パイプカツトマミヰズは8月30日、高円寺にて行われたMOGIFESに出演した。
MOGI君は東京でパイプカツトマミヰズが演奏する度に何度もライブを観てくれていて、時には機材トラブルに誰よりも早く気付いて飛び込んできては颯爽とシンバルやら直して最前列に戻っていく、その姿が実に印象的だ。
ライブの空間をライブとして、音楽を楽しんでいる好青年。
あれは新宿motionでの事だったと思う。演奏終了後の我々にMOGI君が「音楽フェスをやるから是非出て欲しいんですよ」と目を輝かせて声をかけてくれた。自分に声をかけてくれた人のフルネームさえ知らなかったけれども、そんな眼前の男は僕の見る限りとても信頼がおけそうな人物だったので即答で答えた。勿論「日程が合えばね!」と社会人バンドである以上避けては通れない大前提も提示はしたけれども(僕達が県外に出るのはその99パーセントが土日か祝日です)。
で、それから半年以上経った頃、正式なオファーがMOGI君から来たと渉外担当の駒田君から聞いた。そりゃあそうだろう、MOGI君はきっと、約束を反故にしないだろうと確信があった。
あの、新宿motionで即断した時の気持ちそのままに僕達は出演を決めたのだった。
しかし出演を決めてから、予想外の出来事が発生した。
ドラムの駒田君がある日、言いづらそうに僕に打ち明けてきた。「MOGIFESに出られなくなりました」。
聞くと同日、東京出張が入ったという。彼は最大限の努力でその出張をはねのける事が出来ないか、またはライブの時間だけでも抜け出す事が出来ないか苦心したそうだ。だが会議の時間は演奏時間とドンピシャに被っており、駒田君の演奏は実現不可能となってしまった。誰よりも駒田君が無念だったろう。彼もMOGI君とのやりとりを通じてMOGIFESへの熱意は高まっていただろうから。
駒田君と話し合い、我々は異例のボランティアメンバーとしてドラム駒田メンバーの代打を立てる事となった。
声をかけた梶藤君(ex.ナトリネ)は快諾、それまで経験した事がないような音量での演奏を強いられたにも関わらず見事に曲を憶え、少ない練習時間でバンドのあの感じ(グルーヴっていうのも抵抗がある、多分これはやってる本人達しかわからないけど、あの感じ)に違和感なく合わせてくれるように馴染んでくれた。
ボランティアメンバーとして既に何度も参加して貰っていた星野ゆりさん(里帰り)は最早手慣れたもの、彼女特有のポジションさえ築いた感さえある。そして、兎に角可愛い。行きの車中でうとうとしている様とか相当可愛かったよドキドキしたもん。
しかし駒田君の穴はデカかった。まさか誰も、駒田君から物販を引き継ぐ事を忘れていたなんて…。
全員集合してその事実に気付いた時、一瞬思った。「物販なしでMOGIFESか」と。覚悟を決めかけたけれども、それじゃあ素敵な催しに呼んでくれたMOGI君にも申し訳ないし彼の分もやってくると心に誓った駒田君にも申し訳ない。とりあえず吉田君の自宅PCから音源データをアップロード、東京に着いて顔合わせが終わり次第舟橋、梶藤、今回は(も)敏腕ドライバー兼諸々手伝う兼お弁当係として同行してくれた九鬼の3名は漫画喫茶へ向かった。
CDを増産、増産、増産。
九鬼「眠いしだるい」
前述の新栄トワイライトから仕事、早朝からのハイエース手配と身も心も摩耗しきった九鬼君の「先に行ってください」との言葉を受け止めて、先に高円寺へ戻る。
定刻がやって来た。転換作業を終え、いざ演奏。フロアを見ると沢山のお客さんが集まってくれている。ステージ上のメンバーも良い感じにラフで、良い感じに燃えている(ような気がした。あー、いつも通りだったかもわからんね)。
演奏を始めるといやあ、やっぱり良いですね。少し前まで新栄トワイライトで演劇ばっかり作ってたもんだからこう言っちゃなんだけど、やっぱり演奏活動も大好きだわ、俺。滅茶苦茶面白い。ぶん回すような演奏を見せつけるつもりでベースを弾く。持ち込みアンプがケーブルの関係で使えずに、咄嗟に作った常設アンプの音は自分の中でもギリギリ及第点、こういう日は音が出てればあとは気迫で補うべし、って気概だったけれども、その割り切りも良い風に作用したかどうか。
膨れ上がったローにすぐにフィードバックを起こしそうになるベースアンプにニヤニヤしながら格闘していくっていうのは決して万全の状態からの演奏ではないのかもしれないけれども、その場のシチュエーションをぶん殴るつもりで弾くっていうのも一つのクリエイティブな行為だな、と感じた。ポジティブな気持ちさえあればどうにでもなるもんよ。
吉田「今日はですね、正直言うと物販を忘れまして東京についてから用意しています。あー、間に合うのk」
「あります!!」
MC中にフロアから起こる声。そう、九鬼は戻ってきた。しっかりとその手にCD18枚を携えて。
かくしてMOGIFES限定仕様「ジャケットはお客様の似顔絵を吉田が描きます ほめ殺しe.p」が誕生したのだった。
お客さんにも喜んで貰えたようで良かったです。
SAXRUINS、怒涛の如し。
お客さんも皆思い思いの身の委ね方をしていたけれども、本当の自由がそこにはあった。そして吉田達也さんの演奏はオーケストレーションのようでした。奇抜なセットってわけではないのに豊富な音色、変幻自在なダイナミズム、正確でありながら情熱的なドラミング。良いもん観た!
大トリは主催者MOGI君=MOGIKOJIN。
この日、恐らくは一番の盛り上がりっぷりからも彼があの場にいた人達から愛されているのが本当によくわかったし、彼が成した事をどれだけ皆が楽しんだかが伝わってきた。最高じゃん、MOGI君。
意識を失いながら、名古屋モドリ。
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