封じられた場所

9ca0b9c3.JPG愛用してきたSONYのデジタルウォークマンが壊れた。何て事だ。
いっその事ipodに乗り換えようかしら。

各務君、半田君、大学の後輩家田君と豊明にある廃墟に向かった。半田君のバイトが終わる時間を見計らって合流、国道1号をひたすら東に。
迷いはしたものの、家田君の携帯アプリに入っているカーナビのお陰で無事目的地に到着。
今は使われる事もなくなってしまった終末処理場が今回の目的地である。
フラフラ入って行き、外観を眺める。
窓を含む外壁は格子で覆われており、中の様子はガラスが割られほとんどなくなっている窓から伺う事ができるものの、入る事はできない。できるわけがない。空が白んできた頃合だったので必要以上に不気味ではなく(それでも荒れ果てた処理場に面して墓地が広がっており、それらの織りなすコントラストはかなりパンチがあったのだが)、冷静に観察する事ができた。なるほど、確かにここは処理場だったに違いない。薄暗いので定かではないが、一面水がたまっているような場所もあった。

フラフラしていると人の声が。
「おーい、何やってるんだ」
このシチュエーション下においてはある意味最も畏敬と恐怖の対象となる、市民の味方の登場である。観念するには数秒も必要としなかった。

悪戯がばれた少年のように(というかこの状況はまさしくそのものである)すごすごと出ていく僕達の眼前には、年を重ねた市民の味方と若い市民の味方。

「すみません、面白そうなので入ってしまいました…」
「肝試しもいいけれど、下手したらそれじゃあすまないぞ」
「申し訳ないです。軽率でした」
「確かに季節柄わかるけどな」
そう言って廃墟に一瞥くれる高年の味方氏。
若い味方氏は首尾一貫して職務に忠実であった。国道脇で廃墟と墓地しかなく、死角になっているこの場所はよく外人が盗難車を捨てに来るらしい。それで味方氏達は巡回していたのかもしれない。

「ここはあれだ、汚水の処理場だよ」
うなだれた僕達に語る高年氏。
「処理場、ですか」
「おう、危ないぞ。中に入って処理槽に落ちたら深い堀になってるであがってこれんくなるわな。処理槽が幾つもあってな、一層目、二層目と汚水を綺麗にしていって最終的に水を綺麗にして川に流していたんだ。下水の設備が整う前の話だな」
「…なるほど」
「こんな季節だし、ほらこっち側は墓地だろ、ひっぱられるぞ」
「ひ、ひっぱられる、ですか」
「昔はよくあがったよ、…死体が。流れ着くんだなあ」
「…」
「肝試し、今度は一人で来るといい。とても入る気にはならないだろう」高年氏はそう言うと笑みを浮かべた。

予想だにしない形でオチがついてしまった。人の死に関わる場所だったなんて想像もしなかっただけに、高年氏が語ってくれた内容はある種のインパクトを伴っていた。
それにしても、注意で済んで本当に良かった。

図らずも曰く付きの場所を訪れてしまった僕達。帰路に着きながら僕は見逃してくれただけでなく、処理場にまつわる逸話まで教えてくれた味方氏達にただただ感謝するのだった。

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