原作を読んで観たいと思っていた「容疑者Xの献身」を観てきた。
まず、映画としての起承転結をつけるための描き方の違いはあれど、大筋を変える事なく映画化してくれた製作スタッフに拍手。よく映像化の際に原作ファンを驚かせるための更なるどんでん返し、みたいなのが加えられる事があるがほとんどが改悪で終わってしまう中、ドラマで描いてきた登場人物のキャラクター性を原作を損なわない程度に描く程度で抑えたのは本当に良かったと思う。
本エントリー投稿者はTVドラマ「ガリレオ」をほとんど視聴していない。柴咲コウ演じる内海薫刑事と福山雅治演じるガリレオ先生のコンビに対した感情移入もしないまま観てしまったわけなのだが、このコンビの関係性を崩す事なく原作の主題も描いた良い脚本だったのではないだろうか。
何よりこの映画、タイトルからして「ガリレオ」の名を冠せず「容疑者Xの献身」である。その名が意味する通り堤真一の映画であった。
原作を読んだ段階ではイメージしずらかった石神像。そりゃあそうだ。二枚目俳優堤真一では不器量な『ダルマの石神』は想像できない。
だが蓋を開けてみれば氏の演技力で新しい石神像が表現されていた。元々の快活なイメージを殺し、不器用で冴えない石神を氏は表現しきっていた。あのような男ならば、と思わせてしまう演技力。
あの石神像の前では福山雅治の湯川学の快活さも石神の冴えなさを引き立てているようにしか思えなかった次第である。
唯一の心配だったミスキャストが杞憂だったと証明された冒頭が終わった後は、終演まで一気に楽しんでしまった。
実に良い映画だった。
一体どれだけ多くの人があの映画の堤真一に感情移入し、涙を流すのだろう。
僕はといえばしばらくは余韻が冷めやしなかった。
コメント