舟橋の「気になる」シリーズとコンプレックス、その騒動について

気質として、何かを常に「気にして」いる。
「気にする」というのは不安で仕方がないとかそういう事ではなく「頭の中がそれで一杯になり、自分の行動や思考さえも支配される」という事である。
「気にする」対象は様々だ。
ポジティヴな事だと『新しい歪みエフェクター』とか『気になるファズ』だったりはたまた『新発売の模型』であったりする。これらが「気になる」とそれについてネットで調べたり手に入れた暁にはあーでもないこーでもない、と頭の中で楽しい想像が始まっていてもたってもいられなくなってくる。
一方ネガティヴな「気になる」は『ベースを吊り下げるストラップの長さ』や『メインベースの弦高』だったり場合によっては『自分の年収』だったりする。『ストラップの長さ』は暫定これ、と丁度良いところに落ち着いた弦高も今は「高めが良いですナ」と気になる事も随分と減った。『メインベースとサブベースのネックの状態』も気になって仕方がないが、最近は気にならない。
このネガティヴな「気になる」は厄介な事にある程度定期的に循環しており、これが気にならなくなると次はこれが気になる、という具合に「気になる」対象が移り変わって常に頭の中で何かに向き合い続けている状態なのである。
妻もこんな僕の状態には慣れっこで「ねぇねぇこのベースの高さ(=ストラップの長さ)っておかしくないかな」という僕からの主観でしか判断出来ないにも関わらず客観性を求めるような質問にも毎回「おかしくないと思うよ」とか「長過ぎだよ」とか、きちんと応えてくれるのであった。何て人格者!

さて、コンプレックスといっても差し障りないであろう身体的特徴が僕にはある。
僕の後頭部にあるつむじは絶壁かつ髪の毛の生え方的に目立ちやすく「お前のつむじ、ハゲてんぞ」と高校時代に何の気なしに学友に揶揄されて以来、ハゲていやしないか、人からどのように見えているのか気になって仕方がないのであった。
ハゲていないか定期的に観測するも加齢による髪質の変化こそあれど、加齢に伴う変化以上の速度で深刻化する事もなく、僕の不安をよそにつむじ周辺は以降の当初から変化らしい変化もせずに(全体的に髪の毛が細くなったなと思う事もあるし白髪が増えたなとかそういうのは勿論、ある)きている。
定期的に「気になって」しまいはするが、合わせ鏡で自ら確認したり、客観性を伴う確認として妻に「ねえつむじの辺り、ハゲてきてたりしない?」と確認しては「まあこんなもんか」で済んでしまうという流れを繰り返しつつ今日に至るのであった。
しかしながら実はここ最近その「気になる」の一大ビッグウェーヴが到来したのだった。

ハゲていやしないか合わせ鏡で確認するも「以前よりハゲているんじゃないか」と一瞬でも思うが最後、蛍光灯の真下で様々な角度でつむじ周辺を確認し「薄くなった気がする!」と騒ぎ立て、妻より「いや変わってないよ」といくら言われようが「もう終わりだ、治療するしかないのか!」とネットであれこれ調べては余計不安になる始末。
遂に妻に「そんなに心配なら病院に行ってみてはどうか」と言われてしまった。
病院、か。成程、そういえば自宅付近のクリニックが泌尿器科兼皮膚科で、ホームページによるとAGA(男性型脱毛症)治療も行っているらしい。最近娘(長女)が診察して頂いた事があるのだが、院長先生も優しくて良い先生でこれからもお世話になりたいと主思ったのであった。
よし、先生に相談してみよう!という事で妻から「行ってみれば」とアドバイスを貰った翌日の仕事終わりに早速駆け込んでみたのであった。

18時30分に夜の診察受付が終了。ギリギリで申し訳なかったのだけれども25分頃に娘(長女、次女)達を伴ってクリニックを訪問、受付をした。妻が程なくして仕事を終えて帰宅予定だったので、診察までには娘(長女、次女)達を妻に託して単身、診察室へ入る予定であった。
しかし合流した妻から「私も診察室入るね」と一言。

診察室に入って先生に相談。
「昔からつむじの辺りが髪の毛が薄く、目立つので気になってはいたのですが進行していやしないか気がかりなので、皮膚的にどのような状況か診て頂ければと思いまして。ホームページで先生はAGA治療もしてらっしゃるという事だったので治療した方が良い状況なのかという点も教えて頂ければァ!」と僕。
先生、僕の頭皮を見て「うーん、確かに頭頂部の毛量は少な目ですけれども、治療という観点でいえば僕なら治療しませんね。これは羨ましいくらいなんですけれども、毛根もしっかりしているので舟橋さん、仮に薬を飲んで発毛しても感動する程の効果を実感しづらいと思うんですよね」。
そこで妻が「ですよね。この人気になる気になるって言っても聞かなくって。ほら大丈夫じゃん!」と一言。
妻、後に「どうせ貴方は気になり出すと先生が何て言おうが『でも、でも』って後に不安材料を持ち出すので、私が最初から冷静に診察訊いてようと思ったんだよね」と語った。

僕「先生、じゃあまたいずれ、気になったらその時はまたご相談にのって頂けますか」
先生「勿論です!」

今回の「気になる」に於いて、大きな山を越えた音がした、気がした。
妻には「治療した方が良いと思う程に変化が出てきたらすぐに教えて下さい」とお伝えしつつ定期的に観測を依頼し、面白い事には合わせ鏡で自分の頭皮を観測しても「気になる」最中とそれ以降とでは見え方さえ変わったようである。
如何に主観に囚われているかが理解した、というか実感した。
本件に於いて痛感したのは、僕自身の最大の敵は僕自身であるという事。
「僕は僕だ」と僕は常日頃から思っているのだけれども、そんな自分が自分自身に対して牙を向けると物凄くダメージがデカい。
助けてくれる妻、関係各位に感謝しかない。


病院後、皆で近所のイオンモールのフードコートにて外食。
娘(次女)が遂にアンパンマンのジュースデビュー。
娘(長女)の時も激烈にお世話になったアンパンマンのジュース、値段も大幅に上がっている。
物価高も、敵だなあ。