日中、外を歩いていると熱気で意識が朦朧とする。冷房病患者たる僕からすれば、あれは出歩くような暑さではない。
昼が日光で、夜は冷房で体力を削り取られ、僕はもうヘトヘトだ。
そんなスタジオに楽器を背負い荷物を抱えて向かうのも嫌になるような日々が続いているけれども、昨夜は印象深い出会いがあった。
アルバムのミックス作業、非常勤で参加しているバンドの練習、或いはふらりと遊びに行くスタジオがあるのだがそこでの話。
ロビーのソファーには我々しかおらず、他にはアツシ・ハセガワのみ。
背後のスタジオからはタイトで色気のある、格好良い演奏が漏れ聴こてくる。
その演奏者達がスタジオから出てきた。中年、と呼ばれる年齢層に位置する方々で随分とかくしゃくとして溌剌としている。暑さと体力不足で覇気のない僕なんかよりよっぽど活力に満ちた目をされておられた。
アツシ・ハセガワ氏のミックス作業も終わり確認がてら我々がアルバムを聴き通しているところだった。その方々が「君達の音楽かこれは」と声をかけてくださった。
話をしていると、会話の中心になった、目が活力に満ちたその方はとんでもない経歴の持ち主であった。
三十ウン歳までスタジオミュージシャンとして活動しておられ、山口百恵の音源の半数は実にその方がドラムを叩いたそうである。他にも出てくる出てくる、思わず唸ってしまうような経験をされた方なのだった。
話はリズムセクションのタイトさの重要性と、レコーディングにおける湿度と音の関連性について。
話だけでは眉唾物かもしれぬ。しかして、スタジオから漏れ聴こえてくる音楽を聴いていた我々には氏の話は説得力を伴って迫ってくるのであった。
最後にその方から名刺を頂いた。
名刺には燦然と輝く「代表取締役」の文字が。
波乱万丈の人生を、その方、F氏が歩んでらっしゃったのは疑う余地もない。
そんな方に我々の音楽を肯定して頂けるというのは、本当に嬉しい。
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