firefox ミニ・ベースギター

 僕がいた。名前は舟橋孝裕。

続・我が逃走

このニヤケ顔の冴えないのが僕。小鼻を膨らませて興奮しているように見えるけど、別にそういうわけじゃないんだぜ。僕の鼻が上向きについているのは生まれつきで、それは決して僕のせいでもましてや僕の両親のせいでもないんだから。言ってしまえば僕の鼻って、多分僕の上昇志向の顕れなんじゃないのかな。

話が逸れたね、写真の僕が抱き抱えているのはエレクトリック・ベースギター。

この日手に入れたばかりのもので、その悦びから僕はこんな顔をしているってわけ。後ろにも楽器が写っているけど、これは職場だから。この写真は所謂就業時間中の暫時の息抜きってわけ。

で、だ。肝心のエレクトリック・ベースギターなんだけど聡明なる読者諸兄は既にお気づきかもしれないけれど、ちょっとばかし一般的なベースギターと比べると小さくないかい?

そうだね、僕達の庭先にあるようなベンチ、そんなベンチで野球中継を聞きながら齧る母親お手製のハンバーガーと、冷凍食品売り場で売っているシケたそれくらい大きさに差があると思う。

そう、これはショートスケールでボディも小さくて可愛い『ミニ・ベースギター』って奴だと思うんだ、多分。正式名称なんて知ったこっちゃないけれど、だってこれってそういう風にしか形容できないんだものな。

こんな珍品をどうして手に入れたかって言ったら、お世話になっているエレクトリック・ギターの先生が「これあげるよ」ってな具合にポンとくれたんだ。その先生とは普段から親しくお喋りさせて頂いてたのだけど、まさかこんな素敵な贈り物をして下さるだなんて思ってもみなかったから僕、目を白黒させてしまったな。

聞いたところによるとこのミニベース、先生の昔のバンドメンバーが拾ったものらしくって詳細はほとんどわからないらしい。ヘッドには『firefox』って某社を意識した字体で書かれているけれど、どうやら70年代の日本製みたいだ。ピックアップは純正じゃない。スプリットコイル・ピックアップが積んであったと思しきザグリ跡が残っているだけで、今は得体の知れないピックアップが強引かつ素晴らしく合理的な取り付け方で搭載されている(ここはこのベースの最大のチャームポイントだと思うんだ)。

肝心の音はというと、悪くないんだな、これが。なかなかどうして侮れない。皆の周りにもいたんじゃないかな。背はちびっこい癖にやたら喧嘩の強い奴だとか、ガリガリに痩せているのにかけっこが早い奴とか。このミニベースもまさしくそんな感じで、テンション感もショートスケールの割にはしっかりしているし、低域も不足なく出る。

率直に言ってしまえば『アタリ』な一本だと思う。

いやいや、僕は本当にラッキー小僧だ。

先生に感謝してもしきれないよ!

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