初めての本格的な廃墟探訪、それを阻んだのは心霊現象でも恐怖心でも、ヤクザ者でも国家権力でもなく警備会社だった。
廃墟といえども誰かの管理下に置かれているのだ。センサーが設置され、反応してしまえば数分で警備会社の人間がやってくる。その現実は僕達の興を削ぐ事となった。
一旦火がついた冒険心(そう、あれは紛れもなく冒険心だった)はそう簡単に静まりはしない。皆、基本的に男の子なのだ。近場の古虎渓に有名な心霊スポットがあるという話を知っていた僕は、半ば拒否されるのを予感しながら「古虎渓にある心霊スポットに行ってみないか」と提案してみた。
心霊現象よりかはそこを管理しているという噂のヤクザ者への恐怖の方が強大であり、それが我々の足取りに若干「待った」をかけてはいた。
だが諸君、廃墟探訪という本懐を遂げられなかった我々は迷う事なく古虎渓へ向かったのだ。街頭すら薄暗い山道を川沿いに走ると、ものの5分もしないうちに古虎渓へと到着した。10年程前に目的地を訪れた事があるというアツシ・ハセガワの証言を元にさらに車を走らせる。
・・・着いた。
赤色の照明に照らし出された通称「古虎渓ハウス」はかつて発生した火事によって怪我人が出たであるとか、自殺者が出たであるとか様々な逸話が伝えられている。その類に詳しいサイトで調べたのだがそれらでも結構な評判であった。これはこれで紛れもなく廃墟である。若干そこに伴う噂が穏やかでないだけだ。
外観を眺める事数分、すぐ脇の藪の中から発見された古虎渓ハウスへの入り口。
しばしの逡巡の後、我々は古虎渓ハウスへと足を踏み入れたのであった。
続く
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