最近の僕ときたら、YAMAHAのMBに夢中である。
只でさえ熱烈なYAMAHA信者、YAMAHA党である上に(仕事で出会ったYAMAHA社の方に「僕は世界で一番YAMAHAの楽器を信頼しています」とぶちあげた程だ。更には子供の名前は「やまは」にしようと夢想している)随分と昔の楽器である点、にも関わらずネックの状態が極めて良好である点、ボディが小さくて軽く、取り回しに優れている点等魅力が多過ぎるのだ。出力される音も悪くない。ロングスケールのベースでは重低音と攻撃的な高域を意識していた僕にとっては、このベースの特徴的な中域は大変興味深いし、アンサンブルの屋台骨としてのベースを意識しつつある最近の嗜好ではこれぐらいの音の方がバキバキいわせ過ぎずに(それでもピッキングとサンズアンプで相応に、いや、人並み以上にはトレブリーかもしれないのだが)済む。リハビリテーションにはうってつけときたもんだ。
以上のようにMBに夢中でJONNYのライブはこのベースでいこうと決心したのだが、若干の不満があった。4弦の鳴りが不調で音にハリがなく、結果的に他弦とのバランスがとても悪い。音の芯が感じずらい。
ミディアムスケールだから仕方ないのかと思っていたが、あまりにもあんまりなのでこれは本体のセッティングに問題があるのではないかという結論に行き着いた。
右手のタッチに違和感がある4弦、これはテンションの問題だろうと普段使っている弦よりテンションきつめのアーニーボールの弦に張り替えてみた。ううむ、いまいち改善されぬ。
テンションピンをヘッドに打ち込んでみた所、若干改善されたものの施術された部位を眺めているとどうにも張力にテンションピンが負けそうだ。ふとした弾みにネジごとパーツが吹っ飛んでいく様が容易に想像出来た。いつ爆発するかもわからない爆弾を搭載したベースをライブで酷使するのは成る程、確かに面白いかもしれないが気が気ではない。
やはり弦の問題か。試しにロングスケール弦から、ミディアムスケール用の弦に張り替えてみる事にした。ロングスケール用故に本来ならそれを想定されていない太い部位がペグのポストへ巻き付けられる事による不具合。その可能性は十分に考えられたし、様々な可能性の中でこれが些細ながらも一番大きな問題点のように思われた。
張り替えてテンションピンを抜き、弦を外す。さらばアーニー。君のテンションの強さは実に、実に魅力的であった。しかして君はロングスケール用なのだ。切られてしまった君はロングスケールのベースへ張り替える事すら叶わぬ。涙を飲んでさようなら。
さてダダリオのミディアムスケール用弦だ。
…成る程、確かにこれはミディアムスケール用だ。4弦ポストにしっかりと弦が巻き付いている。これは期待出来そうだ。
改造を依頼してきた方(実はバイト先の上司である)の忠告によりネックに仕込み角をつける事に。ネックを外し、ネックポケットにシムと呼ばれる今回の場合は厚紙を一枚入れる。ネックをはめてネジを締めていく。締め方もヘッド側を強く締め上げた後に、ボディエンド側をそれより僅かに弱く締める。ネックは4本のボルトによりしっかりと確実に固定された。
些細な施術に思われるかもしれないが侮るなかれ、これが劇的な効果を及ぼす事も少なくないのだ。
弦を張ってみる。調整し直されたMBには劇的な変化が生じていた。問題点が全て解決され、以前よりアタックがしっかりと出るようになった。4弦と他弦のバランスも問題なし。実戦でブリブリ弾くのに何のストレスもなさそうだ。
こうして2時間にわたる長い戦いは終わった。後に残ったのは完全に楽器として機能しだしたMBと、そのヘッドに遺ったネジ穴の痕だけである。
そのネジ穴は僕にこう語り掛けてくる。
すなわち、楽器はその性能を最大限に引き出すセッティングをしてからでないと評価出来ないものと知れ。
僕とMBの冒険は始まったばかりだ。
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