汗祭りに出演した話。

ライブハウスって今でこそ行き慣れた感あるし「演奏しやすい」とか「癖がある」とか「過ごしやすい」とか「音がデカい」とか、そういう尺度で語れるようになったけれど、まだ20歳そこそこの頃はライブハウスのステージに立つようになって数年経っていたもののそれでも歴然とそこは「怖い」場所だった。
「ステージでは何が起こるかわからない」、だから怖い、とかそういうのではなくて。僕が何に恐れをなしていたかというとそこに漂うイカガワシイ雰囲気とか物々しいバンドマンのオーラとか、そういうのに怯えていたのだよ僕は。
その後何回もライブハウスに出るようになって見た目は物凄く怖い人でも(それこそヤクザの二代目、と囁かれていた人とも打ち上げでエフェクターの話で盛り上がったりした。良い思い出だ)そのほとんどは優しい方ばかりだと知ったし、本当にイカガワシイ場所っていうのは少ない(イカガワシクない、とは言えない。そりゃあちょびっとはそういうのもあったりしたよ)んだと知った。
だけども先日の鶴舞DAYTRIP、名古屋が誇るブッ飛びイベンター(褒めてます)わかめさん=龍宮ナイトpresents「汗祭り」は、僕が恐れ慄いていた「あの」ライブハウスから感じる「非日常な気配」と紛れもなく出所が同じな「尋常じゃなさ」を感じた日となったのであった。
あの出演陣で飲み放題だもん、そりゃあそうなるよ。そうならない方がおかしいよ。
気を失ったように酔い潰れた男女、どこか人の欲望が滲んだ空気、汗臭さとゲロの匂い、ステージから発散される狂気(この言葉は使い古されて安くなった、だけどあそこには紛れもないこれがあった)、遊びを突き詰めた遊び、享楽、兎に角人が休日の夜に堪能したい感情ありったけ、それらが全部あった。
少し前までは普通に入れたトイレも誰かが潰れてしまって入れない、または何故か入口に誰かの衣類が引っ掛けてある。
汗とアルコールにまみれたまま潰れた女の子は何だかそれだけで物凄くエロいし、いやもうなんか、こういう場所だと思ってたよなライブハウスって、と思った。

勿論そこには「ヤバい」(これまた安い言葉だ、我ながら語彙がなくて嫌になる)ライブの瞬間も沢山あった。
ジョニー大蔵大臣(from水中、それは苦しい)、THE VOTTONESクリトリック・リスバイセーシDGTPLimit Less Shitpan-parole。どうだい、この日の出演者の名前を列挙するだけでどんなイベントになろうか想像出来ようというものじゃあないか。貴方がもしこの日、現場におられなかったのならばこの出演陣を目にして想像するイベントの雰囲気、それを3倍くらい濃くして汗とゲロと、人体に吸収されてから発散されるアルコールの匂いをミックスすると良い。どうだ、最高じゃあないか。
この日は出演者+有志参加者の中で一番汗をかいた人が金一封。演奏後にステージ上でコップに向かって汗を絞る出演者。
これまた最高じゃないか。

我々パイプカツトマミヰズのドラマー駒田和希は知る人ぞ知る汗っかきである。夏場のスタジオには「スタジオまで来るための一枚」「練習のための一枚」「帰りのための一枚」Tシャツを持参するし、ライブの時も「会場入りするための一枚」「リハーサルのための一枚」「リハ後の一枚」「本番の一枚」と大量のTシャツを持参する。
本人も「汗っかきで困ります」みたいな事をよく言っていたし僕も「おいおいまたTシャツの色変わってるぜ!」とからかうくらいのもんだったのだけれども、遂にその体質が武器となる時が来た!
この日の駒田君はTシャツの上にフリースを着、その上にジャージを羽織って登場。本番前もよく水を摂り、汗を出しやすくしていた。何故かって?

レ   コ   ー   デ   ィ   ン   グ   が   控   え   て   る   ん   だ   よ   !

レコーディング費用捻出のため、バンドのために命を賭ける事になった駒田君。
頑張れ駒田君、負けるな駒田君!
...結果、二位。
だが他のどの参加者よりも駒田君の汗が一番透き通っていた。
うん、気持ち悪い企画だと思うよ。実際、男の汗ばっかり透明のコップに入って並んでいるところを想像してみ給え、酷い気持ちになるから。現物はもっと酷いぞ。

ライブは面白かったし、駒田君は新しいダイエット方法を見出した。
バンドの課題も幾つか出てきた事だし、良い経験をした。阿鼻叫喚の地獄絵図(褒めてる)の中で得たものはあまりにも多かった。

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DGTP演奏終了後、ギターの破片によって描かれた「汗」の文字と駒田君。

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