昨夜観た「ドッグヴィル」の余韻がまだ消えない。一生忘れられない映画になるだろう。ニコール・キッドマンにも一発で惚れた。
あの映画の舞台表現は、僕のやっているようなバンドには大いに参考になるだろう。
しっかりとした脚本に表情とパントマイムだけで空間を作り出せる役者、そして適切かつ空気をぶつ切りにしないナレーションがあればあれだけの事がやれるのだ。
映画を観て時間を過ごす夜を連続二夜経験して、かつて自分が映画に携わる職業を志望していた事を思い出した。高校3年生、誰しもが進路について悩む時期に僕は突発的に日本映画専門学校に自分の欲求実現への活路を見出だしたのだ。
しかしてそれは映画に携わりたい、より刺激的な人生を送りたいという漠然とした欲求だけであり、スピルバーグのようにカメラ越しに友人を撮影する事で自らのクリエイティビティを高めたり、映画をそういう観点から沢山観るといういわばそれを現実のものにするための下準備すらしないままの発想に過ぎなかった。
当時の僕にとって映画は映画に過ぎず、自分が映画に関係する仕事に就くというのは好きから直結した憧れであり同時に突発的な衝動であった。
担任教師、両親から説得を受けた。彼らは恐らく理解していたのだろう。僕の提案したその進路が“自分なら何か創り出せる”だとか“仕事を映画に決めてしまう”という確たる信念、覚悟もなしの一案であり、受験期の若者にたまに起こる衝動、いわば一過性の熱のようなものに過ぎず、嵐が過ぎ去るようにその瞬間を凌げばいずれは他の活動に目移りするだろう、と。
彼らの「大学卒業後にまだ映画がやりたかったら、その時は専門学校に行けば良い」という言葉に納得し、僕は進学の道を選んだ。
今はそれで良かったと思っている。
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