今まで何度か改造を試みてきた(悪戦苦闘の改造履歴はこことかここ参照)ムスタング・ベースだが、ようやっと一段落つけられそうである。
前回の改造でリア・ピックアップによる歯切れあるサウンドは実現出来たものの、如何せん元から搭載されているオリジナルのピックアップとミックスして出力した際に、個性が強いオリジナル・ピックアップによって増設したリア・ピックアップの音が活きないというのが心残りであった。
このオリジナル・ピックアップ、相当曲者でモワンとした低域とジャキジャキした超高域しか出ないという代物。これはこれで面白いものだし、ムスタング・ベースのペキペキポコポコな音はこのピックアップに由来するところが大きいのだけれども「ムスタング・ベースを他のベースに遜色ないレベルで実用化する」事を試みている僕からすればこれはもう完全に無用の長物。リア・ピックアップ単体で鳴らせばそれなりの音にはなるものの、どうしても音に厚みというか低音不足感が否めない。どうしたもんかこれと思案し、オリジナル・ピックアップをとっぱらってプレシジョン・ベースに搭載されているピックアップを移植する事を思いついたもののなかなかどうして簡単に踏み切れなかった(これは専ら財政的な問題)。
しかしてその直後に出た関西ツアー初日、神戸にて共演したThe caroline?のベーシスト氏がピックアップをダンカンのクオーターパウンドに換装したムスタング・ベースを弾いているのを観、そしてその音を聴き「これはいけるわい」と確信、名古屋に戻った数日後にムスタング・ベースは再び改造への旅に出たのであった。
リア・ピックアップ増設のため関西に旅立った間もないけれど、実に沖縄までの長旅である。大学時代に所属していたサークルでの夏合宿で長野県に持って行った事も鑑みるとこのベース、東西南北様々な地域を知っている事になる。
で、本日めでたく長旅から帰還したわけだけれども、いやはや見違えたものである。
とりあえずという事で自宅に転がっていたフェンダー ジャパンのプレシジョンに搭載されていたピックアップを使ったのだけれども、やはりというか狙い通りの音になった。具体的にいえばちょっと寂しいプレベ・テイストの音と言えようか。勿論プレベのそれに比類するわけではないけれども、元の音を考えればこのムスタング・ベース、大いに化けたといえよう。
欲していたアタック感や音の厚みは得られたし、邪魔に思っていたペキペキ感はなくなった。ムスタング・ベースのサウンド面での扱いづらさの実に半分以上はあのピックアップが負っていたと再認識した次第。
都合3人の職人の手が加わったサンズアンプをカマしてゴリゴリベキベキ弾くのが楽しみでならない。
今回の改造で、このベースの木部を加工した人間は3人になった。配線等を鑑みると相当多くの人間がこのベースに携わっている事になる。手のかかるベースだと言えば否定出来ないが、このベースは僕がずっと研究していた「自分の出したい音を出すためにベースに求めるソフト面での条件」の限定の過程を体験しているベースであるし(現状わかったのはアクティブベースは×、そしてピックアップは癖があるものより周波数の観点で考えれば比較的普遍的な、全体域を出力出来るものの方が好ましい)、多くの人間がこのベースに関わったという事は同時に感慨深いものでもある。
ところでこのエントリーの冒頭、「改造に一段落」と書いた。
まだ完成ではない。ペグを交換して、そしてゆくゆくはピックアップをクオーターパウンドにしようと思っている。
ムスタング・ベースの最終形態までは、まだ少し時間がかかりそうである。
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