女の子が一人で歩けば、20メートルも歩かないうちにナンパされてしまい、そこかしこに泥酔した若者が嬌声をあげる、そんな猛り狂った夜の鶴舞公園で(今日のエントリーはそんな夜の鶴舞公園での花見の時の一幕より)やはりこれまた泥酔した年頃の女子に「師匠、ベースを教えて下さい」と絡まれた。
そもそも、この女子とはスタジオに一緒に入ってサンズアンプについて研究したり「僕がいいよって言うまでグリッサンド(弦をスライドしてッドゥーーン!っていわせる奴ね)をひたすらに続けて」と言い放って寝ちゃって起きたらストイックに「ッドゥーーン!ッドゥーーン!!」ってグリッサンドし続けていたり、とベースギターの演奏について僕の教えられる事(このブログを普段から読んで頂いている皆様には既におわかりであろう、そう、まさしくその9割が精神論である)はそれなりに教えてきたつもりだったのだ。
それを今更!しかも「教えて下さい」って今から始まるみたいな口調だけれども、君僕の事を師匠って呼んでるじゃん、何なら仲良くなってからずっと!
ただ勿論彼女には思うところがあったそうで、改めてしごき直して(女の子としごくって言葉を並べるのに罪悪感を感じるのは僕がもうよい年したオジサンだからだろうか)欲しいとの事で「教える事、あるのかなぁ」と首をかしげながら今夜自宅より自転車で2分かからないくらいのところに住んでいる彼女の家に行ってきた。勿論、ベースギターを担いで。
なんだかんだ真面目な人なので昨夜の様子とはうって変わって物凄く真面目な眼差し。こりゃあちゃんとやらんわけにはいかんだろうよ、という事でまずは軽く弾いて貰う。
うん、やっぱり巧いじゃん教える事なんて何もないじゃん、と思いつつ彼女が普段奏法としてメインでは用いていないピック弾きについて話をしたり、した。
で、なんとなくエモーショナルな話になり、音楽なんて聴きながら昔を懐かしんだりした。
言ってしまえば31歳と24歳がベースギター抱えながら共通の思い出話に華を咲かせているっていうだけなんだけど、でもなんとなく彼女がこの夜、というかこういう機会に欲しかったのは=取り戻したかったのは、その時話題にしている時間の中で彼女が日々抱いていたものに違いないんだろうなって思った。
バンドが解散し、社会に出、サポート活動はしつつも継続的にバンド活動を続ける事がままならなかった程忙しい日々の中で、それはきっとある程度奥にしまっておかねばならない感情だったに違いない。
バンド活動が出来る状況に身を置いたわけで、さあいざとベースギターを手に取って自分にストイックになるところから始めたのかな、と思う。
なんだかんだで、バンドをやるのが一番だよみたいな結論になって、エモーショナルな空気を感じつつ帰ってきた。
けれども最終的に今後に繋がる、という意味では一番良い着地点に落ち着いたんじゃないだろうかと、ふとそんな事を思ったりもする。だってやっぱり、結局バンドをやるのが彼女にとっては一番のしごきになるだろうから。真面目だし、自分に自分で厳しくしちゃうタイプの人なんですよ。
僕は僕で過去は自分が積み重ねた時間の積み重ねに過ぎない、今が大事でしょ今でしょだなんてずっと思っていたけど何だかんだで現在に続く過去っていうのは決して軽んじる事は出来ないなと思い直すようになってきて、今夜のひと時でその思いをますます強くするようになった。気付きを得た、と言っても良い。
現在とこの先を大事にするなら、過去は物凄く大事だ。一番良いサンプルなのだから。
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