呼吸を感じた日の話。

3月3日、神戸に遠征。

遡って、去年のある夜の事である。
twitter上でやりとりをしていた関西在住の女の子からダイレクトメッセージが届いた。
読むと、相談があるので連絡先を教えて欲しいとの事。丁寧な申し出だったし無闇やたらにそういう事を言う人ではない、とそれまでの交流で十二分に理解していたし、イベントを主催しているという彼女に関する僅かな知識がその「相談」の内容を自然と連想させたので背筋を伸ばして返信。
数分後、通話するに至った。

(前略)
「…で相談というのはですね。明日、照らすのレコ発企画の神戸場所をやりたいと思いまして」
「はい。アルバム出ますものね」
「パイプカツトマミヰズさんにご出演頂きたいと思いまして」
「はい。…って   な  ん  だ  と  !  ?」

イベントの出演オファー順、それに優劣や思い入れという観点で意味があるとは僕は考えていない。それでも明日、照らすのレコ初企画として彼女はどうやら真っ先に僕達に声をかけてくれたらしいのだ。両バンドをご存知の方がいらしたらすぐにおわかり頂けるだろうが(もし明日、照らすをご存知ない方がいらっしゃるのならばリンク先にとんでご覧なさい。或いはYOUTUBEにMVがアップロードされているから視聴してご覧なさい)、この2バンドを真っ先に出演バンドとして決めにくる彼女の感性というものに僕は大いに驚かされた。しかしそれ以上に、嬉しかった。
落ち着いて話を聞けば、彼女の考えている趣旨というのは実に面白いものだったし、そのイベントが面白いものになるというヴィジョンを僕も確かに持った。メンバーの予定を調節して、多少なら無理してでも調節してお返事致します、と応えて電話を切った。
沙樹ちゃんの企画に僕達が出演する事になったのはひとえに彼女のその発想、情熱故である。名古屋にも度々やって来た彼女に、僕はパイプカツトマミヰズをはじめ他のバンドの演奏も披露したし、新年早々挙行した演劇公演も彼女は見ている。出演する側として主催者との密なコミュニケーションって、大きな安心要素。
何の不安もストレスもなく、僕達大いにイベント当日、楽しみました。お陰で良い演奏も出来たし、沙樹ちゃん本当に有難う。

そして明日、照らす。
JONNYとしてはレーベルメイトだけれども、まさか神戸の街で彼らと対バンするとは思わなかった。今まで何度もライブを見てきたけれども、この日は遠征先だし自分達の演奏後に愛犬が亡くなったっていう知らせを聞いて妙にセンチメンタルというか、何だかスンッとした気分になっていたのでこの日の明日、照らすは自分の反応も含めて本当に楽しみだった。何なら今までで一番楽しみだった。レーベルメイトとしても実は村上君っていう存在は一番意識している部分もあるし、アルバムを出してそのツアーで回るっていうタイミングでの神戸での共演は僕は本当に楽しみにしていた。転換が終わって、あとは演奏が始まるっていうその時間、フロアの後方、中央辺りに陣取って今か今かと演奏が始まるのを待っている僕は何であればただの一ファンだったに違いない。そして周りにもそういうバンドマンが大勢、いた。

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この日の明日、照らすの演奏は素晴らしいものだった。一本筋の通った音楽と言葉があれば他には奇をてらったパフォーマンスも、爆音も、ギミックも何もいらない(それらがある事が=弱さだったり誤魔化しである、と言うつもりではない。決してない。それとこれとは別の話である)、ちゃんと人の心を打つ音楽として成立するのだな、と改めて見せつけられた。
ライブ終盤にふとフロアを見回すと目を潤ませたり泣いているお客さんが何人か見受けられた。その人達が何に泣いていたのか僕にはわからない。きっとそれぞれ違った理由だったり違った感性が反応しての涙なのだろう。
それって、純粋に凄い事だよ。少なくとも今の僕には出来ない。
改めて、アルバム発売おめでとうございます。
持ち時間押して申し訳なかった。お互いもっと強くなったら、また一緒にやりましょう。

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この日も同行してくれたヨシダユキ先生が写真を撮影してくれた。先生いつも有難う。
楽屋で上裸で過ごしていた吉田君に皆が興にのり、半ば無理やりそのまま演奏して貰った。プロレスラーみたいな体型で面白かったんだもん。
初めての神戸上陸となったパイプカツトマミヰズだが、特に何も考えずにフラッと出て行って「こういうライブをしよう」とか考えずにその場その場でベストを尽くした結果、良いヴァイヴスが出せたと思う。全身全霊でふざけるこのバンドの演奏者達の面白がり方が十二分に発揮されたのではないだろうか。気負う、という言葉はこのバンドには似合わない。「今日は頑張ろうぜ」とかはあっても良いのかもしれないが、変に熱くなったりそこに殉じようとするよりもただただ格好良いと思える曲を作って面白いと思えるライブを脊髄反射でやる。そういうこのバンドの楽しみ方をより強く自覚した結果となった。
演奏後、前夜のスタジオ練習からそのまま神戸入りした疲れもたたってかボロボロになって会場隅のソファに座った吉田君の横に腰を沈めていると、30秒近く黙った後で突然こちらを向いて「ウケたね」と一言。
ああ、本当にそうだね。やった、感が強いライブだった。極めて誘導的ではあったけれども、出番3組目にしてアンコールのリクエストを頂けるだなんて思いもしなかったものな。

良い夜だった。新しい出会いと、そして今後に繋がる縁と確かな充足感と、呼吸を感じた夜。
沙樹ちゃん、本当に有難う。

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村上君と沙樹ちゃん(の手)。
しかし村上君、ライブ中の発言をそのまま端的にブログに書くのはやめてください。
僕が悪者になってしまいますよ!

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