カレーライスのノスタルジー、そして投影される個人性。

続・我が逃走

カレーライスが、無性に好きである。

所謂『子供が大好きな食べ物』とはカレー、ハンバーグ、ラーメンというイメージが強いし、実際これらの食べ物を嫌いだという人間にはほとんどあった事がない。勿論「辛過ぎるカレーが苦手だ」とか「コッテリしたラーメンはあまり好まない」というそれらの中でより限定的な嗜好の差異はあれども、大まかなカテゴリーでその料理自体を嫌っている人間にはあまりお目にかかれない。

カレーは子供に愛されているが、それ以上に皆に愛されている。街にはカレーショップがチェーン店、個人経営問わず溢れている。街を数十分歩いてみて、カレーが食べられるお店が目に入らない事の方が稀である。我々の日常にカレーはそっと寄り添っているのである。

しかしそれだけ沢山のカレーショップ、創意工夫を凝らしたカレーが世の中に沢山出回ろうと一部の人間は頑なに「うちのカレーが一番だ」と主張する。彼らは母親、恋人、配偶者が作ったカレーが一番旨いと主張するのであり、何を隠そう僕もそんな人間の一人である。ここにおいては幼い頃から食べ続けてきた思い入れ、そして愛する人間が作ったという感情移入、それらからくるセンチメンタリズムが味覚に介入しているのは明らかである。が、それは同時に敢えて論じるまでもない、人間の叙情的な部分であり人間が人間たる所以であると断じてしまおう。

幼い頃から食べ続けてきたカレー。

この年になって思うのが、これほど食べ手の拘りを投影する料理もないだろうと思う。作り手の拘りが料理に投影されるのは創作物、作品であるのでさもありなんと思うが消費者側の拘りというのは一体何だ、と思われるかもしれない。

では読者の皆さんへ僕から少しばかり質問を。

カレーを食べる時はルーとライスを混ぜますか?らっきょうや福神漬けの漬け合わせは必要ですか?それらの漬け汁がルーに混ざる事に抵抗はないですか?ルーの温度はどれくらいがいいですか?ライスは水っぽい方が好きか、それともパラパラの方が好きですか?ルーとライスの比率はどれくらいが好きですか?

ライスが左側、ルーが右側、そういうよそい方でいいでしょうか?

恐らく、これらの回答が全員が全員一致する事はないのではないか。試しに身近な友人にこれらの質問事項をぶつけてみた所、その段階で、既にかなりの齟齬が生まれていたのだ。

ちなみに僕はルーとライスは混ぜずに食べる。らっきょうや福神漬けは大好きだが、それらの漬け汁がルーやライスに侵食する事はあまり好ましくない。ルーの温度は飲むように食べる方法を採用するので熱々ではなく程々が好きで、ライスも同じである。ライスは水っぽくなく、それでいてパラパラというよりかはご飯の米がそれぞれ分離が良い程度が最高だと思う。ルーとライスの比率は4:6が丁度良い。ライスにかかったルーを食べるよりかは、ルーのかかったライスを食べる感覚が好きなのだ。

余談だが、最近はすっかり納豆カレーにハマッてしまっている。

カレーライス程普及した食べ物でも、その実態は個人の拘りと嗜好が投影される極めて私的な食べ物なのだ。

もしも、もしもである。僕の嗜好と完全に一致する人間がいたらば、一報頂きたい。

是非カレーライスを共にしようではないか。

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