三重県の津市真ん中広場について謝罪しておかねばならない事がある。
ずっと、『ど真ん中広場』だと思っていた。『ど』がつくだけで随分とファニーな印象になってしまう。
この日は鈴木実貴子ズのサポートで真ん中広場にて開催された(当初こそ別会場でのサーキット形式を計画していたのだが新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえてこういった形での開催となった)『Wow!signal』に出演した。
野外フェスだし音量的にも娘が同行して大丈夫だろう(屋内より野外の方が音が拡散するしいざとなれば逃げ場はどこにでもある)という事で当日練習後は妻と娘と合流し、自家用車にて津に向かう。
鈴木実貴子ズ+サポートメンバー各務君+スタッフなっちゃんの車より随分と遅れをとったので妻が怒涛のような走りで津へ向かって運転したのだが、どうやら休憩のタイミングで追い抜かしたようで果たして会場へ先に到着したのであった。
それにしても会場入りの瞬間は異様であった。
会場はそこそこ大きな交差点に面したところにあるのだが、言ってしまえば周りは割とオフィス街。言われなければここで音楽イベントが開催されてるとはにわかには信じ難いであろうシチュエーションなれども、車で近付くにつれ爆発音のような大きな音と叫び声が聴こえてきた。
タイムテーブル的には間違いなく彼らだしこの叫び声はよく聴いた彼のもので間違いない、と横を見ると妻が戦慄した表情で一言ポツリと「やべえな」と呟いた。確かに。全くもって、異論はない。
車を停め、妻に一目でも観たいからと娘をお願いし会場へ急ぎ足で向かう。会場最寄りの立体駐車場の中までも、先程耳にした大音量の爆発音(時々金属音も含まれている)と叫び声は聴こえてきている。
炭酸さんとジャイアン君のバンドixxxxx!に間違いなかった。
さあステージが視界に入ろうか、という瞬間に演奏が終わった。いやまじかよ。なんてタイミングだ。ixxxxx!の衝撃、目の当たりに出来ず。少々バツの悪い思いを胸にしつつジャイアン君へ声をかける。どうやらこの日は藤原君(ex.super idol group)よりビンテージのツインリバーブを借りてきていたようで、それが物凄い爆音だったとの事。ジャイアン君はこのバンドではベースアンプとギターアンプの2台使いのようなのだが、やはりあの爆音はそういったシステムによって成せるわざでもあったのだ。僕もいつか試してみようかな。
感染症対策がしっかり行き届き、同時に主催側の出演者への誠意と気配りに満ち溢れた楽屋(恐らく公営施設の、会議場だか集会場だか普段はそういった用途で使われている部屋らしかった)は大変広く、娘が楽しそうに走り回っても人様の迷惑にならない程であった。有難い。
薄暗くなってきた頃に出番。
転換してそのまま演奏という流れであったのだけれども、お客さんも共演者も観ている中でのリハーサルだなんて人目が滅茶苦茶気になる。ただ転換の時から確信したのだけどこのオフィス街に演奏を響き渡らせるというのはなんとも快感なのであった。足元でかけたリバーブに、更に野外での奥行きも加わって気持ち良いったらなかった。
お互い演奏は観た事があるし知ってる中だけれど、鈴木実貴子ズのバンド編成を観るのはこの日が初めてという友人知人もいたので若干緊張した。手に入れてからずっと愛用し、最近は良い音を出すよう微調整に注力しているEQD LifePedalも良い音していたようで良かった良かった。
鈴木実貴子ズでの演奏は最近兎に角この4人での演奏を重ねているせいか、以前よりもずっとバンドとしての呼吸は生じているけれども、やはりそこは圧倒的に鈴木実貴子さんの呼吸や気迫にシンクロさせにいく(高橋君のドラムもそこに注力しているので)事が多く、やっぱり鈴木さんが良い具合だとプラスαの部分が出てくるねぇ。
ex.たまの石川浩司さんもPANICSMILEも片付けや諸々しながらチラ見になってしまったけれどライブを観る事が出来た。こういう日は演奏後しかほぼほぼライブを落ち着いて観る事なんて出来ないけれど、日没後一気に冷えてきたのと娘も一緒だったのでメンバー達より一足お先に失礼させて頂いた。
演奏終了直後の忘れられない瞬間。
演奏を終えて楽器を片付けて、さあステージを降りようと振り返ると客席側、最前列のお客さんが立っていた辺りより少し後ろの方に娘が立っていた。転換中なのでほとんどのお客さんは屋台に飲み物や食べ物を買いに行ったり喫煙所で煙草を吸いに行ったり、まばらになったその場所で娘はニット帽と手袋を被って僕に視線を向けていた。はにかむようにモジモジとしながら笑顔で僕を待っていたのであった。
娘よ、正直言って激烈に可愛かったぞ。父はライブハウスで終演後に若い女性のお客さんに演奏を褒めて貰えて嬉しかった事、鼻の下を伸ばした事もあったけれども、こんなに嬉しいお客さんの『待ち』は初めてであったぞ。
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