夢日記2

以前夢日記を書いたが 、久しぶりに鬱屈した夢を見た。

終盤はどうにも夢見が悪く、何だか自分の本音を覗かされているようで心持が悪いのだけれども、それ以前はまあ何というか適度にエロティックで猟奇的で、丁度暇潰しに描写するには具合が良いので再び夢日記を書いてみようと思う。

悪友と『僕』は密談していた。

良い年をした男性二人が、何故小学校の校庭、しかも運動会が挙行されている真っ最中に校庭の隅で密談しているのかは、まあ夢だからとりとめがないとしか言いようがない。

そして『僕』はと言えばこれから起こる事を想像してただただニヤニヤしている。これから起こる事というのはこのエントリーで後々記述するから置いておくとして、兎も角『僕』はこの夢の中ではとんでもない変態野郎である事にはこの段階では間違いなかった。

さて、密談が終わると『僕』と悪友とは二人してコンクリート敷きの犬走りを歩いていく。

身長程もある植え込みで、校庭から隔絶されている犬走りは校務のために走り回る教職員と、父兄のみが移動のために使うばかりで(「先生、次の種目は何でしたかな」だの「うちの○○の出番はぼちぼちだぞ」だのそんな会話が飛び交っていると思えば良い)児童の姿は見られなかった。

尤も、植え込みを通じても伝わってくる催し物特有の熱気、喧騒、そしてその中聞こえてくるホイッスルやスターターピストルの爆発音がここは紛れも無く運動会会場であると教えてくれる。

悪友と『僕』は人を縫って若干猫背気味に歩いていく。太陽の陽がサンサンと降り注ぐ中、ある種の決意を胸に日陰者が歩いていくのは、何だか非常に似つかわしくない。犯罪を決意する人間はそれらしくするべきだ。犬走りではなく校舎裏を歩くべきだし、日向ではなく日陰を歩くべきである。

目の前に女子高生が立っている。予定通り彼女はそこにいた。

しかして、小学校に女子高生、是如何。

彼女は自分の弟、或いは妹さんが出場しているという事でこの運動会に来ているのだろうか?

ご丁寧にも制服で?それこそが自分の女子高生たるアイデンティティだといわんばかりにか?

見る者が見れば、説明の手間を省くためだけに制服を着るという一昔前の映画・ドラマ的な発想に胡散臭さと古臭さを感じるだろう。これは僕の夢なので何とも仕様が無い。思うに、僕は古臭い人間なのだろう。

で、最も不思議かつ、僕の夢らしいなと思える点がその件の女子高生、僕が実際に送った高校生活で共に学び共に青春を謳歌した元クラスメートその人である。彼女が女子高生ならば僕も当然男子高校生であるはずだし、そうあるべきなのだが残念ながら僕は現在の年齢かそれ以上であり、ここに時間の歪みが発生している。まあ詳細は夢なのだから、いいか。

兎も角、悪友と『僕』は周囲に人気がないのを確かめた上で(夢なんてものは一瞬で人がいなくなるものだ)彼女に声をかけると、彼女を用意していたビニールロープで絞め殺した。

通常、人間を紐で絞め殺すには相応の時間がかかるはずなのだが(ピンポイントで頚動脈を圧迫すれば気絶するように殺害できる、と昔モノの本で読んだ事があるけれども、まあとにかく)彼女は苦しまずに、一瞬で死んでしまった。ご都合主義ここに極められり。

凡そ絞殺という、結果的には見苦しいものになるはずの手段を躊躇う事なく行使しておきながら彼女の死体はまるで眠っているかのように静謐で静かなのであった。

悪友はビニールシートを持ち出すと彼女をその上に横たえ、シートでグルグルまきにした。エジプトのミイラの製造過程を現代風に再現したところを想像して頂ければ、丁度『僕』が目にしたものと重なるであろう、悪友と『僕』は彼女の死体を二人がかりで持ち上げると、えっさほいさと運び出した。

ビニールシートで包んであるのが功を奏したのか、それは端から見れば運動会で使う重機を運んでいるようにしか見えなかったであろう(※:これは勿論夢の中だから成立するのであって現実的には怪しい事この上ない。ご都合主義もここまでくれば見事なものである。思えばリアリティのある夢をいうものを見た事が、ない)。

『僕』達は小学校の駐車場に泊めてあったハイエースまで死体を運ぶと、荷室スペースに死体を横たえた。

悪友が運転席へと潜り込み、そのままエンジンをかける。

車が小学校を出たのを確認すると『僕』は、ほんの少しの不安と相当な後悔を胸にビニールシートを彼女の体から引き剥がし始めた。

後悔。およそニヤニヤしながら女子高生(しかも実際同級生)を絞殺した人間が抱くには相当な違和感のある感情だが、『僕』の胸の中はその違和感ある感情で一杯だった。夢の進行上どう考えてもこれは殺害目的ではなく、彼女の死体こそが目的の凶行だと思われるのだが、一体何が何なのやら。

小心者はやっぱりどこまでいっても小心者。夢の中ですら僕は「成りきれない」男で、最低な死姦魔にすら成れない。捲れあがったスカートからのぞく美しい肢体(死体の肢体、なんちゃって)はシチュエーションもあいまってか扇情的ではあったのだが、即座に貪りつく程『僕』はアレではなかったようだ。つくづく良かった、と思う。

同級生を殺して、しかもその死体を汚した夢なんて見た暁には僕はフロイト風に自分を分析して悩むだろうし、そもそもこんな風にエントリーに書けやしないだろうから。

だから『僕』は彼女がその両の目を再び開けた瞬間、驚く事よりも先にまず喜んだのだろう。

眠っているように死んでいた彼女は、眠りから覚めるように生き返ったのであった。僕の夢だから『僕』が主役、悪友はその段階でお役御免、リアクションも何もなくただの運転者に成り下がっていたので、彼女は『僕』しか見なかった。自分がどこにいるのか、自分がどうなったのかすら然程興味がないように、彼女は『僕』に普通殺すかなあ、と苦情を申し立てた。

いやいや申し訳ない、と妙に間の抜けた答えを返す『僕』。どうにか一度は殺してしまった彼女の機嫌を繕おうと試行錯誤した甲斐あってか、生き返った彼女の気分も良くなったようで、彼女は昔から変わらぬ素敵な笑顔で微笑んだ。

この後『僕』と彼女が巻き込まれる居心地の悪い展開は僕の人間の情けない部分を露呈する事になるので割愛。

僕としては(『僕』としても)この夢日記がフィクションなのかノンフィクションなのか定かではない、と保身のための防衛線をひいてこのエントリーを終了する所存である。

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