犬丸ラーメン、解散しました。

2012年8月3日、大丸ラーメンコピーバンド「犬丸ラーメン」、解散しました。
2010年より2年という短い年月でありながら、それでも周囲の皆様のお陰でコピーバンドとしては十二分過ぎる密度の活動を重ねる事が出来た我々の最期は大丸ラーメンから程近い、愛すべき今池のライブハウスである今池HUCK FINNでのワンマンライブでした。

大丸ラーメンが閉店する、という情報がtwitterを中心に出回り、大丸ラーメンがテナントとして居を構える(株)岐阜正総合ビルディングの代表取締役の署名入りの「入居者への告知」が画像添付されている事でそれまで何度も囁かれては否定されてきた「大丸閉店」が現実にものとなり、私達犬丸ラーメンはすぐに解散を決めました。
元々は2010年に行われた野外フェスに出店、正直に言ってしまえば面白半分、衝動的に結成して活動を開始した我々ですが、その活動の初期から「深夜時間帯でなかなか行く事の出来ない客層に大丸の素晴らしさを知って貰おう」という啓蒙の精神ではないですが、大丸ありきという精神性だけは活動の根幹にありました(大丸ラーメンに迷惑をかけないよう、今池で材料を調達しながらもスーパーに予約を入れる事で在庫の枯渇を防ぎ、本家開店後の専らの買い出し先である100円ローソンで犬丸ラーメンの食材を買わないようにしていた調理担当 石黒の行動がそれを象徴していると思います)。

なのでコピー元である大丸ラーメンがその長い歴史に幕を下ろそうとしている中、所詮コピーバンドである我々がのうのうと活動を続けるのは違う。活動意義というか「如何に大丸ラーメンに近付くか」というコピーバンドをコピーバンドたらしめるその大元、お手本がなくなった後に活動を続けるのは違和感しかないというのは私も石黒も思いを同じにした部分でありました。
「大丸がなくなる後だからこそ犬丸を」「お店を継げばいいじゃあないか」という一介のコピーバンドに対しては暖か過ぎる程の声を頂戴した事もありましたが、上記のような理由でアティチュードの大半が失われたまま活動を継続するのはバンドとして困難であるし、何よりコピーバンドとして大丸ラーメンへの裏切りのような気持ちにもなってしまうので解散を決めた次第であります。

大丸ラーメンの閉店がどうやら現実のものである、いつかは必ずやって来るであろうけれどもまだまだずっと先であると思い込んでいたその日がどうやら今年の夏にはやって来るとわかって数ヶ月、お恥ずかしながら私は大丸ラーメンへ足を運べなくなりました。

人並みではありますが大橋隆雄店長とコミュニケーションをとるようになっておりましたので閉店について触れない、というヴィジョンも湧かず、ではどんな顔をして大橋店長に会えばいいのか、そして何より自分の中で「大丸閉店」という現実を受け入れ難く、私の足は大丸の前まで向かうも入店出来ない事が続きました。愚かである、と思います。

私があの時すべきだった事というのはいつものようにあの扉をくぐって黙って座り、丼一杯の大橋店長の愛情を咀嚼して飲み下すというそれだけの事だったというのに。

大丸に通うようになって数年の若輩ではありますが、一大丸ファンとして大丸ラーメン、大橋店長への唯一の不貞行為だったと悔いるばかりです。

そんなある日、今池HUCK FINNから「犬丸ラーメンのワンマンライブを行わないか」というお話を頂きました。大丸の閉店に対して今池HUCK FINNとして何かやりたい、その思いをイベントにするのでその中で犬丸ラーメンの最初で最後のワンマンライブを行ってくれないか、というこの上ない有難いお誘いでした。
程なく一連のプロジェクトはさよなら大丸プロジェクト「今池午前二時」という名を冠し、犬丸ラーメンワンマンライブも行う事が確定しました。この段階でスタッフの中で誰一人として実食した事のない大丸ラーメンコピーバンドにワンマンライブを任せる、というのはライブハウスとして本当に「賭け」だったのではないかと思います。私達の大丸ラーメンへの愛情を信用してオファーして頂けた事を本当に、心の底から感謝しております。

本当に、有難うございました。今池HUCK FINNのお陰で、今回我々はコピーバンドとしては十分過ぎる程の規模のワンマンライブを行う事が出来ましたし、何より大丸を愛する多くの方(50名近い方々に当日はお越し頂きました)に喜んで頂く事が出来たと思っております。

今回サポートメンバーとして積極的にアイディアを出してくれ、助力を惜しむ事なく協力してくれたえんげきユニット「孤独部」主催、樫山重光君のお陰で彼の旧知である劇団から多くの方を驚かせたであろうあの「店内カウンター」へと姿を変える階段、そして壁やカウンターの一部として使った資材をお借りする事が出来ました。また、彼の熱意と情熱は何より私達の原動力ともなりました。今回のワンマンライブは今池HUCK FINNと、そして彼がいなければあそこまでの規模では行えなかったと思っています。本当に有難う。

同時に今まで私達の活動をサポートしてくれた沢山のサポートメンバーにも改めて感謝を。

果たして8月2日の正午頃より犬丸ラーメンワンマンライブの準備は行われました。
前述したように劇団の資材をお借りして、ライブハウスをライブハウスたらしめる要素の一つであろう防音扉が外された今池HUCK FINNへとそれらを運び込み、HUCK FINNスタッフと我々一丸となって店内の再現へ努めました。

続・我が逃走

黒崎店長と必要な追加資材の買い出しに向かい(バンドマンとしても大丸ファンとしても大先輩の黒崎店長と二人で過ごしたあの時間は何て事はないかもしれませんがかけがえのないものでした)、HUCK FINNに戻った頃には資材は「カウンター」への変化の片鱗を見せていました。カウンターの骨組を見て、どうやら今回のワンマンライブは私の想定以上の規模になる、と確信しました。きっとあの場にいた誰しもが胸の高鳴りを抑えきれなかったに違いありません。

作業は続きます。

今池ハードコアをはじめとする大丸ファンの先輩の皆様にも資料面は勿論、気持ちの上でもお力をお借りしました。この場をお借りして改めて謝意を。背筋が伸びる思いでした、本当に有難うございます。

多くの人の力と情熱、大丸への愛情を一点に注ぎ込んだ結果、数時間後、今池HUCK FINNの店内には「大丸ラーメン」がありました。

続・我が逃走

続・我が逃走

上記画像には映っていませんが、壁に貼られたパスも「再現」しました。
ここでも我々は多くの方に力をお借りしました。twitterやこのブログを通じて呼び掛けた結果、少なくない人数のバンドマン、ライブハウス関係者が自身のバンドの思い出や意思の詰まったパスを郵送、或いは手渡しで提供して下さったのです。

中には今回の件で初めてご挨拶させて頂いた先輩もいらっしゃいます。郵送して下さったパスの中に、思わず涙腺が開くような、やる気と情熱を滾らせてくれるようなそんな素敵な手紙を同封して下さった方々もいらっしゃいました。

犬丸ラーメン第一回からその大丸ラーメンへの愛情を如何なく発揮していたあのバンドも「青色のパス」を提供してくれました。

2日の準備中に「何か手伝う事はありますか」と大量のパスを携えて今池HUCK FINNを訪れてくれた友人もいました。

ワンマン当日「おじさん、パス貼っていい?」と大丸ラーメンで見受ける「あのやりとり」を再現して下さった方もいらっしゃいました。

そんな方々の情熱を壁一面に貼るのは大丸ラーメンの店内再現の、精神面での最後の仕上げだったと言って良いでしょう。
こうして、本当に多くの方の手によってご来店頂いた多くの方が驚愕した「あの店内」は出来上がったのです。

調理担当 石黒の気迫も並々ならぬものがありました。

彼は今まで何度も何度も大丸ラーメンの「あの味」に近付くべく試行錯誤を繰り返してきましたし、その姿には彼の意気込みやプライド、それ以上に大丸ラーメンに対する愛情が見え隠れしていました。
最後の最後まで陰に徹し続けた彼の本気はご来店下さった皆様が口にされた丼の一杯一杯の中に溢れていたと思います。

毎回ビルドアップを繰り返し、遂に彼が完成させた「犬丸ラーメン」。

本家大丸ラーメンのレシピも門外不出というわけではないのでしょうが、飲食店勤務経験者でありバンドマンである一人の男が本気を出して練り上げてきた「大丸への愛情に溢れた一杯」。

調理担当 石黒の意向も受けて大丸ラーメン閉店後にレシピを公開したいと思っております。

そして石黒には2年間にまたがって毎回毎回その作業のほとんどを任せてしまった事を謝罪、そしてそれ以上に感謝しています。二人(+サポートメンバー)で大丸ラーメンのコピーバンドである以上、そこには明確な役割分担がありましたが彼の気迫があったからこそ、私は営業中は自分のパフォーマンスに徹する事が出来たのだと思っています。
犬丸ラーメン最高の「影の存在」、石黒真に大きな拍手を!

そしてご来店頂いた皆様、本当に有難うございました。

皆様がいらっしゃる事で犬丸ラーメンワンマンライブは完成しました。今池HUCK FINNに出来上がった長蛇の列、そして恐らくは皆様が普段大丸ラーメンでしているであろう会話や振る舞い、大丸ラーメンへの愛情に満ちたそれらの一つ一つがあの空間を作り上げたのです。皆様なくして、私達の大丸ラーメンコピーは完成しなかったと自信と確信を持って断言出来ます。
「お客さん」としての役割を楽しんで、そして全力を尽くして下さって本当に有難うございました。
尚、皆さんと作り上げた今回のワンマンライブの模様は定点カメラ及び数台のカメラにて映像で記録されています。記録映像についてはまた改めてここでお知らせしたいと思っております。

最後に改めて。

結成より解散まで関わって下さった多くの皆さん、共に活動してきた石黒真君。今池HUCK FINN。

そして50年間もの間、ほとんど休まず深夜の今池でラーメンを作り続けてきた大橋隆雄店長。貴方のお陰で僕は自分の生涯に置いて忘れる事の出来ない貴重な経験をする事が出来ました。この経験はきっと今後の人生、バンド活動にも活かしていきたいと思っていますし、何より貴方には一つの事を信念を持ってやりきるという事の大切さをその姿勢で教えて頂きました。2年間の活動でここまで胸にきているのに、50年間やって来られた貴方の胸中は計り知れません。心の底から尊敬します。大橋店長、貴方のような大人に僕はなりたいです。貴方こそ今回の全ての称賛をその身に浴びるのに相応しい、というか本質的にはそうあるべきだったと思っています。本当に有難うございました。残り僅かの営業期間ではありますが、どうかお体を壊さず、閉店のその日まで。

大丸ラーメンコピーバンド「犬丸ラーメン」、無事に解散しました。

短い間ではありましたが、有難うございました。

大丸ラーメンコピーバンド
「犬丸ラーメン」
パフォーマンス担当:舟橋孝裕

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コメント

  1. シラカミ より:

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    この記事を拝見し、舟橋さんがとてつもなく優しく、情熱を持った方だと感じました。

    今回のイベントにも大丸にも行ったことが無い自分がコメントを書くのは躊躇われましたが、この記事から大袈裟ではなく「情熱」を分けていただいたお礼が伝えたくて記させていただきました。

    大丸の店主様、舟橋さん、そして舟橋さんの周りにいる素敵な方々の今後のご多幸を心より願っています。

  2. 舟橋孝裕 より:

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    コメント有難うございます、嬉しいです。

    大丸ラーメンは僕のバンド活動、僕の人生になくてはならない存在でした。大丸ラーメンの話、大橋大将の話で盛り上がり、初対面の方とも気がつけばキャリアや音楽性を超えて打ち解けている。そんな経験を何度もしてきましたし打ち上げ後、夜が深まっていく今池で大丸ラーメンの行列に並びながら親睦を深め、その後の交友関係に弾みをつけた友人が何人もいました。
    閉店は本当に残念ですが、そんなお店があったお陰で今回僕は情熱を燃やす機会に恵まれましたし、この日の事は一生忘れられないでしょう。本当にやって良かったと思っています。

    直接お会いした事があるのかないのか、どちらにしてもシラカミさんともこうして大丸ラーメンをきっかけにやりとりをする事が出来てやはり大丸に僕は感謝せざるを得ません。

    暖かいお言葉、本当に有難うございます。今後もそうと決めた事には情熱を燃やし尽くしながら頑張っていきたいと思います。