娘と突発的なプチハイキング。

妻が仕事関係の勉強会があるというので、会場であるホテルまで送っていきがてら、そのまま娘とドライブに出掛けた。
勉強会はたっぷり3時間程、帰りがけに妻をそのまま迎えに行く事を考えると結構、時間がある。そうだ、香嵐渓の方に向かってみようと思いついた。紅葉の季節は終わってしまっているが、行って美味しい空気を吸って帰ってくるのには丁度良い時間になるんじゃなかろうか。何なら猿投辺りで五平餅を食べるのも良い。ひとまず下道で香嵐渓の方へ向かう事にした。

カーナビの指示通りに豊田方面から香嵐渓に向かっていく。コンビニで休憩を挟みつつ、娘と他愛もない話をしながら走っていく。天気も良いしなかなか気分が良い。
と、もうすぐ猿投というところで気になる場所を見つけた。
『王滝渓谷』という場所で、駐車場もあるところから察するに相応なハイキングコースなのではないか。
ピンとくるものがあったので引き返して駐車場に車を停める。「降りて少し、歩いてみようか」と娘を誘うと娘も乗り気なようだった。


写真は途中で撮った地図なので『現在位置』の表示こそ違うが、王滝渓谷近郊の地図である。
一番下側の『王滝渓谷入口』の駐車場に車を停め、娘と地図を眺めていると『6 ふくろうが城展望台』が最寄りのスポットであるようだった。「展望台だって、行ってみようか」「うん!」という事で向かう事にする。
階段を登っていくと立札で「展望台までは急な上り坂が続きます。ご自身の体力と健康状態に向き合った上で向かってください」云々と注意書きが書いてある。地図で見ると結構近場だし、まあ行けるでしょうと軽い気持ちで登り始めたのが間違いであった。


結構、しんどい道が続く。
登り始めて5分くらいは「空気が美味しいねえ!」「来て良かったねえ」と娘に声をかけていた僕であったが、そのうちずんずん登る娘に「ちょっとゆっくり行こうか」等と声をかけるようになる。写真は一番見晴らしが良い上り坂の部分であるが、結構このレベルの上り坂がクネクネと続くのであった。
展望台までは約1キロという。割と登ったかなと思った時に、残り400メートル程、展望台まで距離があるとわかった時は結構暗い気持ちになったね僕ァね。
しかし、どうにか展望台まで登り切った。
展望台はやぐらのようになっており、結構レトロな作り。いやまあハイテクなものを期待していたわけではないのだが、サイズ感的にも結構こじんまりとしたものであった。それにしても眺めが良い。来た道の方を振り返ると、おお、結構登ってきたんじゃないかと驚いてしまった。
先に到着していた若者達が「高いねー」「ねー」と話している僕と娘に気を遣っている様子だったので早々に展望台を後にする事にした。

で、来た道を引き返すのも「あの急な道を下るのか」と暗い気持ちになるし、娘も「こっちに行こう!」と元気一杯なのでそのまま下山ルートに進む事にする。
この段階で先程駐車場で見た地図は自分の頭の中では都合の良いように書き換えられ、そのまま行けばより王滝渓谷の深いところに行く事になるにも関わらず「駐車場の近くまで戻れるだろう」くらいに思い込んでしまっていたもんだから、つくづく自分の記憶力はあてにならない。
下山していくと畑があり民家があった。土地が広いのか、豪邸ばかりでその佇まいに舟橋、背筋が伸びるようであった。
で、なかなか「あ、駐車場近いね」という景色が見えてこない。どうしたもんかと歩いていると地図が見え、すかさず写真に撮ったのが一番上の写真。一番最初の写真の『現在位置』にいるとわかった時、流石に舟橋、ちょっと焦ったものよ。
想定と全然違う場所にいるもんだから、これから下手に歩き回ろうもんならどんどん駐車場から離れていくぞと理解したというわけ。軽い散歩くらいの気持ちで歩き始めたものの、結構なハイキングコースを歩いていたので相応に疲れていたし、妻を迎えにも行かなければならないしでこれより先は慎重に歩いていく事にした。
地図を頼りに、まずは中之瀬大橋を目指して歩いていく。


中之瀬大橋がまた、慣れてない僕のような人間はちょっとビビッてしまうような吊り橋なのであった。
それにしてもこの写真、画質の補正も相まって何だかホラーっぽいな、ちょっと。


橋の上からの景色。
高所恐怖症というわけでもないのだけれども、結構な高さだと認識した瞬間に腰が引けてしまった。
「凄いー!」と娘の方が景色を楽しむ余裕があったようだ。流石。

中之瀬大橋を渡った後は左折、舗装された道を下っていく。
王滝橋を渡った辺りで便意がこみ上げてきた。娘も「パパ、おしっこ!」。絶体絶命のピンチである。頼りになるのは駐車場のトイレだけだ。
速足で「1、2!1、2!」と声を出しながら下り坂をずんずん行く。トイレが見えた瞬間に走り出してしまった。
無事、娘とともに難局を乗り越え、あとはもう道なりに行くだけだ。
もうすぐ渓谷入口、というところで民家が出てきて迷った挙句遠回りを選んでしまったが、無事に「あ、ここさっき車を切り返したところだ」という場所まで出た時の安堵感と言ったら!この段階で妻の勉強会が終わる予定時刻の15分前。これはもう絶対に間に合わない。帰りは高速道路を使って帰ろうか、と駐車場に向かって歩いていると結構趣のある廃墟が出てきた。


その昔、夜な夜な廃墟を見に行ったり心霊スポットに近付いたりするのが友人達と流行った時期があったのだが、その時期にこんなような廃墟を見た気がしないでもない。夜の事だったので定かではないが、車通りが結構ある道路沿いに、これだけの廃墟が残っているのも何だか感じ入るものがあった。ホテル、だったのかなあ。そんな感じがするなあ。

何だかんだで娘も楽しんだ様子だったし、良いハイキングになったなと思う。
どうせなら今度はお弁当でも持って、妻と娘と3人で臨みたいものだ。
王滝渓谷、ちゃんと心構えを以て臨めばもっと楽しめそうな気がする。