iGOでパッセフェスに出演した話。

パッセフェス当日。僕は酔っ払っていた。

朝7時まで佐藤さん(JONNY)と佐藤家で飲んでいた結果、朝10時の起床時でまだ顔が赤く、若干フラついていた。凄いな、二日酔いっていうか寝て起きても酔っ払ったままだ。幸い気分は悪くないので、準備をして迎えが来るのを待つ。

うちの近くまでブラリと歩いて来られた茜谷さんと近所で立ち話をしていると、楽器を背負って自転車に乗った若者が横を通過していく。彼もこの後演奏するのだろう。ライブだろうか、それとも練習だろうか。何にしても親近感を感じた。

しばらく茜谷さんと喋っていると先程の若者が行った方から戻って来た。忘れ物でもしたのだろうか、と思った刹那、若者が声をかけてくる。

「あの、iGOさんですよね?」

茜谷さん、凄いじゃないですか!

「JONNYも観ました。格好良かったっす」

君、おまけみたいな僕を褒めても何も出ないぞ!

若者は少年ネバーマインド というバンドのヒロシ君。野田ロックフェスティバルでiGOを観たそうだ。背中に背負っているのはベースギターでこの日はライブらしく、丁度演奏時間的にお互いにお互いの演奏を観られなくて残念だけど、短い時間ながらバンドの話とかその場でする事が出来た。話をしているうちに昌吾さん到着。昌吾さんの車に向かって走りながら茜谷さんが振り返って一言。

「対バンしようぜ!」

茜谷さん、僕も丁度同じ事を思っていました。

ヒロシ君、丁寧で好青年だったなあ。ライブ動画しかチェック出来てないけれど、少年ネバーマインド、良いバンドだろう(僕の友人達は彼らを知っていて、やっぱりライブが良いバンドだそうだ)。

こういうのがあるからバンドって面白い。

で、偶然の出会いに静かに興奮しつつ、近鉄パッセへ向かう。関係者駐車場からエレベーターで上まで昇る。思えばパッセフェス、去年に引き続き2度目の出演となる。去年はJONNYでの演奏だったが、生憎の曇り模様。雨天の中演奏した去年の様子を思い返しつつ、今年は良い天気に恵まれて良かったなと思う。

吹原君、柴山社長(ONE BY ONE RECORDS )と合流して、パッセの社員食堂で皆で食事をとった。机がずらりと並んだ社員食堂ではパッセに入っている服飾店の店員さんと思しききらびやかな女性達が思い思いに食事をされており、自分達の異物感を強烈に意識しながらも、やっぱりどうしても気持ちがはしゃいでしまう。だってさ、ああいう服着てああいう化粧した女性って普段なかなか接点ないんだよ。

さて、演奏時間がやってきた。ステージ常設のベースアンプはGUYATONEのアンプヘッドにGUYATONEのキャビネット。見た瞬間に「良い音するだろ」と思い、いざ音を出してみると本当に良い音がさっくり出た。こういう時は気分も良い。PAの松井さん(studio Vetix /G-FIGHTER)も「モニタリングしにくくない範囲で、可能な限りアンプで音量稼いだ方が今日は良いかもしれないよ」と嬉しくなるようなアドバイス。小さくするより、爆音で演奏する方が大好きな僕からするとこんなに嬉しい事はない。他の楽器の音が聴こえるようにしつつ、アンプのボリュームツマミをグイッと上げる。

この日の演奏、機材トラブルで楽器の音が突然出なくなったり(後で聞いたら、パワーアンプが落ちたらしい)しつつも、それさえも起爆剤にし得るライブ。いや、やっぱり御三方、凄いわ。もう絶対にこれで落ち込まないってわかっているので音が出なくなっても全然びっくりしなかった。演奏終了後に昌吾さんに「舟橋君、音出なくなった時どう思った?俺もうビックリしちゃってさー」と言われたけれども、音が出なくなった時でさえ昌吾さんがあの何か面白い事を企んでいるニコニコ顔だったのを僕はしっかり見ていた。

実に3週間ぶりのiGOでの演奏、しかも実は一度もスタジオに入る事なく本番に臨んだのだけれども、いや、良い演奏が出来たと思う。青空の元、自分達の演奏が広がっていく感覚って野外特有で、そういうのって凄く興奮させられる。

最終的にはしゃいで楽器を置いて走り出して、客席後方のモニュメントによじ登って吠える。

正直に打ち明けるならば、飛び降りてやろうと思って下を見た瞬間、本能的に体が竦んだ。衝動に任せて飛び降りようものなら、また、腕を折りかねない。会場内の恐らく半分以上がこのまま舟橋が飛び降りて終わりだろうと思う中、僕はステージに向かって最大級の敬意を込めて、敬礼を送ったのだった。

演奏終了後、モニュメントからソロソロと気をつけて降りる様はさだめし滑稽だっただろう。

会場入り後にざるそば(250円)を食べていたものの、演奏を無事終えたという安堵感からか腹がやたらに減った。再び社員食堂へ舞い戻り、鮭おにぎり(90円)の食券を購入。おばちゃんが大きいおにぎりを目の前で握ってくれた。まずいはずがない。

帰りは昌吾さんに送って頂く。後部座席で茜谷さんと昌吾さんの会話を聞きながら今日の一日を反芻する。うん、胸を張って良い演奏が出来た、と思えた。寝たり起きたりを繰り返しながら、帰宅。

コメント