恐怖の正体。

怪談話やらオカルトな話を愛好している。すすんで聞きたがるし、話すのも好きだ。

霊感のある後輩が二人いる。二人とも揃って「先輩は大丈夫。憑かれたりしません」と太鼓判をおしてくれた。知人の「感じる」女性にも同様の事を言われた。どうやらそういう性質らしい。

そういった怪談やオカルト話に対して僕個人が抱くのは、怖い物みたさというか好奇心。それは心霊的なものに対する好奇心というよりかは「人は何を恐れるのか」といった類のものだ。
語り継がれる恐怖憚やオカルト話、都市伝説には人を恐れさせ、かつ惹きつける何かがある。それに興味があるのだ。故にそういった談話で自分が怖がる事、少なくとも尾をひく程恐れる事などなかなかない。

だが。

先程、時刻は深夜1時半、草木も眠る丑三つ時、最近まで生活していた貸家に人に貸す予定の機材を取りに行こうと思い立った。この貸家、感じてしまう人間は必ず何かしら感じるという通称「幽霊屋敷」である。僕自身は何も感じずそこでの生活を終えたし、恐れる事などなかった。だが。

どうにも行くのに抵抗がある。シャッターをあけて家具等が運び出された家にあがりこんで機材を回収してくるだけの事なのに、どうにも気がすすまない。

そして僕は気付いた。僕が恐れているのは暗闇に他ならない。正確に言えば暗闇に刺激された想像力。

自分の中で想像力が刺激されるのが恐ろしいのだ、と。なかなかない経験だけに、妙に目新しかった。

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