食事中には読まないで下さい。

僕は心配性だ。鍵を閉め忘れたんじゃないか、重大な忘れ物をしたんじゃないか、さっきはちょっと言い過ぎたんじゃないか、等あらゆる事が気になる。

そんな僕が一番神経質になるのは自分の体の事である。

職場で大便をした。ほぼ毎日のように繰り返している(僕は生まれてこの方、便秘になった事がない。むしろ下痢しやすい体質である)この行為だが、今日は昨日までのそれと決定的に違った。それは恐らく人によっては気にもしない事であったろう。事実、身の回りの友人達はその頑健なる精神を以ってその事実を笑い飛ばし、日々を送っている。その24時間区切りの毎日からすれば瑣末な事柄が、今日一日僕を悩ませたのだ。

それは何か。
排泄をし、何気なく便器の中を覗き込んでギョッとした。血が、浮かんでいるのである。真っ赤な鮮血が、和式便器の中を漂っている。大量ではないけれども、それははっきりと血液だと認識出来た。
尻を拭いて更に面食らう。トイレットペーパーは、赤く染まっていた。自分の尻の穴を拭いたトイレットペーパーを手に、しばらく立ち尽くした。
切れ痔気味の僕は毎回、多かれ少なかれトイレットペーパーに血液を遺している。しかし今日のそれは今までと桁が違った。

トイレから出、自分は病気ではないかと陰欝な気持ちになった。僕は死が怖い。身近な人の死が、そして自分が死ぬという事が受け入れ難い。血液というのは見るものにとって生きている証であり、そして同時に人はいずれ死ぬという事実を思い知らせるに十分なインパクトを有する。
自分の体の異変に思い悩みつつ、上司に相談すると「それは切れてるね。だけどめも然るべき治療を受ければあっという間に良くなるよ」との事。

そして近隣で有名な病院を教えてくれた。その、何だ、肛門周りのケアで有名な病院だ。

5時間後に僕はそこにいるだろう。
果たして…!

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