新栄トワイライトvol.2 を終えて。

二週に跨って行われた「新栄トワイライトvol.2」が終わった。
有難い事に二週とも満員御礼、立ち見のお客様も出られた程でこれは携わる人間としては本当に嬉しい。
ご来場頂いた皆様、本当に有難うございました。観辛かった方もいらっしゃったかと思います、申し訳ありませんでした。
運営一同、今回の反省を次回に活かして参りますのでご期待下さい。
さて、簡単ではあるけれども各週の出演者の簡単な感想を僕目線で。

一週目
ゲボゲボ「おおかみとさんびきのこぶた」
今回は田中みなさんが作・演出という事でゲボゲボテイストなんだけど田中テイストでもあるよっていう。ゲボゲボテイストを意識した田中さんの作品を観る事で普段の田中さんの作品との差異や共通項を垣間見たりして、つまりやっぱり田中さんはゲボゲボの中の人なんだねって感じたりした。
田中さんっておおらかな人柄なんだけど、ものを作る時って結構計画的というか、緻密に周りの状況とかも考えた上で作ってる気配が今までの付き合いの中からも散見されていて、今回も一組目からエンディングかよ!もう一週目フィニッシュ感凄いよ!みたいな終わり方は実に田中さんらしかったと思う。後で話を聞いたらやっぱり計画的だったし。
あと右角81君の演技が面白かった。もっと役者やってよ、って思った。
あとこれは作品を反芻しながら思ったんだけど、田中さんの作・演での作品作りって参加する側としてはやりやすそうだな、楽しそうだなって思ったりもした。あの人達稽古の後、杏花村(@新栄)よく行ってたみたいだし。

シバ×イバ!!「シバとイバの大冒険~不思議なガーラ~」
出たよ天才(劇団んいい×相羽企画)二人組。誰かが「その組み合わせで面白くないわけないじゃん!」って言ってたけど結果的にやっぱりこの二人組で面白くないわけがなかった。どころかその言葉では足りない程に面白かった。
相羽君ってその場の空気を読んでノッたりハズしたりが巧い人なんだろうなあって思っていたけれども、この日も如何なくそれを発揮。そして椎葉君は面白いだけじゃなくて演技の基本水準がとても高いのできっちり感動もさせられる。面白いけど。で、結果的にこの二人によるコメディはコンビニあるあるから始まってきっちり大笑いして感動も出来ちゃう、スケールは小さいけれども壮大なミュージカルに着地したのだった。個人的にはこの日の簡単な打ち合わせだけで「青」と「緑」で某コンビニチェーンを表現した菊地紗矢さん(今回団体付の照明オペさんが不在だった全団体の照明を快く引き受けて下さった)も凄く良い仕事っぷりを披露していた。彼女の才能を端的に表現した瞬間だったと思う。

ジェット達
個人的に作品内容もそうだけど場内が一体どうなるのか、それが一番楽しみだったのがジェット達さん。
新栄トワイライトvol.2を催すにあたって運営一同「是非に」とプッシュしたのもこの方でした。ライブハウスでの演劇イベントっていう事にアイデンティティを求めているわけではないけれど、普段ライブハウスや小劇場以外の場所で単身パフォーマーとして活躍されているジェット達さんが、小劇場に観劇しに行かれている皆様にどのような衝撃を残すのか。ライブハウスを本拠地とする身としては本当に楽しみにしていました。
結果、客席の様子としては「戸惑い」→「笑い」→「最終的には、恋する目つき」というあの達さん所見の人ならばほぼ間違いなく連れていかれる、感情のランデヴーに陥っていたのでした。
最高だったなあ。小道具らしい小道具もなし、派手な照明もなし。それでも一番「絵」が観えるのはひとえに達さんの表現力の賜物だと思います。時間と空間の操作もお見事、流石です。

廃墟文藝部「私は小綺麗なゴミ箱」
コメディ回、にならなかったのはこの人達が最後に出てきたからですよ廃墟文藝部。
反射神経や即興性や或いはフィジカルな部分だったりが印象的だった前述の三団体と、結果的に「計画と構築」で臨んだ廃墟文藝部の組み合わせって凄くバランスが良いというか。廃墟文藝部にここで〆て頂いてイベントとして一週目は大変美しく終われたのではないかと、そう思っています。
そして正直に申し上げるとすいません、廃墟文藝部、ほぼほぼ初見だったんですよ。で、前々から「名古屋の若い人達から支持される」とか若い人の口から直接「廃墟が好きです」と聞いたりしてたんだけど、成程成程、これはそうかもわからんね、と。別にこれは若者好かれそう=若者以外には好かれない、って事ではなくて。あの瑞々しい感じとか切ない感じとか、それが綺麗に収束していく感じっていうのは思春期の感性のそれですよ。主宰のコン太君、そういう感覚をそのまま脚本や演出に落とし込む精度を意識してるんじゃないのかなって思ったりもするんですけれど、どうですか。違いますか。

二週目
未来永劫可愛い「わたしひとりだけが尊い」
観劇直後に作り手の人と話したくなったりする事って誰でもあったりすると思うんですけど、今回特にここが強烈で。
やがしろのりこさん、一体どういう心境でこれを書いたのか、と。
詳しくはここで言及するのもオツじゃないのでやめるとするけれども、この作品って女子の精神とそれに深く関わる肉体と存在と、女子そのものを(かなり極端な物言いかもしれないけど、これ)描いた作品だったと思うんですよ、限定的な状況ではあるけれども。だけども凄いなあ面白いなあと思ったのは同時にこの上なく(ある種の、これまた非常に限定的な)男性を描いた作品だなあというところで。僕も全く同じではないですけれども非常に限定的な体験がないわけではなくて、それに対して自分なりに思索をしたりもするのだけど、こんなに自分達の事を理解しており女子目線で一つの回答を突き付けてきた作品が今まで他にあっただろうか、と感銘さえ受ける程でありました。
お見事。

オノウチ規格
僕はね、緻密に表現されてテンポ感もちゃんと計算されていて気付いたらノセられていてきっちり掌で踊らされちゃっててああ楽しかった!みたいな作品が大好きなんですけれど、こういう剥き出しの精神性とそれを活かす演出で襲ってくるような作品も嫌いじゃないんですよ。むしろ人ってバイオリズムによって嗜好が変わるじゃない、そういうのによってはこういうのしか受け付けない時だってあるわけで。
オノウチ規格、恐らくこの日の中では最も賛否両論わかれそうな作品、演出だったわけなんですけれども僕はオノウチさんって、きっと「怖い」人なんじゃないのかなってなんとなく思ったりもした。冷静にあれを作っていたんだとしたらなんたる純度。孤高であり続けるつもりか、と。
許されるならばどこまでが計算なのか、ちょっとじっくり問い詰めたいくらいのモチベーションであります。でももし全てが計算だとするならば、僕はそういう事する人大好きだよ。

舟橋孝裕「地球より愛をこめて」
僕ですね。作り手として書きますね。
当初浮かんでは消えていった雑多なアイディアの中から明確に「こういうのやりたい」と今回の脚本が頭の中でなんとなく形になりかけた時に妄烈キネマレコードの芝原君と一緒にやりたい、と強烈に思って。でも本公演前だしなあ絶対忙しいよなあ、とダメ元でお誘いしたらまさかの意欲的なお答え頂きまして、舟橋歓喜。稽古や物作りに対する姿勢も(勝手ながら)通じる発想があるのでは、と思っているのだけど(あと反射神経が滅茶苦茶早い、というかギンギンしてる)、彼とそこまでガッツリ組んで一緒に作品作りに向き合えた事をまず感謝します。芝原君、君との共同作業は最高に楽しかったし、今回大いに楽しませて頂きました、有難う。
さて。
前回やってみてからなんとなく自分の中で「作演に集中したいんじゃないだろうか俺は」という思いが漠然とあって、で今回は結果的に確かめる事となったな、と。やっぱり脚本を書きながら見えてくる光景っていうのがあってそれを役者さんと作る際に生まれてくる差異、これが面白いわけでその差異を時には膨らませたり時にはスマートにしたりっていう作業や、Aという地点にいってほしいなあと思っている時に「Aいって」ではなくでは何をどう役者に伝えるのか、その匙加減で演技が変化したり場が煮詰まったり大きく動き出したりする、そういうのも面白いなあって思うんですよ。
今回でいったら芝原君には「ハリウッド的な感じ」とか「キメ台詞はキメ顔で」とか「空間を作るつもりで」とか「めっちゃいい」とか「最高」とか、まあそういう本当に漠然とした事しか言ってないんだけど芝原君の演技で僕は大いに興奮したし、やっぱりそういうのって尊いものだなあと思う。
こういうのがあるのなら僕は舞台に出なくていいなあと思う(自分に自分で演出がつけられるようになったら面白いだろうに!)わけなのだが、でも場を和ませる必要とかあるわけでじゃあフリートークしましょうとなるか生来の出たがりが作用して大いに喋る、となってしまったのでした。
前述の菊地さんと音響をお願いした金森君(MoNoSiRo)、本番当日までが仕事の九鬼君との作業も大いに楽しかった。漠然とした注文を具現化し、かつそれを本番ではジャズ的な感覚で扱ってくれる二人はとても一緒に物作りしやすいチームでした。
新栄トワイライトって前回はデビュー戦で今回は修行の場、みたいになったのだけど今回はきっちり悔しい思いもして願ったり叶ったり、だ。面白かった。もっと面白くなろうっと。

演劇組織KIMYO「スーア・ジ」
開始数分で身を委ねる事が出来る(=ノレる)というのは、全ての表現に於いて素晴らしい事である。
安心感、というと容易い言葉になるけれどもそれを作るという事が如何に難しいか!勿論安心感は表現物に於いてはマストではないのだろうけれども、開始一分でノセてそのまま最後まで楽しませきってくれるっていうのはクレバーであり、かつ経験値とそれに対する適切なフィードバック(それらを適切に運用する事を人は才能、と呼ぶのではないだろうか)を経てきた人でないと出来ないんじゃなかろうか。
宮谷さんが21歳で書かれたという今回の「スーア・ジ」、観劇中は感嘆する暇さえないくらい笑いながら観てたもの。心地よいテンポ感と練られたやりとり、そしてそれを適切に素敵なタイミングでフィジカルで表現する役者、嗚呼、「面白い」作品のスマートな形がここに。
普通にファンみたいな感想になってしまったけれども、ええ、そうなんですよそう思ったんですよ。

というわけでザザザッと各団体の感想(+自分の思い出話とか)を書き出してみた。
場内でお配りしたアンケートも目を通しております。個人としても、運営としても励みになっております。
きっと他の運営メンバーもそうでしょう。気分屋だったりそもそも個人個人が動き回ってる運営メンバーですが、反省会やそれぞれ思った事など話し合って、次に繋げていきたいと思っております。
最後に重ねて、有難うございました。


いやあ、面白かった。またやりたいなっと!!

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