「全ては雪だ。雪が悪い」
篠田尚希(JONNY/Dr.Right)かく語りき。
パイプカットマミヰズ企画『パイプカットマミヰズの奉仕“新春”活動』の当日、起床した僕が目にしたのは一面の雪景色。名古屋では雪が降る事は少なく、ましてや積もるなんていうのは珍しい事である。一年、いや数年に一度は大雪、と呼べる日があるものの(それでも他の地方と比べれば少ないのではないだろうか)、昨日程の雪はここ最近では記憶にない。
いつからだろうか、雪が積もってはしゃがなくなったのは。
アンプヘッド、エフェクター、そしてベースを背負っての地下鉄移動は憂鬱そのものではあったが、「雪だ!雪だ!」と無理やりテンションを上げて家を出た。
会場である新栄CLUB ROCK’N’ROLLにやっとの思いで到着した。既に左手からぶら下げたエフェクトボードには雪が軽くつもっており、靴も雪でぐしゃぐしゃ、コートの付着した雪を念入りにはらってから入店。
この日、誇るべき事は幾つかあれども、まず出演者全員が無事、たった一人の欠員もなく全員会場に集った事(しかも遅刻らしい遅刻もなく、だ!)は特筆すべきだろう。電車も一部運行を停止し、東名高速道路に至っては通行止めになっている程の大雪である。その中、ライブハウスに時間通りに、機材を携え集まった出演者達。
もうこれだけで胸が熱くなる。今回遠方からの(三重県民はいたし、勿論全員が近場ではないけれども)ツアーバンドがいなかったのが幸いした。マイクロタゴスや唇からトカレフズ、数秒にも満たないの皆さんは実は結構シビアな環境の中お越し頂いたのではないか、と推測するのだけれどもそれでも不平不満一ついわずにタイムテーブル通りの進行が実現したのはひとえに出演者全員の誠実さ故。本当に見習いたい。
で、リハーサルを終え「さあてどうすんべ」と半ばライブハウスに引き篭もるのも覚悟していると、動き出した男が居た。そう、Dr.Rightの清水真泰その人である。
「舟橋君、どっか行きましょうYO」
この人、「そうだ京都行こう」ノリで本当に京都に行ってしまう程行動力のある男なのだが、そんな彼の行動力は大雪の前でも屈しはしなかった。
気がつけば彼と、雪達磨を作っていた。
そう、雪達磨を作っていた!
一体何年ぶりだろうか。ざっと思い返しても義務教育を終えてから雪達磨を作った記憶はない。ともすれば世間一般に「児童」とカテゴライズされる時分以降、作ってないんじゃあないか雪達磨。
けれども真泰君が作った小さな雪玉に端を発し、気がつけばロックンロール前でその頃には結構な大きさになった雪玉を転がしていた。雪達磨を作って入り口脇に置けば、この大雪、そして積雪にもめげていないという気概の顕れともなろう。きっとお客さんも喜んでくれるはずだ!
スイッチが入ると、僕は強い。手袋がぐしゃぐしゃになるのも構わず一心不乱に雪玉を転がしていた。
で、出来た。
「雪達磨とて、雪に降られたら寒かろうて」
バージョンアップさせた。
ああ、満足。
ロックンロール前の雪かきを出演者が入れ替わり立ち代り手伝って、開場。こんな日だ、きっと誰しも家から出ないんじゃないだろうか。予約は各バンド結構入っていたけれども、なに、今日チケット予約のキャンセルが入ろうと、連絡なしで来ようとも無理もない事だし我々は「さもありなん」と頷くばかりである。自分だってお客さんだったら行ったか怪しいもの。兎に角、名古屋を生活圏とする者にしてみればそれだけの積雪だったのだ。
忘れてはならぬ。ライブ本編。
全バンド、こういう日に限って熱いライブを繰り広げるだろうと想像していた。何かがふっきれたバンドマン程強いものはない。こういう日は恐らくきっと、皆凄い演奏をするのだ。
想像通りであり、想像以上であり、そして想定外のトラブル続出。ベースアンプの音が割れたり、突然音が出なくなったり、一打目でネジが吹っ飛んでハイハットが使えなくなったり、それもこれも全て雪のせい!
そんな中パイプカットマミヰズは3番目に出演、演奏をした。
いや、それなりにライブを経験してきたし観てきたけれども演奏中にメンバーの胸倉掴んで殴った奴は初めてみ、いや見たんじゃないな、やったの僕だし。
頭に血が上ると何をするかわからないものだ。気がつくと演奏中、ギターボーカル吉田ヒズムの胸倉を掴んで殴っていた。
話は演奏開始直前、控え室に遡る。
「あー今日吉田君、お酒飲んでる?」
「うん、飲んでるね」
「大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫!絶対大丈夫!フンフーン」
「あー行っちゃった。・・・・ねえ皆、大丈夫かな」
「・・・・うーん」
「うぬう」
「・・・・ううん」
「・・・・よし賭けをしようか。彼が良い演奏をするか、それとも駄目な演奏をするか」
「おk」
「おk」
「おk」
「はいじゃあ一口百円!」
結論を申し上げると、2対2に割れた。勿論これは吉田ヒズム氏に対する信頼、積み重ねてきた練習への自負、そして良い演奏をしてみせるという自信に起因する冗談である。とかくピリピリしがちな出演直前に僕が仕掛けた、バンド内でのファニーなジョークの一種。
しかし、やりやがった。
吉田ヒズム、構成ミスをぶっぱなす→ステージ内に一瞬の緊張(パイプカット~の曲って誰か一人構成ミスると結構致命的な曲が多い)→どうにか復旧→興奮状態の舟橋、頭に血が上る→舟橋、吉田の胸倉を掴み殴りかかる→吉田(わかっているよ、すまない)殴られる→サポートキーボーディスト伊藤誠人、キーボードアタックを吉田に対して敢行→舟橋、更に興奮して吉田に小規模なドロップキック→吉田、轟沈。反省の一気飲み
今思えば、凄い流れ!
「あれは正解!面白かった!」と褒めて頂けて、ボコられた吉田君も報われるでしょう!
ごめんね吉田君!もうしない!きっと、しないよ!
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