有難い事に最近は有給休暇をガンガン頂けており(会社の先輩曰く、僕の有給休暇は過去からの繰り越し分を含めて考えると人より少しだけ多いようだ。やった!)、でもまあこんなご時世なので一人旅と洒落込む事も出来ず、いやこんな時世でなくても一人旅はした事がないけれど、あまり派手に動き回る事も出来ずにいたのだが、自宅にて作業したりコレクションしてはいるものの最近あまり触れていないペダルをとっかえひっかえ弾きまくったりしていた。
あとは、久しぶりにサウナに行った。
平日の昼間であれば空いているだろうという目論見である。かねてから噂には聞いていた春日井温泉へと足を運んだ。
自宅より徒歩圏内にJR鶴舞線の駅があるので、医者より「歩け」と言われているので内臓脂肪を消費するためにも近頃は意識的に歩くようにしている。で、テクテク鶴舞駅まで歩き中央線に乗る。15分も電車の中でぼーっとしているとJR春日井駅だ。そこから徒歩5分程で『愛知県の極楽』と言われる春日井温泉へ到着した。
入泉料はサウナ込みで540円。消毒液や脱衣所の張り紙で感染症対策を講じながら営業されている事が感じられる。きっと夕方頃とか休日には脱衣所でお馴染みさん同士が団欒していたんだろうな、と静かな脱衣所で思った。
体を洗い、風呂に入る。自宅の浴槽が深さはあるものの正方形のタイプなので足を伸ばして入浴出来る事が有難い。思わず声が出る。
程良く体が温まったところで高温サウナへ。サウナ室に入るなりぎょっとした。サウナ室の中にいらっしゃる先達は、皆マスクをしたりフェイスガードをしていた。確かに張り紙に「サウナ室はマスクをして良い」旨書いてある。皆、こうして感染症対策に注力しているのだ。脱衣所へとってかえして不織布のマスクをつけてサウナ室へ戻った。
温度感こそそんなに高くないもの、汗が噴き出る。湿度が高めなのだろうか。カーッと蒸される感覚。成程、友人から聞いていた通りだ。これは良い。蒸されていると常連さんと思しき壮年の男性から声をかけられた。
「マスクしなくていいよ。俺達ぁ勝手にやってるだけだから」
サウナ室の他の先達も無言でそれに同意する。その後のやりとりを聞いていると男性はやはり常連で、○○さんは最近来てないなとか◇◇というサウナに行ったぞとか話していたので、サウナを愛する紳士であり春日井温泉の常連さんだと察せられた。
多分、顔を初めて見た僕を初来訪と察して気遣って下さったのだろう。常連さんが親切な銭湯は良い銭湯だ。今までもこういう地元の常連さん達に優しくして頂く事はあったが、毎回銭湯やサウナの感動に加えて人の優しさや気遣いに触れて、それが例え先方からすればささやかなものであっても大変嬉しく思う。そういう記憶は場所の記憶に伴って残るものだから、その場所自体に美しい思い出として書き記されるわけで、こういったジェントルな常連さんは布教に一役も二役も買っていると僕は思うのだ。
良い感じに汗をかいたので水風呂へ。
春日井温泉の水風呂は二種類あり、冷たいのともっと冷たいのなのだが、いずれにしても井戸水を用いており大変気持ちが良い。
ドボンと入ってすぐに感じるのが「あ、綺麗な水」という感じで入り心地も爽やかな印象だ。語彙力のある愛好家ならもっと適格かつ気の利いた比喩をするのだろうけれども、優しさに包まれるような水風呂だ。
春日井温泉は、外気浴スポットがまた、良い。
露天風呂に面して滝があり、池があり鯉が泳いでいる。露天風呂の浴槽のへりに腰かけて泳いでいる鯉や滝の水に反射する日光をボケッと眺めていると微妙な多幸感、俗っぽい言い方になるけれども「キマッて」きたのを感じる。
すると、滝の上の方、水が溜まっているスペースに一羽のカラスが降り立った。水を浴びてまた飛び立つ。カラスの行水とはこの事だ。カラスよ、そうだよな、どうせなら気持ち良い行水がしたいよな。
その後、サウナ室と水風呂と露天風呂(の浴槽のへり)を何往復かする。適度に名残惜しさを残して、風呂から上がる。再来訪は確実だが、次回へと余韻を残した方が良いと漠然と思ったのであった。
いやあ、本当に最高だった。