先程の記事を更新した後にウトウト眠ってみた夢はそれはそれはテラーなものだった。
古めかしい雰囲気の漂う洋館が舞台の全くのホラー。亡き娘の亡霊がそこに集う人間を恐怖に叩き落とす悪夢。悲しいかなその娘は悪意はないのだ。ただ自分が死んでしまった事に対する無自覚と、悲しみや憤りが彼女をつき動かす。そこに集った人間達の極めて人間らしい過失やそれに伴う後ろめたさが悲劇をさらに強調する。そんな夢の中で僕は半ば狂気に陥りかけた当主の役どころを演じたってわけである。
恐ろしい夢ではあったがどこか映画的な(事実それは非常に前時代的なホラー映画の舞台設定であったわけだし)夢で、僕は妹に乗り移る事で具体的な恐怖を提示せしめた長女の悪霊を前にしてもあまり恐怖は感じなかった。更に言ってしまえば、亡霊が肉体を手にする事で可能となった具体的な暴力(すなわち両の手で僕の首をしめる事)を行使する瞬間も“ああ、これで僕が演じる当主は退場というわけだ”といった感想しか持たなかったのである。
ひどく映画的で、そして極めて直接的。どこか「体験するお化け屋敷」的な感覚の夢であった。
恐ろしさという観点で語るのであれば以前みた悪夢(そうそれはまさしく悪夢だった)の方が余程インパクトがあり、僕は夢であるという感覚もないまま恐怖したのだが。その夢というのはストーリー性もへったくれもない、断片的で断続的な光景がただ繰り広げられるだけのものだったのだけれど、その夢はそれが故に恐ろしかった。忘れ難いのは繰り返し提示されたある光景。それは砂嵐が吹き荒ぶ荒野を外套を身にまとった旅人が行く光景。薄汚れて擦り切れたボロ布をまとったその旅人の顔は干からび、目があったであろう場所はただ暗い穴が空くのみで、鼻はミイラの如く低く、大きく開かれた口の中には小さな歯が意外にも並びよく生えていた。その亡霊のような姿をした旅人はどこまでもただ行くのだ。放浪する事が、そしてその姿形で僕に恐怖を与える事のみが目的であるかのように。
繰り返し繰り返し彼はその夜の夢の中に登場し、呪術的な恐怖感を与えた。得体の知れない不気味さの境地を垣間見た心持ちだ。目覚めた僕は全身にひどい汗をかいており、夢の中のミイラのような旅人の姿を眺め続けたからか定かではないが、喉はカラカラに乾いていた。
およそあれほどインパクトのある悪夢はあれ以来みていない。人のみた夢の話を延々と語られる事ほどリアクションに困る事はないとは思うのだが、本件で僕が何を言いたかったかというと、僕の恐怖のイメージである。
それは、居心地の悪さと抜け出れないのではないかという恐怖感を伴っていたのである。
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