夏なので若干怪談。

どうも、稲川j、あ違った舟橋孝裕です。

皆さんこんなブログを読んでらっしゃるくらいだから、きっとアタシのバンドに多少でも興味があるのか、或いはアタシと個人的に知り合いなのか、それともまあ何となく惰性で読んでしまってる、きっとそれらのうちのどれかじゃあないかと思うんですけどね。

今日はそんなアタシのバンドのお話です。

まあいくらショボクレたバンドといったって3年間も活動してたら活動の成果を何がしか形に残したくなる。或いはバンドを始めたきっかけと同じで作品を作りたくなる。ま当然のようにアタシ達もそんな日が来たわけですよ。そうですねあれはバンドを初めて数ヶ月後の事でした。

仲間内で話をしていて、曲も何曲か出来上がったわけだしそろそろ録音、レコーディングをするには丁度良い頃合だって事になった。

「おい、そろそろいっちょ音源、作らないか?」

仲間のAとしましょうか、Aが言います。

「いいネエ面白そうだ。でもどこで録音する?」

Bが言います。

そう、レコーディングには専門的な技術と知識を持ち合わせたエンジニアの力が必要なんですね。勿論自分達で出来ればいいんですがアタシ達にはとんでもない、知識も腕もありません。で、丁度アタシの大学時代の先輩がレコーディングスタジオでエンジニアをやってるんってんでアタシ達先輩にお願いした。と先輩

「おおいいよォ、録音してやるよ」

で話はトントン拍子に進んで数ヶ月後にはCD出来上がっていた。勿論工場でプレス製作して貰うお金なんてないんでね、自分達でシコシコ手作りですよ。

出来上がった時はやっぱり皆嬉しくって「さあこれから頑張ろう」ってなもんです。

で、発売してからしばらくですよ。順調にCDも売れてアタシ達も無邪気にそれを喜んでたわけなんですが、ある日お客さんとそのCDの話をしているとお客さんが言うんですよ。

「やっぱり稲○、あ違った舟橋さんのやってるバンド、そういう気配出るんですね」

「気配?気配って、何です」

「お気づきじゃないですか?」

アタシ、咄嗟にCDに不備があったのかと思った。

「ごめんなさい!CDに何か不手際でも?」

「あーあー違うんです違うんです。CDそのものなんですがね」

お客さんそう言うと声を潜めて

「うちの母親ね、強いんですよ霊感」

そう言う。アタシビックリしちまって「えっ」と聞き返した。

「母親がね、霊感物凄く強いんですよ。何かあると必ず、見える。どれだけ微弱な気配でも感じちゃうんらしいんですね。その母がね、CDを持って帰った夜に『あんた何連れてきた!』っ物凄い剣幕で言うんですよ。で、机の上に置いてあるCDを見て『ああ、これか』って顔をしたんです」

「するってえと、何ですか。お母さんは僕達のCDに何かよくないものを感じられた、と?」

「そうみたいですねえ」

確かに、編集作業中にもパソコンがフリーズしたり、異音がしたり色々と起きてはいたんですよ。でもね信じないでしょう。アタシも何かイヤダナーイヤダナーって思いながらも「そんなわけはない。そんなわけはない」って心のどこかで笑い飛ばしてたんですね。ひょっとするとその話もお客さんにからかわれてるのかもしれない。

これでもアタシは現代科学の信奉者ですから、証拠がないと信じられない。

でもね、出ちゃったんですよね、証拠がね。

一枚目のCDを作って一年と少し後ですかね、アタシ達も随分と曲を作り貯めてて、またレコーディングに対する意欲がムクムクと頭をもたげてきた。

あ~録音したいあ~録音したいという欲求に忠実にアタシ達、またレコーディングに臨んだんですね。ええ、エンジニアは前お願いした先輩です。で折角二枚目作るんだからってえ事で今回は、工場に出してプレス製作して貰う事にしたんですね。この方が断然仕上がりも良いし自分達でシコシコ作る手間もかかりませんからね、勿論お金がかかりましたけど皆で頑張って用意しましたよ、ええ。

で今回はたっぷり時間をかけて録音した。作業は順調で仲間連中も骨身を削って作業に没頭しましてねえ。これだけ頑張ったんだから悪いものが出来るはずがないってくらいやりました。出来上がった頃には先輩も連日の作業で体がボロボロで「あー俺ぁ命を削ったよ」なんて。

でレコ発イベントってぇのかな、自分達で企画を主催しましてね、東京と京都から素敵なバンドさんを招待しまして地元の仲の良いバンドとアタシ達と4バンドで盛大にやりました。

有難い事にCDも結構売れましてね。アタシ達打ち上げでお酒呑みながら「いやあ本当にやって良かったネェ」なんて満足してたんですよね。

で、やっぱりしばらくしてからですよ。

仲間内のバンドマンが変な事を言うんですよ。

「いやあ淳ちゃんじゃなかった舟橋君、『地獄』のコーラス凄くいいね」

「だろう?皆に協力して貰ったんだぜ」

もうね、バンドマン冥利に尽きる話ですよね、自分達の作品を褒められる。悪い気がするはずがない。

でもね、なーんかおかしいんだ。なーんか話が噛み合わないんだなあ。『地獄』ってのはアタシ達の曲なんですがね、どうも彼が褒めている所がアタシの認識と違っている気がする。

なーんかおかしいと思ってアタシ訊きましたよ。

あんたが褒めてくれてるのは、どこのコーラスパートなんだい?って。

「何言ってるんだよ舟橋君。決まってるじゃないか。『この世は生きても地獄 死んでも地獄』のあとの『地獄!』に決まってるだろう」

・・・これ、おかしいんだ。入ってない。だって入れてないんですよ。入れてないコーラスが入っているはずがない。何かがおかしいんだ。

アタシ慌ててエンジニアさんに確認しましたね。ひょっとしたら編集のミスじゃないかって。

でもね、エンジニアさんも言うんですよ。ミスだとしても、録音してないコーラスが紛れ込むはずがないだろう、って。

いやあ、こういう事ってあるんですよねえ。

コメント

  1. y より:

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    気になったのでいま聴き直して見たら僕のにはそのやばいコーラスは入ってないみたいでした。内心安心しましたが作品のクオリティの高さに改めて恐怖することになりました

  2. フナハシ より:

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    うまい事オチをつけるコメント素晴らしい!
    有難うございます!