事』だしバンド活動を継続する上で実益もありそうだけれども、これらは趣味と気軽に割り切って踏み込んでいくにはどうにも僕が神経質になり過ぎる。特に楽器調整なんていうのは『楽器が演奏する上で演奏者にとって問題がない状態である事』を保つ事のはずであるのに僕は気質的に『調整して楽器の良いと思われる状態を保つ事』に注力してしまい、どんどんその本質から離れていくからして向いていないと思う。

で、プラモデル製作は目をつけていた行為で気にはなっていたものの、以前一度挑戦してみたガンプラ製作はあっという間にその情熱を失った。ガンダムに対する愛情というか執着がないが故に、出来上がったズゴックを飾ってこそいるものの、継続的に手を動かしてガンプラを作ろうとは思わないのであった。
「プラモデル、向いていないなあ」と思いつつ何か手を動かせないかと思案していたある日。
SNSで見かけたプラモデルの完成写真が妙に気になった。丸っこい、何なら可愛らしいパワードスーツ然としたものを着こんだ軍人の模型である。ミリタリー然とした格好良さとその曲線からくる現代兵器とはかけ離れた造形美、しかしそれを着込んでいるのは外国人でこそあれども軍人であるからして『日常の中に紛れ込んだ非日常』みたいなものを感じさせる魅力的な写真であった。
気になって調べてみるとその模型は『マシーネンクリーガー』といい、原作アニメや漫画があるわけではなく模型ありきのものとして愛されてきたキットシリーズ。そもそもが80年代にプラモデル雑誌の単発企画でミクロマンという玩具をプラ板や他のスケールモデル(車とか飛行機とか戦車とか)のパーツを流用して改造してパワードスーツらしくしたものが反響を呼びシリーズ化、後に設定等が加えられ独自の世界観が築かれたものらしい。映画化の話が出たり設定資料集が出たり、ガチャガチャになったりファンの集いが開催されたり根強く愛されているようで、僕も大変興味をそそられた。
原作とかないわけだから模型そのものに集中出来そうだし自分の思いをたっぷり投影出来そうである。原作ありきのものではないけれどもキャラクター性のあるシリーズ、という絶妙なところに惹かれるものがあった。

しかし接着剤使用(最近のものは不使用でもいけちゃうらしい)の塗装前提のキット構成は模型作り超絶初心者の僕にはハードルが高いように思われた。リサイクルショップの中古模型コーナーでマシーネンクリーガーを見かけ手に取っても、それなりのお値段がするし尻込みしてすぐに棚に戻してしまう日々が続いた。

しかし先日のサウナ行きの車中で、かしやま君(あたらしいまち/白線の内側)と趣味の話をしている際に「模型作りが気になるんだけど断念し続けてる」旨、話をすると「やらない理由がそれなりにあってもまずはやってみるって良い事だと思いますよ」と背中を押され、更には義母から「良いじゃない孝裕君!老後の趣味は早めに見つけた方が良いと言うよ」とまた背中を押して頂き、遂にマシーネンクリーガーに手を出してみる事にしたのだった。
完成出来なかったりいざやってみてそんなに楽しくなかったとしても、マシーネンクリーガーはそういうものだと知る事が出来ればそれで良し。
思い立ち早速12月28日、BO〇K OFFで興味があったキットと工具を買ってみた。


『ファイアボールSG』。これが僕の人生初のマシーネンクリーガー(以下、ファンが使う愛称にならってマシーネンと表記)である。4500円くらいだっただろうか、お試しで買ってみるにはそれなりのお値段だけれども、やはり最初に「可愛いし格好良いな」と思ったデザインのものを作ってみたかったし、そういうキットを買った方がモチベーションが上がると思ったのでこれを選定。
ちなみに工具も同じBO〇K OFFで購入した。ニッパー(安過ぎない、それなりに良さそうなもの)、接着剤(タミヤセメント流し込み用)と紙ヤスリ(400~800という番手のセット)は組み上げるまでに必要最低限な工具として購入。
塗装のための塗料はこの段階では組み上げるところまでいけるかわからなかったので後々考えようという気持ちだった。


蓋を開けてみたところ。
うわあ、イメージするTHE 模型という感じ。
部品の数も多いし(そして極小のものもある)果たして僕に完成までこぎつける事が出来るのだろうかといきなり不安になる。
模型製作といえばBB戦士とかちょっとしたガンプラでしかなく、幼少期に接着剤を使ったプラモデルに手を出して手とプラモデルを接着剤のニチャニチャだらけにした苦い記憶が甦った。
幸先不安である。しかし「買ってしまったからにはどんどん手を動かしていこう!」と前向きな気持ちになっていた。
マシーネンについてそれなりに調べていた僕は「マシーネンは失敗→リカバリーを繰り返す事でどんどん格好良くなる」という記述を見て変に気が大きくなっていたのだった。実際に手を動かしながら迷えば良い。やってみよう!という強気な気持ちを胸にいざマシーネン!


今時はHow to本がなくてもインターネットで調べればちょっとした知識は得る事が出来る。
塗装するのであればランナー(プラモの部品がついた板状のあれね)を中性洗剤で洗っておくのが吉、という記述を見かけ台所の食器用洗剤と風呂場の洗面器を使ってお湯洗いした。本当は歯ブラシ等で部品をそれなりに磨くと良いらしいのだけれども、早く手を動かしたいというはやる気持ちに圧されて手洗いでそこそこ洗って良しとした。
ここで結構勢いよく洗ったもんだから部品がランナーから外れかけて焦った。優しく、丁寧に洗うのが大切なようだ。
一晩乾燥させた方が手堅そうだったけれどもキッチンペーパーで拭いて乾かした。これもそれなり。失敗したら「失敗した!」という知見を得るまでだ。
ここまでやったら実際に手を動かして組んでいく。接着剤も使うし以降は子供達が寝静まってから作業に取り掛かる事とした。


説明書によると手からつくっていくらしい。手は「手のひら」「親指」「小指」の3つの部品に分かれており、それぞれ小さなポチッとしたガイドこそついているものの基本的に接着剤で接着。
手がニチャニチャになった記憶が再び甦る。しかし今回はタミヤセメント(流し込みタイプ)がある。
流し込みタイプは接着する部品同士を組み合わせた状態で接着面の隙間にチョンとハケで流し込む接着剤の事。ペタペタ塗るのも楽しかろうと思ったけれどもこの流し込みタイプの方が不慣れな僕には作業にストレスがなさそうだと思ってこちらを選んだ。
で、実際使ってみると凄いぞタミヤセメント(流し込みタイプ)!最初の一度で綺麗に、手も部品も汚さずに接着出来た。幼少期のトラウマよさらば。この瞬間から接着行為は不安を伴う行為ではなく「出来なかったけれども出来るようになった行為」になった。この「出来なかった事が出来るようになる」事って、生きる上でかなり上位に入ってくるであろう快感を伴う行為であると僕は考えている。いやこの瞬間から滅茶苦茶楽しくなったもんな実際。
で、今回マシーネンの製作をする上で挑戦しようと思っていた事の一つに「合わせ目消し」がある。
パーツとパーツをパチンと組み合わせるとどうしても合わせ目って残ってしまうのだが、瞬間接着剤でパーツ同士を溶かす事でパーツを一つにし、更に研磨する事で継ぎ目や凸凹をなだらかにするのが「合わせ目消し」。
ガンプラを組んだ数少ない経験でも瞬間接着剤を使う事を敬遠したがためにこの「合わせ目消し」をした事がなかったのだが、今回はマシーネンを格好良く仕上げるためにこの「合わせ目消し」に挑戦しようと思っていたのだった。当然、ヤスリ等をかけたりするので最終的に塗装もする必要があるのだが、塗装はマシーネンに着手する上で必ず挑戦しようと思っていたので合わせ目消しにも必然的に挑戦する気概を持ったのであった。
上記の部品は人生で初めての接着剤を使って組んだ腕部品であり、かつ合わせ目消しに挑戦した箇所である。
いやあこうして見ると消えきってないような気がするけれども、これ実際に手を動かしていくと少しずつ仕上がっていく様には感動をおぼえた。


この太腿の部分は合わせ目消しこそ挑戦したものの、なかなか綺麗に消え切っていない。
マシーネンでは時々あるようなのだけれども、そもそもパーツ同士が綺麗にパチッとかみ合わない事がある。
こっちを合わせるとこっちが微妙にズレる、というように絶妙なズレが発生する事があるようである。
そうなってくると合わせ目だけでなくこの段差をどうにかして綺麗になだらかにしたいなと思うのが作り手の当然の心理だろう。
この足をあーでもないこーでもないとやっている時に事前予習で見た(現代は便利だ。手練れのモデラーさんの実際の作業風景をYoutubeで気軽に見る事が出来る)パテとかそういうのにも興味が湧いてきた。
結果的に今回はパテこそ使わなかったものの、多少盛る事が出来、固まった後にゴリゴリ削る事が出来る粘度高めの瞬間接着剤を後日購入した。


ロボット然としてきた。この肩の部分とかボディとかいくつかにパーツが分かれており、当然のように接着剤での接着を必要とされるし前述した通り絶妙な部品の歪みとかあるもんだから結構苦心した。ただこの場合の苦心=夢中になるという事であり、写真を撮る間も惜しんで手を動かしていた。部品の汚れや微妙な合わせ目の消せていなさ、段差は後でどうにかしようという精神で一心不乱に手を動かしていた。
いや、正直滅茶苦茶楽しい。


足首のところ、こういういかにも機械然とした配線ケーブル等もマシーネンのキットには同梱されている。
穴のサイズが絶妙に合っていなかったりして穴を広げる必要があったりして「ええい、こん畜生め!」と笑いながら穴を広げたりした。
全く初心者泣かせではあるのだけれども、キットとして難易度設定(?)が絶妙だなと思ったのは「初心者でも頑張れば出来る」程度の難しさだったりする事だ。実際にキットを前にして「どうしよう」と呆然とする事もなかったし「絶対無理だろ」と投げ出したくなるような事もなく、どこまでも「うわあこりゃあ大変だ」と思いながらもどうにかなってしまうレベルの技術しか要求されないのであった。
マシーネン、楽しいぞ。

この日はここまでとした。
あまりの楽しさに組み上がっていく喜びと同時に「もっとゆっくり楽しんだ方が良いのでは」という気持ちも芽生えたからだ。
実際ここまで数時間、かなりの集中力を要したし疲れてもいたので。
ちなみに妻は夢中になって手を動かす僕を見て「楽しそうだねえ、良かったねえ」と笑ってくれた。
理解ある妻にも感謝。