役者をやった話。

先日行われた新栄トワイライトvol.4にて上演された赤井千晴さん作品『本日も異常なし。』にて舟橋まさかの主演を務めさせて頂いた。
ほぼほぼ演技経験のない僕(今まで何度か舞台に立った事はあるけれどもほとんど「そのままで」とか「普段通りで」だったので演技らしい演技って実はした事がない。出来ない、と断言するつもりはないけれど)なのだけれども赤井さんから「いつかは舟橋さんで」と前から言って頂いていただけに実現出来て本当に嬉しかったです。今まで何度か多分、ご一緒した事はあるけれども今回程密にお互いと対峙して物を作った事ってなかったのでは。ようやく一緒にやれたねえ赤井さん!
赤井さん、有難い事に一緒にやると決まったら脚本を書き下ろして下さり、恐縮な事に最初頂いた脚本は「折角一緒にやるのだからもっとやりたい事をやります」と捨てる程にこだわってらした。僕という素材を使って作品を作る事にあそこまでこだわって貰えたのなら僕も本望だった。
赤井さんは実はここ数年お付き合いしている演劇関係の人達の中でも一番長く僕の姿を観てきてくれた人だ。
その昔やっていたバンドのライブを観ていたそうだし、その次にやっていたバンドや手伝っていたバンドのライブも観ているそうで、最初にそれを聞いた時は確か結構仲良くなっていた後だっただけに相当驚いた記憶がぼんやりとある。確か、驚いて言葉も出なかったんじゃないか。
そんな赤井さんとの関係であるからして、どんなものが来てもきっとそれは相当に僕に向き合ってくれた作品になるのは明らかで、僕も光栄に思いながらも楽しみにしていた。
赤井さんから頂いた脚本は、赤井さんの怪奇、ホラーなイメージを裏切ったコミカルでシュールなものだった。とても面白い、と思った。予想を裏切りながらも赤井さんらしい作品だ、と思った。そしてこれをきっちりやる事が出来れば今まで経験ゼロだった演技という表現に対して大きな収穫を得る事になるだろう、と思った。

実際のところ赤井さんは稽古終盤、僕も赤井さんと同じヴィジョンを共有出来ただろうという段階に至るまで「雰囲気で」とか「良い感じに」とか抽象的な事は一切言わなかった。「もう少し抑えて」「コミカルになり過ぎないように」「動作と動作の間に頭の中をうかがわせる様な」等、演技に対するコメントは明確なもので、そしてそれは今まで僕が体験した事のない行為だった。
「こうう風に存在してください」とか「こういう風に機能してください」等存在や意味合いに於いての演出は今までも経験した事があったけれども、演出家に「演技」に演出をつけられる、という事はひょっとしたら初めてだったかもしれない。大変面白く、興奮する行為だった。こっちか、こっちか、それともこっちか、とがむしゃらにやっていくうちに少しずつ今回の演技のコツを理解していくのだった。

本番当日は二人で緊張して二人で興奮して二人で楽しんだ。
本番が一番良かったんじゃないか、と思う。結局、どこまでも赤井さんにおんぶにだっこだったけれども。
赤井さん、今回は起用して頂いて有難うございました。素人役者だったけれども、奮闘したつもりです。是非また何か機会があれば!

2016_01_28_001

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