活字に飢えていたので江戸川乱歩先生のとライトノベル「キノの旅」の一巻を買いましたよ。
江戸川乱歩全集第16巻は「透明怪人」「怪奇四十面相」「宇宙怪人」等を収録。昔小学校の図書館にはポプラ社の少年探偵団シリーズが揃えられており、劇画調の表紙絵に畏怖しながらも読み漁っていた。あの頃の興奮を思い出す。明智小五郎は僕の少年時代の名探偵の象徴だったが、この年になってから読み返してみると明智さんは「英雄」だったのに気付いた。彼は現場検証をしたり証拠品を探したり推理したりはしない。変装したり二十面相と知恵比べをしたり冒険活劇の世界に生きる「ジョーカー」なのだ。明智先生さえいれば大丈夫!明智先生こそ素敵な大人の象徴!明智小五郎は少年活劇の世界に生きる名探偵なのだ。
それが悪い意味であるとかそういう事では全然ないのだが。
「宇宙怪人」という作品は兄が所有していたからか幼い頃に何度も読んだ。円盤が世界各地に飛来し、そこから羽を持った宇宙怪人が現れ世界は大騒ぎ、という話。
真相が明らかにされた時、騒動の真犯人、怪人二十面相は明智を相手にこう語る。
「なるほど、盗みをはたらく俺たちは悪人かもしれない。では戦争をやっている奴らはどうなんだ。あいつらは戦争で何千、何万人の人間を殺す。俺たちが悪人なら奴らも悪人じゃあないのか。世界中の悪人が集まって会議をしたのだ。そこで俺はこう言った。地球の上で、限られた地球の上だからこそ戦争は起こる。ならば宇宙から敵が来たらどうだ。いがみあっている奴らも力をあわせるだろう。宇宙に目を向けるべきじゃあないのか。そうすれば戦争なんかなくなるんだ」
わかりやすい論理ではある。僕もそう考えた事はあるし、極論ではあると知りつつも現実に「宇宙からの侵略者」が現れたら人類は一致団結するだろう、とも思う。
明智先生は二十面相にこう言う。
「確かにそうかもしれない。二十面相、君は間違ってはいないよ。だが君は罪のない人をさらったり怖がらせたり、今回の事件の前にも色々なものを盗んだりした。悪いことをした人間は罰を受けなくてはいけないんだ」
明智小五郎が、各国の首脳の罪を追及する機会を得たら何と言うのだろうか。
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