強敵と呼べる存在がいるのは嬉しいものだ。バンドマンは強敵を、宿敵を大切にせねばならない。自分のためにも。
数ヶ月前のある晩、大内君から電話を貰った。
出ると「相談なんだけど、共同企画をやらないか」。概要を聞く前にすぐさま返した。「やろう」と。大内君の誘いだもの、面白くないはずがない。
話を聞いてみると高野君所属のゲスバンドがリリースツアーで名古屋に行きたがっている、との事。最高じゃないか、その三つ巴!
というわけで話はトントン拍子に進み、高野、大内、舟橋の三人で共同企画を行う事に相成ったというわけ。
大内君所属のTHEピンクトカレフ、高野君所属のゲスバンド、僕は大内君からご指名を頂いてワッペリンで出撃。そして名古屋からの出演はこの三組となれば関係も今まで持ってきたし何より情熱を持ってブッ込んでくれるであろう、孤高のえんげきユニット孤独部。
更にはフードとしてかねてから仲間内で絶品の火鍋を作るとして評価が高かった九鬼君に出店を依頼、その名も「くきっこ」として火鍋を提供して貰った。
場所は面白い事が大好き、八木さんが店長を勤める鶴舞DAYTRIP。
こんな日が楽しくないわけがない。
昼頃からレンタカー屋さんに集合して、孤独部での衣装やら(この日の演奏は僕とケンタロヲさんによるインプロビゼーションだった。孤独部のデザインやこの日は出演もされた吉村桜子さんのご友人、野呂有我さんが作られた電子ノイズトラックと、かしやま君のリングモジュレーターをかけた声の芝居との即興アンサンブル)、くきっこの食材の買い出し(場所はお馴染み名古屋製麺!) やら慌ただしく移動して会場入り。
各バンドのリハーサルを見守ったり孤独部のリハーサルをやったりしている間に気がつけば開場時間。楽しい時間は過ぎるのがあっという間だ。
くきっこの火鍋の匂いが会場内に広がる中、イベントスタート。フライングして真っ先に火鍋を胃袋に収めていたケンタロヲさんと僕でSEにあわせてステージに上がる。かしやま君の影アナが開始を告げ、作品名「仲良しクラブ-内側と外側-」は幕を開けた。
この日の孤独部、今まで僕が関わった中でも相当に前衛的だったんじゃないかな。視覚的にも面白かったろうし、僕も久しぶりの即興を楽しんだ。
大森靖子という人は実にどこまでもナチュラルで、そりゃあステージ上と楽屋では違った顔もしたりするのだろうけれど(ちなみに大森さん、何度も言うけど僕はゲイじゃないぜ!)ステージに立っていても呼吸するように音楽をやっているように、そういう風に見える。
大内君と僕は出会った頃とお互いバンドも違うし何であれば人前に立つ根っこの部分の姿勢も違ったりするのかもしれないけれど、それでもお互いに良い具合に深化しているように思う。大内君のベースプレイはやっぱり大内君で、その持ち味のまま様々な表情を見せてくれるからやっぱりこれも、また深化。
ワッペリンは孤独部のインプロビゼーションに対して陸上競技で言えば50メートルをどう走るか、のような演奏をした。まだまだペース配分がうまくいかずにやり過ぎてバテてしまう部分はあるけれども、それも今はまだ良し。汗水流して一生懸命楽しんだ。
この二日間で僕達はまた強くなったし、まだまだ強くなれると確信した。
やっと観る事が出来たゲスバンドは強靭なアンサンブルに切れ味も兼ね備えていてキラキラギラギラしていた。面白いバンドだ!
高野君の影響を受けた僕は翌日、早速BOSSのピッチシフターを試しに楽器屋に出掛けてしまった。
くきっここと九鬼君は持ち前の「やるとなったら全力精神」で今回初となるライブハウスでのフード提供をやりきってくれた。大勢の方がくきっこの火鍋に舌鼓を打ったようで僕も嬉しい。
彼をブッキングしたのには別に面白いから、とか勿論それもあるけれどそれだけじゃあない。彼は料理が巧みであるという特殊技能の上に、それ以上にもの作りに対して真摯だ。音楽も演劇もそれ以外の表現活動もやらない彼が人前で何かを成すところを見たい。今回のブッキングはひとえにそんな僕の初期衝動にあると言って良い。
今回のために大きな鍋を購入、そして何がしか感じてしまったであろう彼は料理が漕ぎ出した。もし次があるのなら全力でサポートしたいなあと純粋に思う。
九鬼君、僕の我が儘に付き合ってくれて有難う。
今回の三つ巴の闘いは結局4つ巴の闘いとなった。
共同戦線を張った仲間達よ、また会おう。
そして彼らはまた、僕の愛おしい宿敵に戻ったというわけ。
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