仕事終わりで会社から出ると、社内から見て想像していたよりも雨が降っている。
「畜生」とか「なんだよ」とか「ちぇっ」だとか、そんな感じの言葉を口にして傘を取り出しつつ、内心そこまで悪い気はしていないのである。
今夜は今後の活動で関わりを持ちそうな方のご自宅まで過去の自分の作品映像を資料としてお届けするというミッションがあった。
ご自宅の場所を伺ったところ、想像していたよりも近場で「こいつは自転車で行けそうじゃわい、しめしめ」と思っていたところ。なんだかんだで今までのびのびになって今夜やっと約束を果たせそうだったのでここから更に延期もしたくない、ええいままよ、久しぶりに本気レインコードを持ち出すか、と腹を括ったら途端にワクワクしてきたのである。
大雨ではない、かといって霧雨のようでもない。小雨。レインコートを着てマウンテンバイクを走らせるなら別に不快ではない雨具合だった(余談だが楽器を背負って、となると話は変わってくる。阿呆みたいにギグケースに色々詰め込むものだから結構な重量になっているし、雨の中楽器を持ち運ぶというのは例えどんな状態だろうとも気持ちの良くないものである)し、久しぶりの雨の中の運転である。濡れるまでが覚悟がいるだけで一旦濡れれば何て事はないのだ。出先でどこかに上がる、とかになると着替えが必要だし荷物も多くなるけれども、恐らく今夜は先方の自宅前で映像媒体の受け渡しだけで済むと思われた。濡れて帰ってきてもすぐに着替えれば良いのだ。
雨の中のサイクリング。悪くない。
夕食をとり、さあ出掛けるかとその頃にはむしろ能動的な気持ちになってサドルに跨った。
先方様から教えて頂いた住所は学生街を二つばかし通過する。何なら僕が学生時分の頃、うろついていた辺りである。
もう10年前になる、と思い至って少しばかり笑ってしまった。大学を卒業してから特に区切りらしい区切りもないままに今日までやってきたけれども、何だかんだで10年経っていたのだ。長いともいえるし短いとも思える10年である。
これからの人生はきっともっと長いし、もっと短いだろう。
そんな事をボーッと考えながらペダルを漕ぐのは、楽しかった。
雨が降る道を自転車で疾走する、その周りの景色に見覚えがあって記憶は完全に大学時代に飛んでいた。
おお、この道は○○君ちの近くだなよく遊びに行ったっけ、とか考えていると気が付けば吸い込んだ空気さえあの頃のあの感じを連想させる材料になっており、全く自分のセンチメンタリズムっていうのは何て安いんだ!と痛感する。悪い事だとは思わないんだけどネ!
目的を果たし(う○こを漏らしそうになりながら)帰宅。
ため込みがちになりそうな作業をえいやっと着手する。
演奏行為に際して必要最低限の情報を与えられた音源から取得するための作業(世間ではこれを耳コピという)に従事。
残り2曲。その後、親指をピック化しようと親指ピッキングでのオルタネイト練習。
「お、ひょっとしたらこんな感じでやるのかな」という力の抜き加減と指の潜り込ませ具合、を見つけたんだか見つけてないんだかって感じ。
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