ドン・マツオ with Bad Traffic に参加した話。

12時過ぎに今池で小池さん(ロック墓場)と合流、車にピックアップして貰いそのまま下道で四日市へ。
道中は非常に和やかで音楽の話(過去に共演した中で一番衝撃的だったG-FIGHTERの話も!またやって欲しいなあG-FIGHTER)や生活の話やら色々と楽しい話が沢山出来た。
14時頃には四日市に到着し、二人で商店街の中のラーメン屋にて四日市名物のトンテキを食べる。小池さんはラーメンとトンテキのセットを頼まれていたけれども、ラーメンも鰹の良い匂いがして大変美味しそうであった。トンテキは甘辛い味付けでニンニクも効いてて、美味しくないわけがないでしょうといった感じ。ご飯とみそ汁がおかわり自由だったのでついついはしゃいで食べ過ぎてしまった。
「ご飯が旨いと幸先が良い感じがしますね」だなんて言いながら車に戻り、この日の演奏会場へ。
そう、この日は有給休暇を使ってでもしたい演奏があった。
2015年3月13日、この日僕はドン・マツオさん(ズボンズ)のアルバムリリースツアー四日市編@ドレミファといろはでベースギターを弾いたのであった。

ドン・マツオさんはソロツアーを「各地の若いミュージシャンとその日限りのバンドを組んで演奏する」という、ちょっと他に聞いた事がない形で行われている。ツアー初日の名古屋編を観に行った際にその爆発力とスリリングさを大いに楽しんだのだけども、いざ自分がやるとなると色々と予測出来ないだけに緊張するシチュエーションである。
四日市場所をアテンドしたのは今まで何度もお世話になったノビ太さん。ノビ太さんが今回召集したのは前述の小池和伸さん(ロック墓場)、十三さん(Libra.etc)、そして僕。
この名古屋オルタナティヴ界の先輩方に挟まれての演奏っていうのも、また背筋が伸びるシチュエーションである。
だが、やらねばならぬ。男はどうしても引くわけにはいかない時があり、バンドマンには弾かねばならぬ時があるものなのだ。

事前にドンさんから送って頂いた8曲、これらを小池さんと十三さんとスタジオで確認してあとはぶっつけ当日、である。
リハーサルからあらゆる情報を逃さぬよう、空気を体に出来るだけ吸い込んでおくように集中して臨んだ。ドンさんはとても気配りして下さる方で音楽演奏に集中出来るよう、場の空気を見つつしかし的確に「良い音楽」が鳴らされるように環境から作っていく。
演奏しながらドンさんから指示(これが実にわかりやすく、かつ同時に良い感じに想像力を刺激するもの、であった)がとんできてバンドの演奏はどんどん躍動していく。その手法は事前に知っていたし名古屋編でも観ていたのだけれども、想像していたよりもその演奏は遥かに自由で、指揮の通り演奏するというよりかは音楽的なコミュニケーションに富んだものだった。4人の演奏で出来上がったものをドンさんが汲み取って時に刺激を与えたり、時にまとめたり時に自由に解き放ったり、波を見て波を作って波を掴んで演奏していくのだった。
リハーサルは「これ以上やると良くないね」というドンさんの言葉で終了。

この日の共演はばけばけばーうんにょろず
ばけばけばーは陽気な哲学者(数学者、かもしれない)のようなアンサンブルで舟橋大いに衝撃を受ける。
うんにょろずは即興とは思えない程歌心と気品のある美しさがあり、錬金術師のようなライブを観た思いだった。
本番前に楽屋で集合した頃には舟橋、すっかりいきりたっており気分はさながら軍曹についていく二等兵さながら、大いにやる気に満ちていた。

かくしてドン・マツオ with Bad Traffic(この日のバンド名、である)は1時間近く演奏したのだろうか、演奏を終えたのであった。
どんな演奏だったかというと、うん、本当に楽しかったし刺激的な時間を過ごした。確かに出し切った、良いものを出したという手応えが残る演奏をした。「リハーサルであれだけやった」にも関わらず本番の演奏と興奮は別格、3人とも大いにハッスルしてドンさんと演奏したのだった。
いや、しかしドンさん凄いわ。物凄く周りを見ているし人の良さを引き出すのが物凄く早く、ズルリと引っ張っていかれる。そして「どれだけやったって大丈夫」という安心感と「もっとやりにこい」みたいな挑戦的な気配を身に纏いながらギターを弾いて歌い、叫ぶ。あれだけ短くて濃密な一時間は久しぶり、いや、初めてだったかもしれない。
顔合わせをしてどんな演奏者なのかを見てどう引き出すかを判断して、まさに「波を見るように」演奏が一線を越える瞬間を見て音楽を、バンドが変化するように刺激を与える。あれを毎晩毎晩やってこられるというのは想像を絶する。
「音楽を演奏するのではなく、大きな音楽という存在に演奏させられる」という主旨の発言を終演後にされていたけれども、演奏の案内役であるドンさん自身も先がどうなるかだなんてわからないんじゃないだろうか。
お互い次に何をやるか不明の音楽家が4人揃って、兎に角良いものをもっと良いものをというその一点を共有して意識を集中してクリエイティビティと興奮に身と頭を任せて刹那毎に演奏を重ねる。
ドンさんはその波を見る。良い瞬間を捕まえてアウトプットして、道先案内人としてさらに転がす。
最高にエキサイティングな経験なのであった。

今回の演奏に参加して思った事が一つある。
音楽を演奏するという事は「再現」ではなくあくまで「演奏」なのであるという事だ。
同じ顔触れで集まって曲を作り練り上げて練習を重ね、演奏すればする程、人前での演奏行為=ライブは「再現」になってしまっておかしくない。けれども演奏というのは本質的には「クリエイト」する行為であるわけで、同じものを作るという発想のものでもないはずだ。
その時の空気、メンバーのバイオリズム、そして自分の気概に忠実に演奏する事で再現ではなくライブは瞬間芸術になっていくのではないだろうか、だなんてそんな事を考えたりした。少なくともそういう心持で演奏に臨みたいものだね、だなんて思ったところで、じゃあそう考えてる自分ってそういう部分を忘れがちだったなと思い当り素直に反省した。
正確無比な再現を志して演奏した事なんて一度もないけれども、クリエイティブで自由な瞬間瞬間の積み重ねで音楽は本来の力を持つという事は意識しておかねばならないな、とも思うのだ。

演奏中の刺激も凄ければ、心に残った鮮烈な記憶も大きい夜だった。
ご来場頂いた皆様、声をかけて下さったノビ太さん、そしてドン・マツオさん、有難うございました。

donmatsuo_with_badtraffic
左から、小池さん、ドンさん、僕、十三さん。
本当に楽しい夜だったなあ!

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