楽器に関しての備忘録のつもりがほぼほぼ自分語り。

あれはいつの日だったか、それまで自分自身否定しながらも無意識にこだわっていた「所謂、ベースらしい」サウンドというものにいよいよ執着しなくなったな、と痛感した瞬間があった。
自宅に向かって一人、車のハンドルを切っている瞬間だったか、それとも楽器さえ背負わずにこの身一つで自転車を漕いでいた時だっただろうか、あるいは風呂に浸かってぼんやりと虚空を眺めていた時だろうか、はたまたベッドに転がって眠りに落ちるその暫時、その刹那だっただろうか。
いずれにしても、「あ、俺、音の捉え方変わったな」と自分自身ちょっとした驚きを持ってそう実感した瞬間があった。断言したって良い、それは楽器を弾いている最中でなかった事だけは確かだ。楽器を演奏している最中はそんな事を考える、感じる余裕なんてない。あれはもっとこう、必死になる行為であるからして演奏しながら循環して鑑みて、だなんてそんな余裕と余白を必要とする行為は出来ない。まあ、中にはそういう余白を作るような演奏もする事はあるけれども、けれどもその時はその時でいつまでその余白を継続するのか必死になっているので、これはもう僕の不徳の致すところではあるのだけれども、やはり余裕がない。
よって、僕がそう感じたのは楽器を演奏していない時である事だけは確かである。
「ベースらしいサウンド」というのは僕がエレクトリックベースギターとは様々な音が出せる楽器だと気付いた時から手を変え品を変え挑み続けているテーマである。一頃は反骨心を持ってその言葉を浴びせかける輩に一瞥くれていた。
いや、言わんとする事は理解出来る。バンドアンサンブルの中に於いてその瞬間、ベースパートに期待するものというは僕もベースギター奏者の端くれ、同じである。必然性があればそりゃあこの楽器の長所だもの、低音によってスペースのデザインや造形を担わせて頂きます。けれどもそれが、もう演奏する以前に大前提として、その演奏家の思想としてそうそう、これこれ、ボンボンやってくれ給え的な、これはもう断言してしまおう、『思考停止』からくるものであれば話は別である。
「ベースにリング・モジュレーター?使わないでしょ、ハッ!」
世の中には平然とこういう事を恥も外聞もなく口にする演奏家がいるのである。創造、という言葉を知っているか。何かを作り上げる行為に本当に臨んでいるのか。想像力や認知の外に向けて踏み出すのはクリエイティビティの向上の要素の一つなのでは?
おっといかんいかん、ついつい熱くなってしまっていけない。そう、結局全部、電気信号なんだから如何様にでも加工すれば良いと思うのね、シンプルな話。電気信号を加工して格好良い素敵な音が出るのであればその元の楽器が何であっても良いではないか、という考え方で。僕は自分愛用のベースギターが一番操作しやすい楽器であるのでそれを使って(不自由になりたい時は使わない。これはこれで演奏に於いては効果的であると最近意識している)森羅万象の音を出したいと思っている。
こうなってくると如何にして音を加工(しかも多方面に)するのかという話になり、そこでようやく今回の本題、ピッチシフターになってくるのである。

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DigitechのWhammy RICOCHET、導入しました。これ、ベースギターでも素晴らしい。

音程をなるべくスムーズに、かつ美麗にシフトするエフェクターというのは大変重宝する。どうやったって自然な加工音(矛盾した物言いというのは理解している)にはなるわけがなく、いや恐らく様々なエフェクトを追加してゆけば最終的には完全なそれになるのであろうけれども、このエフェクター単独では勿論そうならない。それでも僕がこれを導入したのはそれまで使っていたピッチシフターよりも圧倒的にピッチシフト時の音のヨレが少なかったからである。ヨレ、別に悪くはないのだけれど、今はそれが旬でない。
ペダルのないワーミー、と言える本機だけれども正直触ってみるまで操作感は大丈夫なのか、とかペダルがなくてワーミーの美味しい感じが出せるのか、とか色々懸念していたんだけれども、結論からするとこれ、いいよ!
スイッチを踏んでいる間だけピッチシフトするのか、それともオン/オフでドライシグナルと切り替えるのか選べたりするのだけどペダルを踏んでいる間だけピッチシフト、これ信じられないかもしれないけれどもペダルを踏んでいる感覚と近しい。
ピッチの上がる速度をツマミで調整、というのも最初は大丈夫かと心配だったけれどもこれとスイッチによるオン/オフでほぼほぼノーストレスでピッチシフトが楽しめるから凄い。あ、でも曖昧なピッチで上げたり下げたりウニウニした人には不向きである。
僕みたいに「ガッキィィィィィンンン!!」とピッチシフトしたい人には良いけれども。
あと上げるだけじゃなくて下げるのも、結構オツである。ベースでオクターブダウンした音色はオクターバーでドライシグナルカットしたりした音とはまた別物の味わいがある。そういう演奏の時もピッチ検出の正確さ、迅速さは流石。遅れない遅れない。

繰り返しになるけれども、ウニウニやらないようであれば全く不足ない、良いピッチシフターです。

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