遠く離れた地の方が縁とゆかりを感じる瞬間もある。

「最高過ぎて真似したい」と思えるバンドがいる。バンドマンとしてこれって結構ギリギリアウトな気がするのだけれども(やり方と程度によるのかもしれないが)、それでも心の底から「いいなあああああああ」と羨望の眼差しと歓喜に溢れるライブをするのがEmily likes tennisだ。
一言で言うならば「最高のバンド」、もう少し細かく説明するなら「年齢不詳のさえない寄り(ごめんな、お互い様だっていうのに)の男性四人から成るロックバンド。プログレッシヴでオルタナティヴなリフに段ボール工作も飛び出す滅茶苦茶見ごたえのあるライブをする」って感じか。あー、これでも伝わる気がしない。
これ観るのが一番早い。
観たかい?観たよな?OK、続けよう。

皆大好きEmily likes tennisに企画に呼んで貰った。「いつかスプリット出そうな!」と言っちゃうくらい盟友だと思ってるんだもの、そりゃあ行くよ当たり前のように行くよ。引き受けない理由がないもの。というわけで我々、早朝6時半より練習スタジオに集って(こう書くと物凄い気合だな!と受け取られがちだけれどもナンて事ぁない、ライブ当日しか練習日程が確保出来なかっただけである)2時間練習して、そのままジャパンレンタカーでハイエースを借りて機材一式積み込んで東京へ向かった。
今回はスタッフとして同行してくれた友人もおり、彼が作ってくれた朝食と呼ぶには豪華過ぎるし量も多過ぎるもの(唐揚げにサンドイッチにソバメシ)を肴に知多ウイスキーをハイボールにしてグビグビ飲んで出発するという過去最高に酷い有様での出発だったよ俺は。しかも愛知県から出ないうちに酔い潰れて寝ちゃうっていうね。起きたら静岡だった。すぐにまた寝た。起きたら海老名だった。過去最高に最低で、しかし俺からすると最高な行きの道中だった。

会場となる秋葉原CLUB GOODMANは楽器店の地下にある。というか入口のすぐ前がベース専門店だ。
たまらんかったよ、搬入で楽器抱えて階段降りて行ったらこの頃気になってるBB(僕が最も好きなYAMAHA社が販売している伝統的なモデル)の新モデルが何本も置いてあるんだもの。いやー目に毒だった。

この日の共演はO’CHAWANZ(ラップアイドルユニットという事で、可愛かったし曲のクオリティも高かった)、股下89(良いバンドと聴いていたけれども本当にそうだった。そういえばベースの方がYAMAHA BBユーザーだった)、トリプルファイヤー(ご一緒するのは久しぶり。ラッさんのベースの音は本当に身が詰まっていて素敵だ。演奏も異形感が凄い。褒め言葉ねこれね)にEmily likes tennis。これぞ、な面子で楽しかった。観たいバンドが共演っていうのは良いもんだなあ。どのバンドも良いライブだったけれども、トリのEmily likes tennisは凄まじかった。
色々な音楽を揶揄するパフォーマンスをするものの、揶揄以上に愛情と敬意をそこに感じてしまう、というのは本当に音楽が好きな証拠である、と個人的には思う。映画何本も観たような情報量と満足感。素晴らしかったなあ。

この日は演奏しながらフロアに懐かしい顔が見えた気が、した。今からあれはおよそ10年程前競い合うようにベースギター演奏で己を誇示せん、と闘ったあの男の顔だ。すぐに他人の空似だとわかったが一瞬の勘違いでも胸が熱くなった。そうだ、ここは彼の住む町だ。そしてその後に出会った多くの人達の顔がよぎった。ほんの数秒の出来事ではあったけれども、嗚呼、何てロマンチックでドラマチックな数秒だっただろうか。演奏行為というのは、全く面白い。音にまみれながらもそんな事を思ったりもするのだ。

2017_06_07_001
SNSは便利だ。
見ず知らずの方がアップしていた写真を「頂いても宜しいですか」とこうしてブログに貼り付ける事も出来る。

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