年明け一発目、未確認尾行物体。

ここ最近は夜な夜な佐藤さんちに行って作業をしていた。

段ボールを持ち込んでカッターナイフで切ったり、ガムテープで張り付けたり佐藤さんちの前で新聞紙を広げてスプレー缶で塗装したり。

段ボールは無限の可能性を秘めている。エフェクトボードも段ボールで作ったし(今現在はその発展形、100円均一で購入したカラーボードを張り合わせたものを使っているけれど)、やる夫のかぶりものも段ボールで作った

僕は段ボールとガムテープがあれば結構どうにでもなっちゃう方で、それで何か作って人前で何かやるのが好きだ。我ながら子供じみた趣味だと思う。小学生の頃、割り箸鉄砲が流行った事がある。皆放課になると撃ち合うのだが、自信満々でちょっとゴツいのを作っちゃって微妙な顔されたりする、僕はそんな少年だった。

そういう部分は未だに変わっていない。

何なら、27歳にもなって無邪気に段ボールとガムテープと格闘する様は異様にさえ見えるかもしれない。

出来あがったものが年相応であれば良い、けれども僕の工作シリーズは決してそういう質のものではない。

エスカレートしてしまった童心、それを段ボールにぶつけているのだ。

というわけで昨日はそんな段ボール工作で出来上がった羅生門を使って新栄CLUB ROCK’N’ROLLに出演。

ブッキングマネージャー 本多さんから「何かやってみないか」と実に嬉しい文句でお誘いを頂いてから気合いは入っていた。お年玉スペシャルゲスト、と銘打っての出演であるからして、これはもう過剰に全力出すしかないだろう。

こういう時はベースは弾きたくない。となると朗読で、今までと同じ内容のはやりたくない。色々と考えはしたものの、結局新春に相応しい名作文学をやる事にした。

『芥川龍之介/羅生門』である。

続・我が逃走
スプレー缶で塗装した羅生門。
CLUB R&R、流石「赤い箱」!
馴染む馴染む。

で、普通に朗読するのでは面白くないので幾つか趣向を凝らす事にした。

段ボールで羅生門と柱を作り、左右の柱の裏側にはIHヒーターを設置。事前に業者に発注したドライアイス12kgを鍋に叩き込み、スモークを焚く。柱はうまく立ったものの、屋根の部分は垂直に垂れ下がって(画像参照)しまい、斜めにせり出した屋根を作るには構造から見直す必要性を感じた。

で、新栄CLUB ROCK’N’ROLLに配達されてきたドライアイス12kg、事前の練習もなく当日ぶっつけ本番、どうなるか誰にもわからないいわば"賭け"だったのだが、結論からいうとこれは不発に終わった。

開場5分前まで全力で水を沸かしていたIHヒーター2機。ドライアイス6kgずつを放り込んだ瞬間に白煙が上がる。

「見ろ!やったぞ!俺の勝ちだ!アハハハハハハハハハヒャアッ!!これがドライアイスの!12kgのドライアイスの力だ!!ざまあみろ!ヒャッハハハハハh

ガシャーン

!? 熱ッ!・・・・うわ、ば、馬鹿なああああああああ!!!!!!!」

据え付けた場所の土台が弱かったのか、お湯をたくわえた寸胴はIHヒーターごと転倒、お湯は全てステージにぶちまけられてしまった。幸い機材へのダメージはなかったようで、皆に手伝って貰って(あの時は皆、有難う)必死にリカバリー。

で、改めて水を入れてスイッチを入れるも、使うのは火力の弱いIHヒーター。とてもじゃないけどお湯は沸かない。自動販売機でホットのお茶を買ってきて入れてみたりしたものの、6kgのドライアイスの冷却効果に適うはずもなく、煙はイメージの半分以下、あれならなくても良かったんじゃないかレベルのスモークしか出してくれなかった。これには本当に悔いが残っている。

続・我が逃走
楽屋にて。撮影は柴山社長(ONE BY ONE RECORDS)。

しかしこれで諦める程、今回は武器が少ないわけではない。

羅生門、ステージ後方で僕が朗読、伊藤君が即興演奏をするといういつもの二人に加えて、即興演技でケンタロヲさんと佐藤さんにも参加して貰った。ケンタロヲさんは下人役、佐藤さんは老婆役。

この二人もそれぞれ「滅茶苦茶読み込んでくる」「敢えて読み込まずに朗読に合わせて演技する」とそれぞれコンセプトを持った上で本番に臨んでくれた。周りの様子を窺いながらの朗読だったのでじっくり観察出来なかったのだけれども、それでも素晴らしい演技を披露してくれたと思っている。お二人様、本当に有難うございます。

「羅生門」の世界観、もう顔からして「羅生門顔」のケンタロヲさんとああいう瞬間にはおどろおどろしさを発揮してくる佐藤さんがいたからこそ描けたのだと思っています。

いや、しかし朗読と演奏と演技、それに加えてPA 井藤さんによる即興でのエフェクト処理、これらがそれぞれ影響を与えあって一つの結末に向かっていく様はこれはもうジャズだったね。演奏が先行する瞬間もあれば演技が先行する瞬間もあったし、朗読が引っ張ったかと思えば今度は演技が引っ張る。演奏がガーッといくと演技も熱を帯びて、では朗読は早口だけれども淡々とやってみようか、等と色々と面白い瞬間があった。即興はこれだから面白い。ケンタロヲさんと佐藤さんという普段は楽器を用いて表現活動をされているお二人を役者として引きずり出す所に面白味を感じていたけれども、当初の想定より遙かに有機的な30分がやれたのではないだろうか。勿論それぞれ思う所、顧みる所はあるはずでもし次回同じ公演を行う機会があるのならば、それを踏まえた上での即興対決が楽しみだったりもする。

僕はと言えば、今回大道具、舞台装置面での反省点が凄いので「羅生門 弐号機」を開発して挑もうと思っている。

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