書いた言葉と口にする言葉


会社の会議で10分程スピーチというか、講和というか、発表というか、まあ兎に角、そういうものをする事になった。
人前で話すのは嫌いではない。元々は苦手だったし今も決して得意ではないけれども、人前に立つのが嫌でたまらない時期があった事を鑑みれば大いなる変化であると言えるだろう。バンド活動が僕にもたらしたものは幾つかあるけれども、その中の一つではないだろうか。
とはいえ、ノープランで10分ものあいだ話し続けるのは現状の僕にはハードルが高いので、あらかじめ原稿を書いておく事にした。言いたい事をまとめる足掛かりになれば、と思ったのだ。

しかし今度は文章を書いている時と全く同じ感覚で『創造主がいるのであればかくも滑らかな曲線をどのようにして考え付いたのか、というようなカーブを帯びたリンゴ』みたいな表現をしてしまうものだから、妻の前で一度読んでみていやこれじゃいかんと大幅な加筆修正を施したのであった。
文字ではなく音声という形で人の脳みそに情報を届けなければならないのだから、先述のようにぐちゃぐちゃ情報を盛り込んでいくのではなく『リンゴ』と一言、ただ一言添えれば良いのだと思い直す事が出来た。
「書いた原稿を黙読する」ではこの気付きを得られなかった気がする。声に出して本番を想定したペースで読んでみたからこそ判明した事だ。