前日にこんな日記を書いたものだから、妻と娘が寝静まった金曜夜の21時30分、何か活動的に動き回らないとなという気持ちになっていた。
さて、どうしたものかと暫時考えて高橋君(鈴木実貴子ズ)に『ドライブ行こうぜ』とLINEを送る。これで高橋君からの返信が乗り気でなかったら家で大人しく映画でも観ながら風呂にゆっくり浸かるつもりだったのだが、幸い『いいですよ』と返信があった。
というわけで高橋君と急遽ドライブ。
一連の流れでさもこれまでもそういう事があったかのようだけれども、実は人生でこの日を含めてまだ2回目である。
あてどなく走るドライブも楽しいものだが、どうせなら目指す場所があった方が俄然楽しい。街中を走るには気分ではないしでは、では滅茶苦茶遠方に行くかというと多分帰路で眠気に襲われる気がしたので適度な距離の目的地を設定する必要があった。
高橋君を迎えに行きながら思案する。この夜の目的地はすぐに思いついた。
王滝渓谷にしよう。
王滝渓谷は以前娘と偶然辿り着き、軽い登山と散歩で結構満足度が高い時間を過ごせたのであった。近くには廃ホテルもあったし深夜に行くとまた趣もあるだろう。
車中の会話は特に真面目な話でもなく、世間話というよりかはちゃんと質量があるけれども、かといって特にこの夜にする必要があるというような会話でもない、そんな感じの会話だった。高橋君は聞き上手なイメージがあるし実際そうなのだけれども、反面話し上手でもある。爆笑を誘う小粋なトーク、とかではないけれども話していて面白い人である。
そんな会話をしながら、王滝渓谷には1時間程で到着した。
以前は昼間に足を運んだ王滝渓谷だが、夜中に到着すると全く雰囲気が違うというか当然のように真っ暗で、先が見えない深い闇に根源的な恐怖を刺激された。
到着前こそ「ハイキングコースがあるんだよ」「お、登れたら登っちゃいますか」「夜景が綺麗だろうねえ」だなんて気楽な会話を交わしていたのだが何のその、そんな危険の行為に身を投じる気にもなれない雰囲気なのであった。
王滝渓谷の駐車場はトイレがあり、娘と行った時には娘のトイレと僕の腹痛をここでどうにかした記憶があるのだが、いやー夜中には足を踏み入れる気にさえならない「そういう」雰囲気たっぷりの場所なんですな。
高橋君は特に怖がる気配もなく「うっわー、ここいいなあ!マイナスイオンっていうんですかね、そういうの滅茶苦茶出てる気がしますねえ」だなんて言いながら喜んでいる。
この写真はそんな深夜の王滝渓谷に癒しを感じている高橋君の図だ。さながらホラー映画の如く、である。
当然ハイキングコースは登れるわけもなく、駐車場で車を降りて10分程滞在して王滝渓谷を後にした。夜中に来るもんじゃねえ。
帰りがけには以前見かけた廃ホテルの前を通った。日中でさえ感じるものがあるというのに、夜中に前を通るとまるっきり心霊スポットなのであった。実際帰宅してから調べてみたら『王滝楼』といってかつては相応に大規模なホテルだったようなのだが、1999年に廃業、以降はそこに住み着いていたホームレスが遺体で発見されたり半ば心霊スポットみたいな扱いになっているようであった。
高橋君、嬉しそうに写真を撮っていたけれど。
今度は日中に登山をしに行きたい。