ゴウさんとスタジオに入った。

ゴウさん(雰囲気/四日市ドレミファといろは)とは有難い事に間隔は空けども今尚連絡を取ってはやりとりをさせて頂いている。
「元気か?」とか「今日何してんの?」とかそんな簡単な言葉から始まるLINEのやりとり。名古屋にゴウさんがライブしに来るから終演後でもいいから顔を出さないか、というお誘いだったりするのだが、無礼な後輩である僕は仕事や家庭等でなかなか顔を出す事が出来ない。
「申し訳ないですね」とLINEを送るわけなのだがそこからもやりとりは続く。続けて下さる。
で、近況報告になったり本当に冗談のような往復が続いたりするのだけど、割とそういうのが得意ではない僕にしては珍しくゴウさんとのやりとりは楽しんでいる。これはもうゴウさんのセンスの成せるわざであろう。で、先日ゴウさんからLINEが来た。
ゴウさんもモンスターハンターで遊んでいるようでそんなやりとりをした後に「何か良い歪みエフェクターはないか」と尋ねられた。
いや、まさかゴウさんからそんな事尋ねられるとは思ってもみなかったので思わず「え!」と返してしまったのだけど、どうやら今度ベースボーカルをされるそうでその際にギターの不在を埋められるような、そんな歪み方をするペダルを探しているとの事。
幾つか頭に浮かんだものをお伝えしたのだが、結局スタジオに一緒に入る事になった。なんと名古屋まで来て下さるという。ここでも僕は完全に先輩に甘える後輩なのであった。

ゴウさんといえばヘフナーのバイオリンベースである。ポール・マッカートニーが愛用した事で知られるこの楽器だが、ゴウさんはかれこれ20年の間、ベースを弾く際はこれをメインとしている(余談だが世界広しといえどもポール・マッカートニーを全く意識せずにこの楽器を手に取ったのはこの人くらいではなかろうか。「いや、たまたまポールも使っとったんよね」的な発言をされていたけど、シビレたなぁ)。

ショートスケールで独特な音がする楽器である事は明らかだったし、フラットワウンド弦が張られているので歪ませた際にどんな音になるのか想像がつかなかった。それにゴウさんは今までBOSSのチューナーを使って分岐させた信号をベースアンプとは別にギターアンプに送り込んでそこで歪ませて、アンプを2台同時に鳴らす事で歪んだ音を実現していたはずだ。なのに、歪みペダルを検討している。
僕もこの機会を僕も楽しみにしていた。

「ベースを歪ませた、というよりかはギターの穴を埋めるような音がもう一つ増えるような、そんな感じ」の音を欲しているとの事だったのでそれならばドライブレンドが出来るものが良いだろうと思った。
勝手にトラディショナルなドライブペダルが良いかと思っていたのだが、ゴウさんはその耳と感性で凶悪なものから割とナチュラルな歪み方をするものまでどんどんジャッジしていく。

ゴウさんにファズというイメージはあまりなかったのだけど、ミドルを少しカットしたバイオリンベースのふくよかな低域と攻撃的なファズの音はビックリする程相性が良く、自分が先入観を持っていた事をきっちり自覚する事が出来た。
結果的にいえばバイオリンベースはペダルを用いてきっちりと歪ませる事が出来る。歪ませ方によってはブイブイと前に出てくるような音も作る事が出来、これがまた格好良かった。ファズとも相性が良いように思えた。時折、僕が弾いてゴウさんがその音を聴く。

楽器はやはり入力段階、誰がどのように弾くか、で随分と音が変わる。今までだって何度も痛感してきた事だけれど、バイオリンベースはそんな弾き手の違いも音に顕在化させる素敵な楽器であった。
というか、本物のヘフナーを弾く機会はそうそうないから楽しかった。
ゴウさんのバイオリンベース、良い音したなあ。ピックアップがガムテープで固定されていたりピッグガード裏に木材で補強が入れてあったり、所々にゴウさんがバイオリンベースを使いやすくしようと対処してきた痕跡があって楽しかった。
そういうのを感じるのは、好きな瞬間だ。ゴウさんは結局Guyatoneの古いベースドライバーが気に入ったようだった。幸いにして某オークションサイトに比較的手頃な価格で出品されていた。
お役に立てたようで良かった。僕も面白い体験が出来た。