久しぶりの県を跨いでの遠征となった。
この日は鈴木実貴子ズのサポートで京都nanoへと遠征。県を跨いでの遠征がとても得難い体験のように思える。一度ライブ出演を辞退したから尚更だろう。いや、獣のように演奏するのであれば、全身全霊で目の前に演奏に打ち込むのであればそんな感慨は抱くまい。やはり僕はどこまでいっても凡庸なのであった。
鈴木実貴子ズの県外遠征はバンド編成で行く場合、各務君のご実家の車をお借りして行く事になる。僕は車に疎いので車種等は詳しくはわからないがとても運転しやすい。拙宅の車は軽であるからして、だからこそ比較してそう思うのであろうけれど加速が素晴らしい。高速道路ではついスピードを出し過ぎないように気を付けねばならない。
この日はピアノガールのメンバーが新しく始めたバンドNo Funとのツーマン。
No Fun、ザワザワして実に格好良い演奏をするのだった。ベーシスト氏のベースがダンエレクトロでこれがまたディープでとても格好良い音をしていた。「中身を改造してあります」と教えて頂いたけれどどんな改造したらあんな良い音になるんだろう。ロングスケールのモデルとは言えど、ダンエレクトロはダンエレクトロだろうに素性を感じさせない重低音でダビーな演奏にはまた痛烈に合うのであった。
この日はnano常設のアンプで演奏に臨んだ。
以前nanoに出演した時、てっきりスピーカーケーブル(片側がスピコン端子のもの)を忘れたと思い込み、ええいままよと常設のアンプを使ったところPAのモグラさんのアドバイスも合ってとても良い具合の音が作れた事があった。そうして積極的に音作りに関わってくれるPAさんはとても有難いし僕自身大変得るものがあった、というかここ最近の鈴木実貴子ズでの音作りは思えばあの日が転機になっているかもしれないなとさえ思っているので、この日もあの時の自分と答え合わせをする気分で常設のアンプヘッドを使う事にしたのであった。
アンプ自体は珍しいわけでもないHartkeなんだけれどもね。
ラインの音作りを見つめ直して以来、ステージ上のアンプの音量も下げる事に抵抗がなくなった。
ラインで送っている信号がアンプよりも前段で納得のいくものが作れているので、ちゃんと外音のバランスを考えて下さるPAさんならステージ上のアンプがなんであろうと僕の意思表示を汲んだ上でメインスピーカーからの音作りをして下さるはずである、という演奏家と音響さんの間の信頼関係のようなものだこれは。勿論リハの最中に気になった事は言葉でのコミュニケーションも厭わないけれど流石モグラさん、リハで所謂「じゃあベースの音下さい」のシーンでベンベンやると、すかさずメインスピーカーからちゃんと聴こえてきたじゃあないかふくよかな低音とガツッとしたアタックが同居した音が。ステージ上のアンプはそこまで音量を出しておらず、また口径がそこまで大きくない故に音が自分の足元を通過していく形になるので高域やアタックよりは低域を「感じる」ような音の聞こえ方をしていたので、外音によって完全に欲しい部分が補完されている事を実感したというか、これは嬉しい事実確認であった。
アンプからの音を背負って興奮しながら弾きたい方向性の人なので、こういう時に対応出来るようになってきたのは本当にここ一年くらいだけどもっともっと経験値が欲しい。
この日はライブ配信もされており、そこを突き詰めて研究されたであろうnanoの尽力が結集されたライブ配信、アーカイブを拝見したのだが滅茶苦茶音が良くてたまげてしまった。いや凄いよあれは。
「ベーシストはバンドアンサンブルの中に於いて筋肉をつかさどり、場においては空間を演出する役割を担っている」と定義している。
もっと深みに入っていかなければ。
そうそう、忘れずにこの事も書いておかなければ。遠征先での過ごし方はバンドマンそれぞれだが、僕は主にリサイクルショップか銭湯で過ごす事が多い。Googleマップによるとnanoから徒歩圏内に銭湯が幾つか存在しており、最寄りの銭湯は徒歩5分といったところだった。雨がやんだのを見計らって、肩掛け鞄にタオルを突っ込んで出掛けた。
この日訪れたのは井筒湯。
住宅街の中をテクテク歩いていくと迷う事なく到着。
入店して料金を支払う際に「サウナも入りたいのですが」と伝えると「京都はサウナ無料のところが多いですよ」と大将に教えて頂いた。
あ、そうなんだ。滅茶苦茶優しい。着替える前にトイレを探すと僕の目線で察したのかすかさず大将が「トイレは隣の家の中に入って行って使って下さいね」と教えてくれる。すぐ隣の家の土間にトイレがあり「お借りしますー」と大声で言うと奥の住居スペースと思しき空間から「はーい!」と聞こえた。なんだこの体験、楽し過ぎるぞ。
オールドスクールの町の銭湯という浴場で先客は少ない。浴場入ってすぐ右横に水風呂が音を立てており、正面奥にサウナがある。
まずは体を清めて湯船に浸かる。レビュー通り、かなり熱めのお湯で凄く良い。
これはサウナも楽しみだ、と小ぶりなサウナ室に入ると、ここのサウナ室がかなり熱い。汗が噴き出る。テレビもなく自分とゆっくり向き合えるサウナ室だ。砂時計が落ち切ったのを確認して水風呂へ。水風呂はそこまでキンキンなわけではないが、サウナが暑かったせいかとても気持ち良く感じた。
水風呂を楽しんでいると父親に幼い姉妹二人という親子が入ってきた。下の娘さんはうちの娘と同い年くらいかな、と思って何となく眺めていると、脱衣場から浴場の扉を開けて腕がニュッと伸びてきた。見ると大将が玩具を差し出して「お嬢ちゃんこれで遊ぶかい」と声をかけている。
ああ、滅茶苦茶素敵な光景だな最高じゃあないか、と思っているとえもいえぬ感覚に体が包まれた。
水風呂から上がってそのまま洗い場で腰掛けていると意識がひたすらに上昇するようなブチギマった感覚に体が持っていかれた。いや最高、井筒湯、最高。
その後、井筒湯ですっかり堪能した後nanoへ戻ると体がまだら模様になっていた。サウナ愛好家達の間で『あまみ』と呼ばれる現象である。こんなの初めてだ。つまり、それだけ良かったって事。井筒湯、最高です。
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