『時計じかけのオレンジ』でのグロテスクなパロディにて先に知った『雨に唄えば』を視聴。
こういう名作/大作はなかなか手が伸びないのだけれども、いやいや本当に勿体無い事をしていた!何故もっと早くこの映画を観なかったのか!僕この映画もう手放しで絶賛するよ!
サイレント映画全盛の時代、俳優ドンと大女優リナ・ラモントはドル箱の映画スターであり、大スター同士のカップルともてはやされていた。しかし実際は、リナが一方的にドンに惚れているだけであった。そんな中、ドンは駆け出しの女優キャシーと恋仲になってしまう。
やがて世界初のトーキー「ジャズ・シンガー」」が大成功をおさめたことにより、ハリウッドにトーキーの波が押し寄せる。
そこで彼らの映画会社では、当時作りかけだったドン&リナのサイレント映画を無理矢理トーキーにすることに決定。しかしながら、トーキーのノウハウを知らなかったことに加え、一番の問題はリナが致命的な悪声の持ち主であったために映画の試写会は散散な結果に終わる。そんな映画を公開したら俳優人生が崩壊してしまうと危機を感じたドンとその親友コズモ、キャシーの三人は映画をミュージカルに作り替えることを思い立つ。あとはリナの声をどうするのかが問題だったのだが…。
開始10分もしないうちに始まるジーン・ケリーとドナルド・オコナーの驚異的なパフォーマンス、タップダンスに夢中にさせられる。自分の技能を追求する事で、常人にしてみれば驚異的な表現を可能にしたものが「芸」ならば彼らは本当の意味で「芸人」であり「役者」なのだろう。この2人が関わるミュージカル・シーンはこの後も続くのだけども、それらの全てが一体どれだけの修練を積めばこんな動きが出来るのか、と無駄なく、そして美しい。
人間の体って、美しいんだな。
ジーン・ケリーの力強いダンスにドナルド・オコナーの軽やかで軽妙なダンスが相まって、スピード感と躍動感溢れるダンス・シーンが続出。コズモの愛すべき三枚目的キャラクターは可笑しいし笑えるが、そのキャラクターを活かしているのは完全にドナルド・オコナーの顔面芸、そしてダンスさばきによる所が大きい。
本作でタップ・ダンス初挑戦というデビー・レイノルズも初々しい魅力一杯で大変チャーミング。
この人とジーン・ヘイゲンの魅力の差異(ヘイゲンはヘイゲンで映画的には敵役のようになってしまったが、キーキー声で演技や歌唱をしなければいけない中で音程を外さない辺り、器用な女優さんなのだろうなあと感じた)が映画の面白さを引き出しているのは言うまでも無い。
そして、映画史上間違いなく語り継がれる名シーン、雨の中ジーン・ケリーが「singin’ in the rain」を唄って踊るシーン、ここのシークエンスは往年のハリウッドの本気を観る事が出来る。映画が夢に満ち溢れたものであり、そこから我々は活力と人生を謳歌する悦びを知る事が出来るのを再確認したよ僕ぁ。
どしゃ降りの雨の中、楽しそうにステップを踏み、唄うジーン・ケリーは大スターの貫禄もさる事ながら、本当に楽しそうなのだ。あの笑顔はハリウッドに刻み込まれた宝だろう。余談だけれども、この長回しのシーンは撮影後にジーン・ケリーが風邪をひいたそうだ。
必見!
完全懲悪気味なエンディングには賛否両論あるだろうけれども、この大作、兎に角もう音楽とダンスの楽しさ、美しさに酔うべきである。ジーン・ケリーらのダンスを見ていれば、文字通り「心躍って」しまうのだから!
改めて映画の面白さを教えてくれた傑作である。
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