自分の歪み史に於けるマーシャルサウンド=GV-2

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こういう物言いをすると自分が年齢を重ねた事、更には「もう若くありませんよ」みたいな雰囲気を醸し出してしまって嫌なのだけれども、今の10代の楽器演奏家達も楽器をストラップで肩から吊り下げる際のその長さであるとか、ダウンピッキングでひたすらに弦を弾く、その際のBPMの早さ等で競い合ったりするのだろうか。
そういった行為が流行した記憶こそないけれども、何となくそういう要素で人に勝っていたいみたいな気概はひっそりと持っており、そこに正直に従った結果、否、そこだけに着目してしまったが故に今の僕のような極端に偏った演奏家になってしまったのは明らかである。もし万が一ここを読んでいる貴方が10代の演奏家であればこう忠告したい。
「バランスを崩せ、好きな事だけ追求せよ」
この生き方に後悔はないのであった。

さて、ハイゲインの追求というのは今も昔の一部の愛好家は徹底的に追及しているところではあると思うのだが、僕もベースギター
演奏を本格的に愛好し「これこそが自分のコミュニケーションツール」であると自覚する少し前からベースギターの音を歪ませる事に随分と情熱を注いできたものである。
低く、美しく豊潤で時に感応的なそれさえ感じさせるエレクトリックベースギターの音をエフェクトペダルでグッシャグシャに歪ませてやるのである。低域等バッサリカットされ、攻撃的なアティチュード「だけ」が声高に主張されるような、そんな音色を作っては悦に入っていた時期さえあった。バンドアンサンブル中で効果的に運用するためにはどうするべきか、そんな事を考えるのはもう少し後の話、兎に角歪ませる、オラオラ歪ませる、そんな時期が僕の超初期の歪みサウンドであった。

研究は発展し技術を向上させる。
僕は様々な先達の音色を研究してはそれをそのままパクり、自分のものとして取り込もうとした。当時僕が愛聴し、かつかくありたいと思ったバンドにRAGE AGAINST THE MACHINEがいる。このバンドのベーシスト Tim Commerfordはプレベのネックをくっつけたジャズベを指弾きしてブッ太い音を出しており、その高い位置に楽器を構えた立ち姿や「Tシャツかよ」と突っ込みたくなる程沢山入ったタトゥーも相まって大変威圧的で格好良いオーラを放っていた。サイクリングで指を骨折した後、指立て伏せを取り入れた徹底したトレーニングにより骨折前より太い音を出すようになった、との武勇伝も耳にした事がある。僕はこの生き方が自分とは正反対の、しかしブッ太く歪んだ音でグイグイ弾くTim Commerfordに憧れた。少しでも何かパクれないかと思った時に彼の「ガヴァナーディストーションは最高のディストーション」との発言を知ったのであった。

今思えばTim Commerfordの言ったガヴァナーは古い型のものだったのではないか、と思う。
僕がその発言を間に受けて購入した(いや、人から譲ってもらったものだっただろうか、何にしてもどのようにして手に入れたのか記憶が曖昧模糊としている)Marshall GV-2は多分彼が使っていたものとは違うのではないだろうか。
ただ、機材棚にさえ入っていなかったこのGV-2、サビだらけでツマミもちょっとユルくなっていたけれども大変良い按配に歪んでくれたのである。
実際のところ、ベースギターに使うには非常に良いドライブペダルなんじゃないだろうか。
BASSコントロールのみならずそこより更に低い帯域をコントロールする事が出来るDEEPコントロール、これがギター用の歪みペダルをベースギターで使った際の「ひっくい、分厚いところ」が欠ける感じを補ってくれる。どころかブーストし過ぎるとモッコモコになる。MIDもTREBLEも具合が良い。本当にこれ、ベース向きなんじゃないのってな具合である。
キメの細かいドライブサウンド、ギターのみならずベースでも大変オイシイ音になる。

見た目が僕は好きじゃあないけれど。

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