高熱サウナの中、いるのは僕と、なんとも綺麗な和彫りの入った若い衆7人だけである。
「久しぶりにサウナでもどうですか」と友人に誘われ、しかし友人が贔屓にしている銭湯は残念ながら定休日、以前行った事のある先頭が最寄り場所から最も近い営業している銭湯だったのでそこに行く事にしたのだった。提案こそしたものの、前回行った際に水風呂の温度が高めだった事が引っかかっており、再来訪も一瞬迷ったのだが折角の友人との機会だし何より友人自身がまだその銭湯に行った事がなく、興味津々だったようなのでそこに行く事にした。
入店すると脱衣所で和彫りの入った若者達と出会う。
見た目こそ物々しさを感じさせる彼らの半裸姿だけれども経験上、そういう人達の方がよっぽど平時は紳士的であるとわかっているので和彫りのインパクトにこそ驚きはしたが、必要以上に怯えるでもなく浴室に入った。
この銭湯は風呂桶が木である。それが特徴の一つで、歴史を感じさせるロッカーと店主夫妻と共に古き良き時代(書きながら思ったが無責任な言葉だ)を思い起こさせる。
今日はサウナだ、サウナに用があるのだ。木の風呂桶には目もくれず、頭と体を洗うとサウナ室に直行した。
熱い。
水風呂こそ緩かったものの、このサウナは「高温サウナ」と謳っているその言葉に嘘偽りなく、熱い。水風呂は冷たければ冷たい程良く、サウナは暑ければ暑い程良い。
汗を流し、目眩を軽く感じたのでサウナ室を出る。シャワーで汗を流しすかさず水風呂へ向かう。
「!?」
水風呂の温度計は13度を示している。
記憶と違う、もっとぬるかったのではなかったか。
足先から一息に肩まで水風呂につかると、なんともまあ、良い具合の温度なのだった。体の芯まで冷えて思わずニヤニヤしてしまう。はたから見ると随分と怪しい様子だがそのままサウナ室に直行する。
サウナ室に入ると熱波を感じたものの、水風呂で芯まで冷えた体はむしろそれが心地良く、高温である事も痛快に感じられる。
木のベンチに水をかけて腰掛ける。
いやあサウナって良いもんだなあ。部屋に備え付けのテレビでは筋肉自慢の若者が運動能力を競い合っている。
するとドヤドヤと先程の和彫りの若い衆がサウナ室に入ってきた。
こうして冒頭の状態になったというわけ。
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