娘の保育園の卒園式の夜、白線の内側でスタジオ入り。
目前に控えたライブに向けて練習、そして作りかけの新曲を煮詰める作業を行った。
白線の内側での演奏に於いては最近、指弾きを主な奏法としている。
エレクトリック・ベースギターという楽器を弾くようになってもう20年以上経つけれどもお恥ずかしい話だし自慢気に書く事でもないけれども指弾きはピック弾きの1/3程度の技量しか持ち合わせていない自負がある。
これは主観でもそうだし以前レコーディングの時にもその時のエンジニア氏に「舟橋君、君、ピック弾きの方が圧倒的にリズムとか良いでェ!」と言われたので客観でもそうなのだろうと思う。弾いててなめらかに表現出来ているな、と思うのもピック弾き。
自分のしたい演奏が出来ているなと思うのもピック弾きだったりする。
では何故敢えて指弾きなのか、というとそりゃあ指弾きでしか出ない風合いがあるからである。
自分の指を直接使って、間に何も挟まずに直接弦を振動させるという行為は非常に直感的な行為だなと感じる、2025年3月現在。
故に「曲の中でリズムを生み出すために狙ったところで発音し、音を止める」事だけがベースの役割ではない白線の内側では、曖昧模糊とした表現や音楽的に抽象的な表現を良しとする白線の内側に於いては、指弾きは1つの表現として成立し得るのではないかと思っているところである。
実際にアンサンブルの中で指弾きを試してみたところメンバーからの反応も良かったので内心(へったくそなんだけどなァ)と思いながらも指弾きを続けてみると面白い事に少しでも拙い部分から離れようと、自然と指弾きの形式みたいなものが出来上がってきたのであった。
ベースギターを指弾きする時、ほとんどの演奏家が人差し指と中指の所謂『ツーフィンガー』で演奏するであろう。
2本の指の長さ等によって生じる弦に対して指が当たる角度の差異によって、音のムラが出たり根本的に人差し指と中指が流麗に可動しない事によって演奏の拙さが生じていたのだけれども、これを一息に解決するのが人差し指で弾く『ワンフィンガー』であった。そう、気がつけば僕は人差し指1本で弦を弾いていた。演奏に興奮したり、思いっきりいきたい時は2本の指で一斉に弦を弾いたりも、した。
『ワンフィンガー』だなんて、とも思ったけれどもそういえばゲディ・リー先生はワンフィンガーだったよなと思い出し、いやいやプログレ界の伝説的な名手と自分を同列に語るだなんてどれだけおこがましいんだと思いつつ、先生がそれを良しとしているのであれば僕もそれを研究する事くらいは志しても良いのではないかと思った次第だ。
で、やってみると楽しいんだねえ指弾き。
出音に関しちゃぶっちゃけピック弾きとそんなに差はないと思っているのだけれども、音の出る思考の経路が違うというか何というか。これまで使っていた部分とは違う頭と体を使って音楽を演奏している様である。
面白いからもう少し続けてみようかなと思っている。
そして白線の内側の新曲が出来上がった。今後ヴァージョンがどんどん変わっていくかもしれないけれども、各メンバーのやりたい事が有機的に、しかし良い意味でいびつに組み上がった結果、割と陰惨な、しかし美しいアンサンブルが出来上がったんじゃないかと思っている。