「お汁粉の不思議」の巻

2月という事でそろそろ3月、そして4月を意識してもおかしくない時分となった。

冬が終わって暖かい春への期待(何故かわからないが、若干気持ちが浮き立つ。そういう季節だからしょうがないと思っている)を膨らませると同時に、“冬の味覚”との別れを惜しむかのように胃袋は不平不満を訴える。「もっと食わせろ」と。

冬の味覚といえば、鍋におでん、シチューにグラタン、クリスマスなら七面鳥、フライドチキン、お正月なら雑煮に御節。それらを貪り、楽しんだ季節への惜別の念が頭を、いや、胃袋を刺激する。

僕の場合、今年の冬は例年と比べ圧倒的にお汁粉を楽しんだ年だった。

お昼御飯にお汁粉、仕事中に甘いものが欲しくなれば今の時代は便利だ、自動販売機でお汁粉が買える。そして夕食後にお汁粉。流石に一日三食お汁粉を楽しんだ事はないけれども、ふとした瞬間にお汁粉を食べた記憶が残っている。

甘くて温まる、そしてどこか懐かしいお汁粉の味は今年の冬の味覚、甘味部門ではぶっちぎりで一位を取得するだろう。

続・我が逃走

それにつけてもお汁粉というのはシンプルなようで随分と奥の深い料理だと思う。

小豆豆を砂糖で甘く煮るというシンプルな調理法(それ以降、の事は後述する。お気持ちはわかる、しばしお待ちを!)故に、甘味処ごとに、レトルト食品メーカーごとに味が違うのである。小豆豆のホクホク具合も当然違う。

どこのが好きだとかそういうのは特にないのだけれども、自動販売機で買った缶のお汁粉はなんだかやたらスッキリしているなあと思った。缶を繁々と眺めると「スッキリした甘さが特徴です」と書いてあった。本当に、その通り!

さて、ここで疑問。

お汁粉というのは飲み物なのか、食べ物なのか。お汁粉を「飲む」とも言うし、お汁粉を「食べる」とも聞いた事がある。どちらも特に違和感はない。お汁粉はよほど小豆豆がふんだんに使われていない限り、流動食状の部分の方が多いはずであるからだ。しかし豆をメインと据えるのであれば「食べる」という表現もまあ、おかしくはない。ポトフとお汁粉を同じように捉える事も出来なくはない。お汁粉の豆って美味しいしね。

お汁粉を飲み物とするか、食べ物とするかはお汁粉に何を期待するのかで違ってくるのだろう。

さて、お汁粉をwikipediaで調べると「小豆豆を砂糖で煮、餅や白玉団子、栗を入れた料理」と書いてある。ここで違和感。お汁粉って、何も具が入っていないものなんじゃあないのか。先程調理法のところで「小豆豆を砂糖で煮る」と書いたが、それ以降の「餅を入れる」だの「白玉を投入する」と書いていないのは、つまりそういう事だ。

それをやったら、ぜんざいになるんじゃないのか?

その区別は一体どうやってつけるのか?

悶々するので調べてみた所、「ぜんざいとお汁粉の違い」というそのものズバリな解説を発見、以下、一部引用。

一般的に、関東の場合は小豆あんの汁物全般をしること呼び、区別するなら、粒なしのものを御前汁粉、粒ありなら田舎汁粉と呼び分けています。

これが関西になると、粒のないものをしるこ、粒があるものをぜんざいといいます。

関東でぜんざいといえば、餅などにあんを添えたものですが、関西ではこれを亀山と称します。

また餅の形や火の入れ方、口直しなども地方によって違いがあるようです。


成程。

もし貴方が全国の甘味処を廻るご趣味がおありなら、「お汁粉」を頼む際はどのようなものが出てくるか店員さんに確認した方がいいかもしれない。

…ここまで書きながら缶のお汁粉を一本空けてしまった。書きながら温度がどんどん下がってくるお汁粉を啜りながら、数ヶ月後の春に思いを馳せた。

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